表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
320/330

320 トゥオネタルの魔王9


 ペッコを再び伝令に走らせたヤルモは、イロナの元へ急行。その道中、ヤルモはケチってめったに使わない各種補助アイテムをガリガリ食べてゴクゴク飲んで、地力を上げた。


「あとは……ナビ、目の共有ってどうやるんだ?」

『少々お待ちを』


 イロナとサタンの戦闘区域に入ったヤルモは、軍服巨乳人形ナビに相談すると、目にサングラスのような物が装備された。


「なんだコレ……見にくいな」

『慣れてください』

「まぁ慣れたいけど……おっ! 後ろを向いてないのに後ろが見える」


 空中戦を繰り広げているイロナとサタンが凄まじい速度でヤルモの頭を通り越したらナビが目で追っていたので、ヤルモにもハッキリ見えたようだ。


「これないける!」


 ヤルモが手応えを感じた瞬間、イロナとサタンの戦闘に動きがあった。


「イロナ~~~!!」


 突然イロナが吹っ飛んだからには、ヤルモは焦って追いかけるのであった……



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 時は少し戻り、サタンと空中戦を繰り広げていたイロナは笑っていた。


「いいぞいいぞ! もっと我を楽しませるのだ! わはははは」


 その笑いはサタンにも聞こえているので、若干呆れながら四本の剣を振っている。


「その余裕がいつまで続くかな?」


 サタンは蠅の羽をブーンとは高速に動かして、縦横斜め、直線的に移動してイロナに剣を当てようとする。

 しかし、イロナは空気を蹴って同じように動き、四本の剣を避けたり受けたり。たまに掠りながら前に出て、カウンターの一振りでサタンに大ダメージを与えている。


 今現在の力量は、ややイロナがリード。ヴァンパイア魔王第三形態よりサタンは強いが、イロナはすでに肉体強化スキルを使っているので、順調にダメージを積み重ねている。

 だが、サタンはまだまだHPに余裕があるので、イロナのHPを(かんが)みると、互角の戦いと言えよう。


 しかし、その拮抗は急に崩れる。


「ぐっ!?」

「フッ……ここから飛ばすぞ」


 サタンの力が跳ね上がったからだ。力だけならまだしも、スピードもイロナを少し上回ったからには後手に回ってしまう。


「うおおぉぉ!!」


 それでもイロナは、これまで培った技でサタンの攻撃を捌き、少ないがサタンにもカウンターを入れている。


「ここまでだな。もうひとつギアを上げるぞ」

「ぐううぅぅ……」


 さらにサタンの動きがよくなると、イロナは防戦一方に。刀でガードするのがやっとで、そのガードも今にも破られそうになっている。


 このサタンの地力アップは、ヤルモが危惧した四天王の敗北。トゥオネタル族が二体の四天王を殺してしまったから、エネルギーが吸収されて力が増したからだ。


「ついて来れまい」


 ついにイロナのガードが破られる。サタンが振った二本の剣は防御に間に合ったものの、刀を弾かれてイロナはバンザイする形となった。


「もらった」

「ガハッ!?」


 そこにサタンの残り二本の剣が……イロナは防御もままならず、胸元を十字に斬られて吹き飛ばされたであった。



「この程度では死なぬだろう」


 イロナが倒れていても、サタンは一向に警戒を解かない。おそらく、イロナが自分に匹敵するぐらい強いから、同じぐらいのHPを有していると思っている。


「時間を掛けて、ヤツのように変身などされると厄介か……いまのうちに確実に首を落としておくか」


 さらに、念には念を。サタンは過去の敗北を思い出して、イロナにトドメを刺そうと、天井付近から凄まじい速度で突っ込んだ。


「終わりだ」


 サタンの体が燃えるほどの速度。空気が割れる音が何度も聞こえ、衝撃波が辺りに飛び散る。そんな隕石のような速度のなか、サタンは四本の剣を前に固めて、イロナを貫く。


 ドッカーーーン!!


 その攻撃は、刺突なんて生易しい物ではない。衝突と同時に爆発を引き起こし、分厚いダンジョンの床が抜けてしまうのであった……



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



「ここはどこだ??」


 サタンから強烈な一撃をもらったイロナは、地下21階に落ちて瓦礫の下敷きになっていたのに、普通に立ち上がってキョロキョロしている。


「確か、サタンの攻撃を喰らって……あ、追撃が来たと思ったら床が抜けたんだった」


 どうやらイロナは一瞬意識が飛んだだけで、サタンの追撃の時には目が覚めていたようだ。


「しかし、こんなに分厚い床が抜ける攻撃を喰らったのに、たいしたダメージがないな」


 イロナは戦闘に戻る前に体調を確認していたら、近くの瓦礫がガラガラと崩れた。なので、刀と殺気を向ける。


「って~~~!」

「……主殿??」


 ヤルモだ。ヤルモが瓦礫を押しのけて立ち上がったので、イロナもキョトンとしてしまった。


「あっ! イロナ! 大丈夫か!?」


 そして、ヤルモはイロナの元へ。


「いいのをもらったが、戦闘には支障はない」

「ほっ……レジェンドの鎧のおかげでダメージが少なかったんだな。でも、抉れてるぞ。エクスポーション飲んどけよ」

「う、うむ……」

「うおっ!? 床が抜けたのか!? サタン、マジパネェ……」


 ヤルモが早口でエクスポーションを渡して来たので、イロナはなんとなく受け取って飲んでいたら、今頃ヤルモはこの惨状に驚いている。


「ところで主殿は、こんなところで何をしているのだ?」

「あ、ああ。イロナを守るために飛び込んだんだけどな。さすがに死ぬかと思った~」


 ヤルモは先程の出来事を語る。


 イロナがサタンの攻撃を喰らって吹き飛んだところを見たヤルモは、ドタドタ走っていたけど、追撃はどう見ても間に合わない。そこをナビがキャタピラモードを使えばいいと助言してくれたら、めっちゃ速くてビビッたそうだ。

 しかしそのおかげでギリギリ間に合ったヤルモは、死を覚悟した防御に力を注ぐ。ナビのおかげか死の間際の集中力のせいか、サタンの攻撃は目で追えたのだが、普通に大盾で受けては死ぬと直感した。


 なので、一世一代の大博打。コンマ数秒の世界。命懸けの技。ヤルモは頭上に構えた大盾で受けた瞬間、上から来たサタンの攻撃を前方にいなした。

 その結果、床にサタンの剣が突き刺さり、爆発と共に床が抜け、二人とも下の階に落ちたというわけだ。


「クックックックッ。まったく無茶をする」

「まぁこれで、俺がイロナの盾になれると証明できただろ?」

「致し方ない。主殿の無茶に免じて、一緒に戦うことを認めてやろう」


 イロナが右拳を前に出してので、ヤルモは拳を合わせる。


「うっし! ここからが本番だ!!」

「おう!!」


 最強コンビ、正式に結成。ここからは、ヤルモとイロナは力を合わせてサタンに挑むのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ