314 トゥオネタルの魔王3
ペッコにトゲ付き金棒で頭部をフルスイングされたサタンは虚を突かれたこともあり、グシャッと前のめりに倒れた。
「チャ~ンス」
「一撃離脱!」
そのチャンスにヤルモとペッコは追い討ちを仕掛けたが、ヤルモはバズーカで一発殴っただけで後ろに飛んだ。
「あん?」
「ナビ! 集中砲火だ~~~!!」
『了解! ファイアー』
「どわ~~~!!」
ペッコはヤルモの命令に納得行かないと振り向いたが、数十発のロケット弾が飛んで来たので、ペッコも一発しか殴れずに退避するしかなかった。
「これも喰らっとけ」
「てめぇ~!」
ヤルモが離れた場所からバズーカを使ってエネルギー波を撃っていたら、ペッコが詰め寄って来た。
「俺を巻き添えにしようとしただろ!」
「いや、ちゃんと命令した。当たっていたら、命令違反をしたお前が悪い」
「てめぇ~……」
「んなことしてる場合じゃねぇだろ! サタンが立ったぞ!!」
「チッ……覚えていろよ」
怒っていたペッコでも、強敵の前ではケンカしているわけにはいかず。サタンが歩き出したらペッコは前に出たが、ヤルモに肩を掴まれて下がらされた。
「何すんだよ!」
「それは俺のセリフだ。さっき吹っ飛ばされたの忘れたのか?」
「アレは……ちょっとミスっただけだからノーカンだ」
「ノーカンでいいから協力しろ。俺が崩す。お前が攻撃。んで、すぐ戻るだ」
「だからなんで俺が……」
「イロナに花を持たせるためだよ。俺たちでHPを削って、トドメを刺させてやろうぜ」
「いっちゃんのためじゃあ仕方ねぇな~」
イロナを出すと、めっちゃ素直なペッコ。ヤルモとしては「そんなことしたらイロナに殺されるから絶対にやらない」とか考えているので、積極的に攻撃するつもりはないようだ。
「なるほどな。こういう戦い方もあるのか。攻め手と守り手を分業することによって、自分たちよりも強い者と渡り合えると……もっと見せてみよ」
サタンは感心するようなことを言って足を止めたので、ヤルモはペッコをチラッと見る。
「トゥオネタル族って、魔王と何回も戦ってるんだろ? いつもどうやって倒してたんだ?」
「普通だ。突っ込んだヤツが倒れたら、次って感じだ。それでダメなら、全員でボコボコだ」
「ただのゴリ押しかよ……もういい!」
サタンが戦い方を褒めていたのでトゥオネタル族の攻略法を聞いてみたが、参考にならない。なのでヤルモはまたジリジリと前進して、サタンの間合いに入った。
「どうした? 攻撃しないのか??」
それでもサタンは攻撃しないでヤルモの攻撃を待っていたので、ヤルモは仕方なく攻撃する。
「撃て!」
『了解! ファイアー』
ヤルモの攻撃手段は勇者オスカリと戦った時より増えているので、汚い一手。ナビを使った飛び道具のロケット弾だ。
「左から行け!」
「ヒャッハ~~~!!」
さらに、後ろからペッコが飛び出す汚い二手目。サタンはヤルモの直接攻撃を待っていたらしく、反応が遅れた。
「それがどうした」
しかし、サタンはロケット弾を左拳で払って爆発。ペッコの金棒は受けることもせずに、サタンは素早く動いてペッコの腹を剣で貫いた。
「「グッ……」」
「隙だらけだ」
ふたつとも、汚いフェイント。サタンが勝ち誇っているところに、ヤルモのバズーカフルスイング。その渾身の一撃を横腹に受けたサタンは後退したのであった。
「また裏をかかれたか……面白い」
「ペッコ! 戻れ!!」
多少はダメージを与えられたが、サタンを喜ばせる程度。サタンが走り出そうとするので、ヤルモはロケット弾を発射してペッコを援護する。
なんとかペッコは後ろに戻せたが、回復に少し時間が掛かる。その間、ヤルモはサタンの猛攻に晒された。ペッコがいないのでは、今回は安全策。大盾に隠れて亀になって耐える。
「まだか!?」
「もういける!」
ペッコが動けるようになると、ここからが本番。ヤルモはサタンの裏をかくように攻撃を捌き、ペッコのアタック。サタンを翻弄して戦い、サタンとペッコに少しずつダメージを積み重ねるのであった。
それからおよそ15分……ヤルモの待ち人来たる。
「なかなか善戦しているな」
イロナだ。ペッコが吹っ飛ばされた時にやって来て、ヤルモの後ろに付いた。
「やっと来たか。とりあえず、態勢を立て直したいから、あいつブッ飛ばしてくれるか?」
「ふむ。よかろう。我も話したいことがあったのだ」
ヤルモのお願いに、イロナは二つ返事で了承。サタンの攻撃をヤルモが大盾で受けた瞬間、イロナはとんでもない速度で前に出て、サタンを数度斬って吹っ飛ばした。
そしてペッコの首根っこを掴んで、ヤルモの元へ戻るイロナであった。
「ゼェーゼェー……」
「んで、話って?」
ペッコは、サタンとの戦闘で虫の息。ヤルモが楽するために生け贄にしたのに、労いもなくイロナに話を振った。
「あの四天王、魔王第二形態並みに強かったぞ。楽しかった~」
すると、イロナは満足気。
「えっと……まさか一人で全部倒したわけじゃないよな?」
イロナのスタミナ温存で考えた作戦を、ご破算にされていないかとヤルモは焦る。
「倒したかったのだがな~……どうせなら、全部一緒に戦いたかったな」
「いや、答えになってないんだけど……」
「心配するな。一匹では物足りなかったから、数分ずつ相手取っただけだ」
「よかった~……のかな?」
イロナの答えはいちおう作戦通りだったので安心したが、考え直したらやっぱり腑に落ちないヤルモであったとさ。