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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
02 カーボエルテ国 ハミナの町
30/330

030 上級ダンジョン3


 地下30階に鎮座する中ボスをイロナが倒すと、その先の長い階段でランチ。携帯食を美味しく食べ、今後の方針を話し合う。


「仮通行証では、ここで帰らなくてはならないのだが……」

「なんだと? ここまで来て制覇せずに帰るのか!」

「最後まで話を聞いてくれ。仮通行証ではここまでだけど、最深部まで行くからな。イロナは知らないだろうと思って、こんなルールがあると教えてたんだ」

「それなら入る前に言っておけばよかっただろうに」

「すまなかったな」


 タピオは平謝り。本当は入る前に言おうとしたのだが、イロナがごねそうだったから説明しなかっただけなのだ。



 それから相も変わらずダンジョン探索。どんなモンスターの群れでもタピオの盾は崩せず、イロナがすぐさまトドメ。危なげなく進み、人食い箱があれば踏み潰す。たまにある罠もタピオがわざとかかって潰すのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 順調に地下へ地下へと潜って行くタピオたちであったが、少なからず冒険者パーティはいるので、地下38階で二人が追い越した冒険者パーティは驚いていた。


「さっきのって……見た?」

「見た見た……」

「たった二人だったよな?」

「うん……男のほうは盾しか持ってなかった」

「いい装備に見えたけど……なんで?」

「俺に聞くな」

「剣は落としたのかな?」

「わからん。でも、体は胸当てしかしてなかったぞ」

「じゃあ、武道家が盾を拾って持ってたのかな?」

「だから俺に聞くな」


 どうもタピオの装備がおかしすぎて真っ先に目がいったようだが、イロナにも驚いていた。


「あの女も異常だったよな?」

「異常っつうか……化け物?」

「オーガジェネラルを全部一撃って……化け物だよな?」

「そう言ってるだろ」

「化け物に、盾のオッサンは守られているのか?」

「オーガをぶっ倒していたから守られているようには見えなかったけど」

「じゃあ、化け物に飼われているのかな?」

「だから俺に聞くな。俺だって混乱中なんだよ!!」


 なにやらタピオとイロナを見た冒険者パーティは、全員漏れなく混乱中。一時の休憩が必要となり、足が止まるのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 地下39も余裕で進むタピオとイロナは、宝箱を漁っていたが先客がいたからか、全て回収済みで復活していなかったのでガッカリする。

 ただ、人食い箱は残っていたのでガンガン踏み潰し、オリハルコンの欠片を二つ手に入れて、少しは喜ぶ姿はあった。

 そうして地下の階段を探していたら、タピオが予想した階段の位置で、先客がアイアンゴーレムの群れと戦っていた。


「バランスの取れたいいパーティだな」

「ああ。理想的だ。すぐに終わるだろう」


 先客は、剣士、戦士、槍士、魔法使い、僧侶のバランス型。剣士以外は女ということもあり、ハーレムパーティといってもよい。

 アイアンゴーレムの鉄でできた体にもダメージを与えられる装備とレベルを要しており、タピオたちほどではないが、簡単に倒している。


「終わったみたいだな。少し時間を空けてから下りよう」


 タピオは寄生プレイをしていると思わせないために、陰に隠れて休憩してから行こうとしていたが、ドロップアイテムを拾い集めたハーレムパーティは元の道を戻って来てしまった。

 そのせいで座っていた二人はハーレムパーティに見付かってしまい、剣士の男トウコに声を掛けられる。


「お待たせしてしまい申し訳ありません。もう夕食の時間帯ですし、一緒にセーフティエリアまで行きませんか?」


 金髪を揺らしながら礼儀正しく手を差し出すトウコだが、タピオは答えない。


「そんな細腕でここまで来るなんて疲れたでしょう。ささ、行きましょう」


 その手は、イロナにだけ差し出された手だからだ。イロナはタピオに目配せすると頷いたので、トウコの手は借りずに立ち上がる。


「強情なお姉さんですね。でも、素敵です」


 トウコがキラーンッと光る歯を見せてもイロナは無表情。立ち上がったタピオと腕を組んで歩き出す。

 二人が歩き出すとトウコの頭にクエスチョンマークが浮かび、他の女性陣はコソコソと「美女と野獣」だとか陰口を言っていた。


 ただ、二人が先々行くので止まっているわけにもいかず、ハーレムパーティも続く。

 階段を下り、地下40階のセーフティエリアに着いてもタピオたちは先々歩き、先客の冒険者パーティとは距離を取り、目立たないところで夜営の準備を開始する。

 その時、タピオは面倒くさそうな声を出した。


「あ~……俺たちに何か用があるのか?」


 ハーレムパーティもタピオたちの隣で夜営の準備を始めようとしていたのならば、人見知りのタピオであっても質問せざるを得ないのだ。


「あなたにはありませんが、こんな危険な場所に女性一人では危ないでしょう」

「いや、俺がい……るから大丈夫だ」


 トウコはタピオをいないものとして見ているので、タピオは「俺がいなくても大丈夫」と言い掛けたが踏み留まった。イロナなら一人でも大丈夫と確信しているが、失言かもしれないので自重したようだ。


「そもそもあなたはなんなのですか?」

「あん??」

「こんな綺麗な女性を危険地帯に連れて来るなんて、どうかしています!」

「えっと……冒険者なんだから、金を稼ぐためには仕方がないと思うんだが」

「たった二人が危険だと言っているのですよ! いいですか? 冒険者とは危険な仕事なんです。それを仲間と共に乗り越える……」


 わけのわからないことで突っ掛かって来るトウコにタピオはたじたじ。しかしトウコが目を瞑って長い説教に入ったので、タピオは聞くのもアホらしいかと思い、夜営の準備に戻るのであった。


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