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288 リハーサル2


 教会で行われたプロポーズ大作戦は、結婚やプロポーズとまではいかなかったが、ヤルモとイロナのカップル成立で割れんばかりの拍手が起こった。

 これでこの茶番も終わりかとヤルモは思ったが、クリスタの一言から延長戦。


「キッス、キッス、キッス!」

「「「「「キッス、キッス、キッス!」」」」」


 キスコールが起こったので、ヤルモも苛立って来た。


「うっせぇな~。やりゃあいいんだろ!」

「「「「「おお~」」」」」


 ここまで来たら、ヤルモもヤケクソ。ヤルモはイロナを抱き締めて唇を合わせるのであった……



 それからリハーサルは仕切り直し。どうも入場シーンが花嫁と花婿が逆だったから、やり直したいみたいだ。どちらかというと、クリスタたちが面白がっているようだけど……

 ヤルモは「またか」とげんなりしていたが、イロナがクリスタと一緒に入場して来たら、また見惚れていた。

 そこで、本当の結婚式に近いことをやってキスのおかわり。さすがにヤルモが怒っていたのでキスはスキップ。花嫁を奪いに来る役はクリスタがやっていた。


 結婚式のリハーサルとか言いながら、クリスタたちはやりたい放題。新郎新婦役を取っ替え引っ替えして遊び倒した一同であった……



「ふう~。なかなか楽しかったな」


 ガーデニングパーティーの試食を終え、騒がしい場所から逃れていたヤルモが遠い目をしてベンチに座っていたら、イロナがやって来て隣に腰を下ろした。


「イロナが楽しめたなら何よりだ」

「主殿だって笑っていたのだから、楽しかったのであろう?」

「まぁ……こんなに笑ったのは子供のとき以来か」


 イロナに指摘されて自分が大声で笑っていたことに気付いたヤルモは、今ごろ恥ずかしくなったのか頭をガシガシ掻いていた。


「そ、それよりだ……結婚を前提に付き合ってください……」


 いや、あんな乗せられたまま言わされた言葉ではなく、ちゃんとした告白がしたかったからヤルモは照れていたみたいだ。


「こ、こちらこそだ。末永く(よろ)しく」


 イロナも照れながら受け取るとヤルモは嬉しそうな顔をしたが、視界に何かが入った瞬間、ギョッとした顔に変わった。


「「「「「ヒューヒュー」」」」」


 クリスタたちが集合していたからだ。


「いや~。お熱いですね~」

「熱すぎますね~」

「てめえら! 盗み聞きしてんじゃねぇ!!」

「ヤルモさんが怒った~。あははは」


 クリスタたちはヤルモが怒ると散り散りに逃げ、笑いながらヤルモをからかう。ヤルモは本当に怒っていたわけではないのだが、照れ隠しで追い回すのであった……


「主殿、捕まえてやったぞ」

「あ、うん……」


 ちょっと追いかけっこをしていただけなのに、イロナが素早く全員集めたものだから、早くも終了となるのであったとさ。



 この日はヤルモとイロナはだらしない顔で夜を過ごし、日課もだらしない顔のまましていた。どうも、二人とも初めての恋人が嬉しいみたいだ。

 翌朝もだらしない顔で朝食を食べていたら、クリスタとオルガが迷惑そうにしていた。


「「見せ付けやがって……」」


 自分たちで焚き付けたクセに、幸せオーラが痛いらしい。しかしヤルモとイロナはまったく気付かずに出掛けて行った。


「ヤルモさんたちも武器屋に用があったんだ」

「お前たちいつの間に!?」

「ひっど~い! 宿からずっと一緒だったのに~」


 浮かれすぎてクリスタたちが隣にいたことに気付いていなかったヤルモ。声を掛けても応えてくれなかったので、クリスタはたまたま同じ方向に歩いていただけなのだ。


「何しに来たんだ?」

「整備に出していた装備の受け取りって言ったのに、聞いてな~い!」

「す、すまん」

「あと、そのだらしない顔もやめてって言ってるでしょ!」

「すまん……」


 クリスタがぷりぷり怒るので、ヤルモは心にも思っていない謝罪。クリスタも調子に乗って言ってないことを付け足して謝罪させていたけど……


「おう! やっと来たか!!」


 クリスタから武器屋に入ったのに、店主のドワーフのスロはヤルモの顔を見たら、クリスタを飛び越えて挨拶をした。


「ヤルモさんも何か頼んでいたの?」

「整備とイロナの予備をな。あと、アルタニアでレジェンド装備がいっぱい手に入ったから、ちょっとな」

「四個だけじゃなかったの!?」


 ヤルモたちの装備が豪華になっていたことは説明を受けていたクリスタたちであったが、まだ持っていたと聞いて興味津々。自分たちの装備は置いておいて、ヤルモとスロのやり取りを注視する。


「んで、レジェンド武器はできたのか?」

「すまん! いま一歩足りなかった!!」

「ま、ダメ元だったんだから、そう謝るな。でも、いま一歩ってどういうことだ?」

「見たほうが早いだろう。これだ」


 スロがカウンターに長い刀を乗せると、ヤルモは鑑定グラスで確認する。


「おっ! レジェンドってなってるじゃないか」

「よく見ろ。マイナスって付いてるだろ? 攻撃力も元のナイフから下がっているから、おそらくだが、ギリギリレジェンドのランクに残ったと予想している」


 スロから詳しく聞くと、指定したイロナの【物干し竿】と同じ長さの刀を作るならナイフでは長さが足りないので、ヤルモが用意したオリハルコンを足して作ろうとしたそうだ。

 しかし打てども打てども鉄はまとまらず、それどころか分離してしまったとのこと。だが、その過程でナイフの質量が増えていると気付いたので、何百何千と打ち続けたらいまの形になったそうだ。


「ふ~ん……てことは、オリハルコンとは違う新素材ってことか」

「いや、性質はオリハルコンに近いから、オリハルコンに何かを足して、変質した物質だと俺は見ている。何か魔力の多い物を使っていると思うんだけどな~」


 スロはレジェンド武器が作りたいがために唸り、ヤルモはイロナの武器消費を減らそうとアイデアを考えていたら、クリスタが話に入る。


「なに国家プロジェクトみたいなことを二人でやってるのよ!? そんなことしてるなら、国も仲間に入れてよ~!!」


 そう。レジェンド装備制作は人類の悲願。ドワーフとオッサンが完成させて発表されると、国の恥になり兼ねない。

 クリスタはスロに金をチラつかせ、協力を求めるのであった。


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