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285 ヤルモ先生再び4


 アークデーモンをクリスタパーティが倒したら、宝箱の確認。レジェンドアイテムは出なかったが、ヤルモたちより高く売れそうな物が出ていたので、またヤルモがボヤイていた。

 それから冒険者ギルドに顔を出し、お互いのパーティで手に入れた物を売り払い、ウサミミ亭に戻った。


「今日は多いな……」


 自室にてルームサービスを頼んだヤルモであったが、クリスタパーティとエイニとリーサはいつものことだからいいとして、ウサミミ亭で働く従業員数人も集まっていたから、またしてもヤルモはボヤいていた。


「今日は定休日でしたので……」

「じゃあ、なんでいるんだよ」

「これがうちのスタイルですので……あははは」

「はぁ~……」


 エイニの言い訳もこんなもん。事実は、他の従業員も勇者クリスタと食事をしたいがために、クリスタたちがダンジョンから戻る日には時々定休日を設けているのだ。しかし、エイニもやり過ぎだと理解しているので空笑いしかできなかった。

 ヤルモもそれはわかりきっていることなのでため息しか出なかったのだが、どうも今回はヤルモの話を聞きたいがために集まっていたようだ。


「「「「ユジュール王国の勇者様と一緒に戦ったのですよね!?」」」」

「お前たちもか~!」


 今日のごはんのお供は、ヤルモの英雄譚。エイニから話を聞いていたから、従業員は直に聞きたくて集まっていたみたいだ。

 魔王討伐はエイニからある程度聞いていたから、だいたいはオスカリパーティの性格に近い質問が多いので、ヤルモは「エロ親父の集団」とか「妻子があるのに娼館に通っていた」だとかチクッていた。


 そうして食事が終わってもお喋りをしていたら、あっという間に夜が更けて行くのであった。



 翌日は朝食の席で、ヤルモだけがクリスタに呼ばれたので部屋にお邪魔したが、オルガだけでなくパーティメンバー全てが揃っていたので、何故かガッカリしていた。


「んで……なんの用だ?」


 いつもの若い女性の説教プレイを期待していたかもしれないヤルモは、ソファーに腰掛けるとぶっきら棒に言い放った。


「昨日は聞けなかったから、ダンジョン攻略の総括をしてもらおうと思ってね」

「ああ~。それか」


 いちおう前回のダンジョン攻略はクリスタからお金を貰っていたので、ヤルモも先生の自覚があったらしく思ったことを真摯に伝えていた。


「こんなもんかな?」

「やっと終わった……」


 ただし、ヤルモは姑かってぐらい細かく注意していたので、クリスタたちもげんなり。ヤルモとしては、よかれと思ってやっていたのに……


「あとはラスボス戦な」

「まだあった!?」


 別にクリスタの文句に関しての仕返しってわけではないのだが、ここも細かく注意するヤルモ。と言っても、パーティ戦なんてあまりやったことがないので、盾役のパウリに話が集中し、自分ならどんな支援が欲しいかを説明していた。



「これで終わりね」

「いや、まだだ」

「えぇぇ~」


 やっと終わったと思ったクリスタは、まだ小言が続くと知って超げんなり。しかし、ヤルモの話は聞かないとヘソを曲げそうなのでペンを持ち直す。


「どうもお前たちには火力が足りないと思うんだよな。その辺は考えているのか?」

「あっ! ヤルモさんに相談しようと思っていたんだった!!」


 クリスタ(いわ)く、自分たちでも火力不足は気付いてはいたが、王家の権限で一番手っ取り早く上級職にクラスチェンジできるパウリを優先したそうだ。

 この時点で治癒魔法を使える者が三人となってしまったので、リュリュとヒルッカの次の転職先に迷っているらしい。


「リュリュ君は賢者を目指していたから叶えてあげたいんだけど、そうなったら回復職だらけになっちゃうし……」

「なるほどな……聖女を外す選択はあるのか?」

「えっ!? 私はクビなんですか!?」


 ヤルモが突然、聖女オルガを追放するようなアドバイスなんてしたものだから焦ってしまう。なので、クリスタは真剣な顔で否定する。


「それはない。聖女様にはいつも助けられているもん」

「ちょっと確認しただけだ」

「よかった~」

「でも、オスカリパーティはいなくても上手く回っていたから、何も危険な前線に立たなくてもいいとも思う」

「確かに……」

「うっ……」


 ヤルモは優しさからの脱退はアリだと言うのでクリスタも頷いてしまう。オルガも言いたいことはわかるので反論はできなかった。


「まぁいまは聖女様に外れられると困るのは事実だし、この問題は時期が来たら話し合っていきましょう」

「はい」


 先延ばしにするとオルガも納得したので、クリスタは違う手を考える。


「リュリュ君が賢者だとして、ヒルッカちゃんがレンジャーだと、火力としては微妙だよね~?」

「レンジャーは器用貧乏なところがあるからな~……あ、シーフからなら、他にも転職先があったんじゃなかったか?」

「そうなの??」


 ヤルモの問いはクリスタではわからないので、ヒルッカに視線を送るが首を横に振る。ヒルッカはクリスタパーティについて行くので必死だったから、先のことはそこまで調べていなかったのだろう。

 なので、ヒルッカは助けを求めるようにヤルモを見た。


「確か……アサシンってヤツに転職できたはず」

「アサシン……それって……」

「簡単に言うと、毒を使ったり一撃必殺の攻撃ができる暗殺者みたいなもんだ」

「な、なな、なんで皆さんは、人殺しばかりわたしに勧めるのですか~~~!!」


 ヒルッカ大泣き。クリスタからは再就職先に暗殺者を勧められ、ヤルモまでもが転職先に暗殺者を勧めるので、自分の将来が心配で泣き出してしまうヒルッカであったとさ。


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