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280 帰還6


「う~む……主殿の動きはよかったが、他はこんなもんか。ま、成長速度はまずまずだ。もう少し熟成させるとしよう。その時が楽しみだ。クックックックッ」


 イロナに短期決戦を挑んだヤルモとクリスタパーティは見事に散ったので、イロナも満足。オルガとリュリュ以外はお陀仏してるけど……


 いちおうかいつまんだ戦闘談は、ヤルモが一人で捨て身の攻撃をし、隙ができたら残りが攻撃するという超無謀な作戦。

 オルガが常に治癒魔法をしてくれているから、イロナの攻撃が当たるのを無視してヤルモも攻撃できる。それでイロナの体勢を少しは崩せるから、クリスタパーティの攻撃が活かせる。


 という作戦なのに、クリスタたちの攻撃はイロナに掠りもせず。逆に攻撃を受けそうになっていたので、ヤルモが無理矢理イロナを掴もうとしてなんとか逃げられただけ。

 唯一イロナのHPを削ったのは、リュリュの広範囲魔法が掠っただけだ。


 そんな無謀な攻撃をしていたヤルモは、HPもそうだがスタミナの減りが尋常なく早かったので、戦闘は長くは続かず。

 ヤルモが倒れた瞬間、クリスタパーティは一気に瓦解したというわけだ。


「ヤ、ヤルモさん……生きてる?」

「うっ……お袋が迎えに来てくれたよう、だ。ガクッ……」

「お母さんは死んでないって言ってたじゃない! 聖女様~~~!!」


 ヤルモ、死の狭間をさ迷う。せっかく生きて両親に会えたのに、ヤルモは母親を勝手に殺して死後の世界の水先案内人にしたものだから、クリスタは焦ってオルガを呼ぶのであったとさ。



 前衛陣はイロナのせいでズタボロとなってしまったが、後衛の二人は攻撃を受けていなかったのでせっせと看病したら、昼頃には復活。

 カーボエルテ王の計らいで昼食を用意してくれていたようだが、食堂に入ったら王族全員揃っていたので、ヤルモはクリスタをギロッと睨んだ。


「ま、まぁ、先に食べましょ。ね?」


 クリスタはヤルモから苦情を受けていたことを思い出したようで、少しは冷静になってくれるように美味しい料理で落ち着かせる。

 確かにお腹がいっぱいになったら少しは落ち着くヤルモであったが、それよりも怒りの大きさが上回っている。


「てか、勇者はよぉ~。俺の家族を救出するために手を回してくれたんじゃなかったのかよ」


 その怒りは王様に向けるのは怖いので、クリスタに向いている。


「そうだけど……え? 何か問題あったの??」

「問題だらけだ。向こうに着いたら俺は、アルタニア帝国の変革作戦に組み込まれていたんだからな」

「はい?? お父様……私、何も聞いてないですよ!?」


 ヤルモからの苦情をクリスタが受け取ってカーボエルテ王にぶん投げたら、「てへぺろ」ってしてやがるので、二人のおでこに怒りマークが浮かんだ。


「ごめんね。お父様って、ああいう人なの。あと、昔、アルタニアの皇帝に『商人風情が』って馬鹿にされたって怒っていたから、私情が入っていたかも……」

「とんでもない仕返しをしやがったな!?」


 胡散臭い国王だと思っていたが、ここまで酷い仕返しをしたからには、ヤルモもカーボエルテ王に向かって怒鳴っちゃった。


「わはははは。報告は聞いているぞ。失脚だけでなくその後に死刑が待っているとは余も驚いたが、いい気味だ。ヤルモ、イロナ……大義であった!」


 それでも笑いながら褒めてくれるので、ヤルモはクリスタとコソコソ喋る。


「ユジュール王と同じこと言ってるのに、褒められた気がしないのは俺だけか?」

「たはは。威厳がない王様で、ほんとゴメン」


 褒められてもなんだか納得のいかないヤルモと、そんな身内が恥ずかしくなるクリスタであったとさ。



 それからカーボエルテ王にも魔王討伐の話を聞かれたヤルモは断ろうとしたが、サキュバス魔王の魔石を一括で買い取ってくれたことと、それより多いヴァンパイア魔王討伐の褒賞金をくれたので、ペラペラ喋っていた。

 しかし、今回の内容は嫌み付き。ユジュール王から賢者ヘンリクを託された話から始まり、皇帝を監禁したり奴隷に落としたりとやりたい放題。

 魔王を倒したまでを話し終えると、カーボエルテ王国がアルタニア帝国のレジェンド装備を買い占めているとチクり、最後はこれからの予定で締めたらクリスタも呆れていた。


「うっそ……貴族をほとんど処刑して何も知らない第七王子に継がせるって……大改革じゃん」

「だろ? 巻き込まれた俺の身にもなれっつうんだよ」

「ほんとゴメン。でも、これでヤルモさんはアルタニア帝国では英雄なんだから、結果オーライ!」

「勇者まで英雄とか言うな!」

「「「「「あははははは」」」」」


 ヤルモがツッコムと、皆、笑う。どうも、布の服の袖を破いたオッサンでは英雄に見えないようだ。

 その仕返しに、ヤルモは各種カードをクリスタの前に乱暴に投げた。


「ほらよ」

「あ、私が用意したカード……役に立ったでしょ?」

「ちょっとだけな」

「え……そんなわけないでしょ?」

「どのカードを出しても疑われまくったんだ! 勇者は俺に嫌がらせするためにこんなもん持たしたのか!?」


 ヤルモが怒っているが、クリスタとしては納得がいかない。


「まさか……その格好で貴族カード出したの? せめて私が買ってあげた服を着なよ~」

「「「「「うんうん」」」」」


 身嗜みは大事。皆に服装や無精髭を責められたヤルモは、ちょびっとは反省するのであったとさ。


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