274-1 ユジュール王への報告
ユジュール王国に魔王とイロナ以外の新たな危機が訪れると、ユジュール王はヤルモに助言を求めた。
「俺に聞かれても……」
「アドバイス料は弾むぞ」
「だったら、こういうのはどうかな?」
「めっちゃ効くな……」
ヤルモは我関せずを貫こうとしたが、お金が貰えると聞いて喋る喋る。ユジュール王が呆れているところを見ると、ヘンリクの手紙に「ヤルモ、金に意地汚い」と書いていたのだろう。
ちなみにヤルモの出した案は、ダンジョンの熟成と人数制限。アルタニア帝国がやっていた、特級ダンジョンにひとパーティしか入れないアイテム錬金術も伝授していた。
「うちとは真逆のことをやっていたのだな」
「ギリギリの綱渡りが破綻して、今回の結果になったみたいだ」
「上手く調整しないと、アルタニアの二の舞か……」
「だな。まぁ単純に冒険者の入る人数を制限するだけでも変わって来ると思うんで、危険なことをする前に、まずはそこからじゃないっすか」
「冒険者のリストラか~……それはそれできついな~」
「あ~……俺もそんなこと言われたらゴネるわ」
自由気ままな仕事を選んだ者、目的があって選んだ者、それしか選択肢がなかった者もいるのだから、いきなりのリストラは超難解な問題。
ヤルモは他人事みたいな言い方をしているが、けっこうゾッとしている。これしか生き方を知らないのだから仕方がない。
「ま、できることをやっていくしかないか。協力感謝する。それでヤルモたちは、いつまで滞在するのだ?」
「そっすね~……」
特級ダンジョンがこの状態では、残るのは厳しい。特にイロナの機嫌がよろしくないので、ヤルモは一日体を休めたらすぐに出発することに決めていた。
ユジュール王は残念そうにしていたがイロナの機嫌が悪そうなので、引き止めるのは社交辞令程度で終えていた。たぶん、ヘンリクの手紙に「イロナ、魔王疑い」と書かれていたから、本心では早く出て行ってもらいたいのだろう。
それから世間話に変わり、ヤルモがそわそわしているのでユジュール王は先にアドバイス料を支払い、わりと楽しい会食を終えた三人。
ユジュール王が帰って行くと、ヤルモとイロナの楽しみな時間がやって来た。
「主殿の攻めも興味があるが、今日学んだことを忘れない内に先にやらせてくれ」
「いや、今日の店のは痛そうだったから……」
「喰らえ~~~!!」
いや、イロナだけの楽しみな時間。性奴隷として、ありとあらゆる手段でヤルモをイジメ続けるのであったとさ。
翌日……
「ヤルモ……呻き声が凄かったけど、何をやっていたんだ?」
「また帰ってなかったのかよ……」
ユジュール王は隣に泊まっていたらしく、ヤルモたちのプレイ内容が知りたい模様。しかし、イロナから拷問みたいな性的奉仕を受けていたと言えないヤルモは、口を閉ざすしかなかった。
「まぁそんな美しい女性を妻に向かえているのだからはっちゃけるのはわかるが、周りに迷惑を掛けるようなことは避けろよ」
「はい。すんません」
ヤルモが平謝りするとユジュール王は頷き掛けたが何か閃いたようで、ヤルモを部屋の隅に連れて行ってコソコソ喋る。
「あんなに強い妻だと、夜も大変そうだな」
「なっ……」
「プッ……正解か。あんな魔王みたいな妻、ヤルモぐらいしか相手できないのだから手放すなよ」
「それってどういう意味っすか?」
「お似合いって意味だ。わはははは」
「ぜったい面白がってるだろ!!」
ユジュール王には、ヤルモが甚振られていたのはバレバレ。笑いながら去って行ったので、ヤルモの要注意人物に加えられたのであったとさ。
この日は昼頃までダラダラして冒険者ギルドに顔を出し、ユジュール王の依頼の報告。予定通りお金は振り込まれていたので受け取って帰ろうとしたが、冒険者に囲まれてしまった。
「なんだよ。俺たちに関わると痛い目にあうぞ」
「「「「「魔王の話を聞かせてください!!」」」」」
どうやらここに集まった冒険者は、ユジュール王から勇者パーティと一緒にヤルモたちが魔王と戦ったと聞かされていたようだ。
これは、実はユジュール王の計らい。冒険者は二人を恐れていたので、このまま帰すと心証が悪い。なので、イメージアップして帰そうとしていたのだが……
「あのオッサン。いらんことしやがって……」
ヤルモにはいい迷惑だ。
「わかった。わかったから。その代わり、勇者パーティの活躍は少ないからな。覚悟して聞けよ」
しかし、冒険者にとってはいい勉強。ヤルモの口から語られる魔王討伐談は、民の犠牲もあったので悲惨な話ではあったが、冒険者は真面目に聞いて、魔王の脅威を心に刻んだのであった。
「これって……魔王と魔王の戦争??」
「「「「「うんうん」」」」」
ついでにイロナの脅威も刷り込まれたのであったとさ。
次話『 274-2 』は性的な描写が含まれていますのでアルファポリスにて『 R-26 』のサブタイトルで、明日更新します。
18歳以上でもしも読まれたい方は、アルファポリスにてしばしお待ちください。