263 友情8
オスカリVSイロナが終わると、次はヤルモVSイロナ。ヤルモは左手に呪いの大盾を構え、右手にはバズーカを握った。
「ん? 主殿はそれを使うのか??」
「なんか俺に装備できるみたいだから……レジェンドだからけっこう頑丈だろ」
「ほう。主殿専用の武器か。それは面白そうだ」
「使い方はいまいちわからないけどな。やるだけやってみる」
「その力、見せてみろ!」
軽く言葉を交わしたら、先手はヤルモから。イロナから言われては、ヤルモも攻めないわけにはいかないのだ。
「んじゃ、遠慮なく」
「おっ?」
ヤルモの一手目は、バズーカ発射。しかし、ロケット弾はイロナに簡単に斬り裂かれた。
「こっちはどうだ?」
「おお~」
次の攻撃は、バズーカから飛び出す青い炎。高火力のガスバーナーだ。これはイロナに素早く避けられたので、ヤルモは振り回してイロナを追いかける。
「う~ん……一秒ぐらいしか出ないのか」
これらの攻撃は、MPをバズーカに補充することで発射できる。言うなれば、重戦車のスキルを武器が代替してくれる物。この装備は、正真正銘、重戦車専用装備なのだ。
「クックックッ。いい武器を手に入れたではないか」
「そうか~? 飛び道具なんて慣れないんだけどな~」
「まぁ主殿の真骨頂は、接近戦だからな。それも見てから次に行こうか」
「手短にな」
ここからは、イロナが斬り付けてヤルモが守る。盾だけでなく、バズーカも盾のように使うので、ヤルモの防御力はさらに上がっている。
「ふんぬ~!!」
バズーカは盾だけでなく攻撃に転用。イロナの斬り付けに合わせて、ヤルモは力いっぱいバズーカを振り回した。
「ぐっ……」
その攻撃で、イロナの使っていた模擬刀は粉砕。それを見て両手で防御したイロナを弾き返したのであった。
「大丈夫だよな?」
イロナが防御体勢のまま止まっているので、ヤルモは不思議に思いながら声を掛けた。
「ああ……」
「なんか変だな。どうかしたのか?」
「手が痺れた……」
「イロナがか!?」
「その武器、見た目より攻撃力がありそうだ。クックックッ」
「そ、そうなんだ……」
まさか丸太のような武器でイロナがダメージを負うとは思っていなかったヤルモは驚いたが、イロナが笑っていたのでちょっと怖くなっていた。
「まぁ準備運動はこんなところだな。そろそろ本番と行こうではないか!」
イロナがオスカリパーティに向かってそんなことを言うので、ヤルモは下がろうとしたが……
「主殿。どこに行こうとしている?」
「え……出番は終わったから……」
「数分しか戦っていないのだから、疲れてないだろ。勇者パーティと一緒に、主殿も我を楽しませるのだ」
「はい……」
残念ながら、オスカリパーティプラスヤルモが、イロナの本番。ヤルモは逃げることも許されず、トボトボとオスカリパーティの元へ歩いて行くのであった。
「お前の女……ホント無茶苦茶だな」
オスカリパーティと合流したヤルモは、オスカリにからかわれる。
「まったくだ。なんで俺まで……」
「それを言うなら、俺たちもだ。マジであの嬢ちゃん何者なんだ? 本当に魔王とかじゃないんだよな??」
「魔王ではないと思う。確証は持てないけど……」
ヤルモはイロナのことを詳しく知っているのに、自信は無い模様。全ての情報を足しても、魔王のほうが近いと思っているようだ。
「まぁあの化け物を楽しませないと俺たちは死ぬだけだし、死ぬ気で行くぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
お喋りはここまで。オスカリが音頭を取り、オスカリパーティプラスヤルモは気合いを入れる。
こうして人族最強といっても過言ではないオッサンたちは、イロナに向かって行くのであった。
それから一時間……
オスカリパーティプラスヤルモはイロナに甚振られ続けて、最後に立っているのはヤルモとオスカリのみとなっていた。
「クックックックッ。ここの魔王も面白かったが、レベルの上がったお前たちもなかなかのものだ。クックックックッ」
イロナも珍しくHPを減らしていたので、お褒めの言葉。
「もう限界だかんな。次が最後の攻撃だ」
「名残惜しいが、一撃で屠ってやろうではないか!」
「いや、殺さないでくれよ」
テンションの上がっているイロナの言葉は、冗談とは受け取れないオスカリ。ここはヤルモ頼りだ。
「防御を捨てて攻撃すっから、頼んだぞ」
「イロナの攻撃を耐えろってか……無茶言うな~」
「それしか手がないんだよ」
「チッ。しゃあねぇ。今回だけだからな」
ちょっとした打ち合わせをしたオスカリとヤルモは、雄叫びをあげながらの突撃。
「「うおおぉぉ!!」」
先頭はオスカリ。全力の会心の一撃を放とうとするが、イロナは剣で迎え撃つ。
「おらぁ!」
イロナのカウンターは、割り込んだヤルモの大盾に阻まれるが、イロナの一撃で大盾は吹き飛ばされてしまった。
「まだだ!!」
イロナの次の攻撃は、バズーカを振って剣を弾き飛ばそうとしたが、これも不発。逆に吹っ飛ばされてヤルモは素手となる。
「ぐおおぉぉ!!」
それでも、ヤルモの真骨頂は防御力。イロナの次の斬撃は片腕で受けて、もう片方の手で握った。
「どおおりゃああぁぁ~~~!!」
その最初で最後の隙に、オスカリの会心の一撃。イロナは肩口から斬られて、吹っ飛ぶのであった……