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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
11 アルタニア帝国 帝都2
261/330

261 友情6


 オスカリパーティの順番をイロナに奪われたので帰る流れにはなっていたが、イロナがまだオスカリパーティの戦闘を見ていないと言ったので、時間を空けてもう一度。

 休憩時には、さすがに三回もダンジョンボスを連続で戦うのは冒険者倫理に関わるようで、オスカリパーティは隠蔽工作を考えていた。


「そういえば、魔王(サキュバス)の魔石ってどうなったんだ?」


 そこでヤルモは大事なことを思い出したので、あまり信用していないヘンリクに質問。


「ここのギルドで捌くといらぬ心配を掛けるかもしれないから、カーボエルテ王家が買うことになった」

「あの王様か……」

「値段は……」

「そんなに!?」


 値段を知ったら、ヤルモは即決。普通のダンジョンボスの十倍も値が付いたので、小躍りしている。

 ただし、支払いは分割払いだったので、何度も騙されているヤルモは信用できないからか踊りは止まった。


「一括で欲しいなら、直接王家に持ち込め。王女様と顔見知りなんだろ?」

「う~ん……顔を見せに行かないといけないし、それもアリか。でもな~……値切られないかな??」

「それは、こっちに派遣されている使者が一筆書いてくれるから大丈夫だろ」

「紙なんて破いたら終わりだからな~」

「偉い人のサインが入ってる契約書を破る奴なんていないから心配するな」

「アルタニアの王女は破いてたぞ?」

「なんだと!?」


 ヤルモの心配症を宥めようとヘンリクは頑張っていたが、マルケッタのせいでご破綻。なので、クリスタならそんなことはしないと諭して、ようやくヤルモはちょっとだけ納得するのであった。


「会ったこともないクセに、よくそんなに信用できるな」

「勇者で王女様だからだ!」

「俺、聖女で王女様に裏切られたんだけど……」

「オスカリ、助けてくれ~。こいつ、ぜんぜん信じてくれな~い」


 話せば話すほど、結局はドツボに……ヤルモの厄介さに、ヘンリクはさじを投げるのであったとさ。



 ヤルモのことは面倒になったオスカリパーティは話し合いの末、魔石は全てカーボエルテ王国に売って、三連続でダンジョンボスを倒したことは隠蔽することとなった。

 その後は、ヤルモに非難の嵐。人間不信がすぎるので、ちょっとは直せと無茶を言っていた。


「お前らも三回冤罪で服役して、勇者殺害の罪で追われてから物を言え。普通、自殺しててもおかしくないぞ?」

「うっ……すまん……うお~~~!!」

「泣くな!」

「「「「うお~~~!!」」」」

「お前らもかよ!!」


 ヤルモが反論したら、オスカリパーティ全員号泣。酒の席で聞いていた生々しい話を思い出して泣いている。

 そのオスカリパーティの涙にヤルモはツッコンではいたが、自分のための涙だったので少しは嬉しいらしい。でも、うるさいからイロナと一緒に離れてイチャイチャしてた。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



「さてと……ドラゴンじゃありませんように!!」

「「「「ドラゴンじゃありませんように!!」」」」


 先程は気合いを入れてダンジョンボス部屋に入ったオスカリパーティであったが、今回はただの願望。その甲斐あって、ドラゴン以外が出た。


「おっ! カイザーヴァンパイアだ。ついてるな」

「ああ。私たちは、こいつを倒すためにアルタニアに来たもんな」

「なのに、俺たちは何してるんだか。わははは」

「「「「わはははは」」」」


 オスカリパーティは、ただのサポート役になっていたことを不甲斐なく思っていたのか、大きな声で笑う。


「魔王じゃないけど、あいつで本懐を遂げようか!」

「「「「おお!!」」」」


 オスカリパーティVSカイザーヴァンパイアとの戦闘は、ただの八つ当たり。カイザーヴァンパイアに攻撃する度に、こんな声が聞こえている。


「嬢ちゃんが異常なだけで、俺だって強いんだぞ~!」

「俺の魔法剣だって、勇者のスキルに迫る威力なんだぞ!」


 勇者として力を誇示するオスカリ。剣士としてユジュール王国ナンバー2だと言わんばかりの魔法剣士レコ。


「俺の出番、全然なかったじゃないか!」

「私なんて書類仕事ばっかだぞ!」


 高火力持ちの大魔導師リスト。同じくあまり出番の無かった賢者ヘンリク。これら四人は、ほとんどイロナに対して文句を言ってるっぽい。


「なんで俺より優れた盾職なんているんだ~!!」


 一人だけヤルモに対して文句を言うパラディンのトゥオマス。


 その八つ当たりでカイザーヴァンパイアのHPがガンガン減少。それはカイザーヴァンパイアの【発狂】が発動しても続くのであった……



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 その姿を見ていたヤルモは……


「めちゃくちゃ荒れてるな……」


 オスカリパーティがほとんど防御を捨てて戦っているので、なんとなくイロナに対してのストレス発散しているんじゃないかと思っている。

 そのイロナとは言うと……


「おお~。やればできるじゃないか」


 今までで一番の攻撃を繰り返していたので、感心して見てる。


「けっこうレベルが上がっていそうだし、そろそろ狩り時だな。な?」

「俺に聞かれても……」


 さらに怖いことを言っているので、ヤルモは同意できない。たぶん狩り時のメンバーにヤルモも含まれているから……


「終わったな」

「ああ。さすがは勇者パーティ。イロナぐらい早い」

「いまから楽しみだ。クックックックッ」


 こうしてカイザーヴァンパイアを難なく倒したオスカリパーティは、憂さ晴らしをして気分が良くなっていたのに、イロナから放たれる異様な気配に寒気を感じて台無しになるのであったとさ。


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