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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
11 アルタニア帝国 帝都2
255/330

255 アルタニアの勇者候補7


「あ~。はいはい。勇者勇者。お前は真の勇者だ」

「なんだその言い方は!!」


 オスカリがうるさいので、ヤルモは適当に認めたらますますうるさくなるオスカリ。ぶっちゃけヤルモは、オスカリのガサツなところ以外は勇者と認めているので、嫌味っぽく言ってからかっているだけだ。


「勇者はそれでいいとして、新しい聖女の子って、いきなり聖女にして大丈夫なのか? 重荷じゃないか??」


 オスカリがうるさすぎるので、交代した聖女で話を逸らす。


「あ~……そこな。そこはアレだ。ちょっとアレしてな」

「まさか、騙して……」

「ちげぇよ」


 どうやら聖女交代は、ヤルモのネタを使って説得したからオスカリは口を濁していたっぽい。そりゃ、こんなに警戒心の強いヤルモの前では言いにくかったのだろう。


「また俺をダシに使ったのか……」

「そのおかげで、王女様には任せてられないってすんなり引き受けてくれたんだ。元々正義感は強かったんだろうな」

「ちっとは謝れよ!」

「わりぃわりぃ」

「なんだその言い方は!!」

「さっきの仕返しだ。がっはっはっ」


 二人のオッサンが仲良くチチクリあっている(かたわ)らでは、ヘンリクが疲労困憊のマルケッタに声を掛けていた。どうも聖女交代には、それ相応のエネルギーの消費があるようだ。

 聖女となったペトラもマルケッタほどではないが疲労があるらしく、二人が落ち着くのを待って、ただの王女に戻ったマルケッタと神父を転送魔法陣から地上に帰していた。

 マルケッタはこれから、皇帝の右腕として操られるらしい。


 マルケッタたちが帰ったら、勇者オスカリ主導の聖女爆誕記念の宴会。どう見てもオスカリたちが飲みたいだけのように見えたヤルモは止めていたが、結局は巻き込まれたのであった。



 翌朝……


「お前ら……いつまで飲んでたんだ?」


 ヤルモとイロナが皆のテントに出向いても誰も居ないから不思議に思ったら、オスカリパーティもニコパーティも、仲良く二日酔い。クラーラも寝坊していたようだ。

 ちなみにヤルモとイロナは、ほどほどの時間にはテントで何やらヤっていたので、いつも通りの時間に起きれたというわけだ。


「俺たち、先に行くからな? オッサンどもはどうでもいいけど、ニコパーティとクラねえは無理するなよ??」


 というわけで、ここからは別行動。ヤルモとイロナは夜営を撤収したら地下へと潜って行くのであったとさ。



 それから数日後、ヤルモたちは特級ダンジョンを制して宿泊場所で休んでいたら、ニコパーティとクラーラが帰って来た。


「いや、普通にラスボス倒して来たけど……」

「「「「「はやっ!?」」」」」

「やっちゃんたちは早いわね~」


 そこで一通り疑われたヤルモ。ニコたちは地下100階の転送魔法陣から帰って来たので、自分たちのほうが早く帰っているものだと思っていたようだ。


 それから数日経つとオスカリパーティが帰って来て、ニコパーティから質問攻めにあっていた。


「あん? 俺たちの攻略速度が遅いだと? 本当に勇者パーティかだと?? どうしてそんなこと言うんだ!?」


 オスカリ混乱。つい数日前は「さすが勇者っす!」とか、「勇者のアニキ、一生ついていきやす!」とか言われてチヤホヤされていたのだから仕方がない。


「あいつらと一緒にすんなよ。特にあの美人の女、実はどっかの魔王だと俺は睨んでいるんだ。俺たちでも手に負えない化け物だから、絶対に手を出すなよ?」


 このままでは勇者パーティの沽券(こけん)に関わるので、イロナを出して説得するオスカリ。ニコパーティは一度イロナの殺気だけで倒されているので、効果は絶大のようだ。


「あのオッサンは……魔王に飼われている犬だな。めちゃくちゃ頑丈だから気に入られているみたいだ」

「誰が魔王の犬だ……」

「あ……わはははは」

「やるなら俺の聞こえないとこでやれ!!」


 ついでにヤルモのことも聞かれたので、オスカリもいまいちヤルモとイロナの関係が信じられないから嘘を刷り込んでいた。ニコパーティはめちゃくちゃ信用していたけど……



 勇者パーティが戻った翌日には、教会で勇者就任の儀式が執り行われる。

 歴代の聖女が着る法衣を身に(まと)ったペトラが登場すると教会内が静まり返り、ペトラが祭壇の中央に立つと、シスターたちの讃美歌が始まった。


「こりゃまた凄いな」

「うむ。この声の重なりは凄いな」


 聖女交代に続き、勇者就任の儀式にも、ヤルモとイロナはボキャブラリーが足りない。しかし讃美歌は気に入ったのか、二人はうっとりしながら聞いている。

 それからヤルモが、讃美歌がなかなか終わらないと思った頃に、隣に立つオスカリと喋っていた。


「お前の時もこんなんだったのか?」

「そうだ。いや、もうちょっと豪華だったか……復興中だから、頑張ったほうじゃね?」

「マジか……こんなんされて恥ずかしくないのか?」

「まぁちっとはな。でも、民を守る勇者だ。こんだけやられたら、何がなんでもやり抜こうと誓えたぜ」

「ふ~ん……そんなもんかね~」


 ヤルモの価値観ではわからないので、わかる話に変える。


「ところで、ニコって奴の審査はどうだったんだ?」

「ま、及第点ってとこだ。任せて大丈夫だろう」

「あの短期間でわかるもんかね~」

「俺は人を見る目があんだよ。でもな~……」

「でも??」


 オスカリは頭をガシガシ掻きながらヤルモの質問に答える。


「クラーラとか言ったか。あのおばちゃんのほうが、ニコより勇者適正がありそうだ」

「はあ? クラねえが??」


 オスカリが言うには、ニコパーティがピンチの時には割って入り、モンスターをクラーラひとりで蹴散らしたとのこと。

 それで興味が湧いたので、クラーラにも勇者適正検査の質問をしてみたら、ニコは85点ぐらいだったのに百点満点を叩き出したらしい……


「じゃ、じゃあ、クラねえが勇者をやったほうが……」

「いや、本人はやる気はないみたいだし、ニコを見守るほうが性に合っているとか言っていたから……」

「それって……ニコたちがダンジョンに潜る時に、クラねえが付き合うってことか?」

「ああ。しばらくは一緒に潜るとか言ってた」

「心配症のおかんか!!」


 戦おかん、本領発揮。面倒見のよさが爆発して、ニコたちよりも活躍するらしい……


「そろそろだぞ」


 こうして聖女ペトラから祝福を受けたニコは、大泣きする最強のおかんクラーラに見守られて、勇者に就任したのであったとさ。


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