252 アルタニアの勇者候補4
勇者候補を紹介してもらった二日後、オスカリパーティ、ニコパーティ、ヤルモパーティ、聖女マルケッタも連れて特級ダンジョンに向かった。
「クラねえは帰らないのか?」
それと、何故かクラーラまでついて来てる。
「ニコ君たちが心配だから、付き添いよ」
どうやらクラーラは、ニコパーティが駆け出しの時に出会い、冒険者の指導をしたことがあるので、いまの実力を知りたいみたいだ。
「へ~。先生みたいなことやってたんだ」
「ギルドの人に頼まれてね。ま、子供は好きだから、天職のようなものよ」
「でも、いまは村に帰ってるんだろ?」
「ええ。子供が三人ともなると、さすがに厳しくてね。ゆっくりしようと戻ったのよ」
「クラねえ、三人も産んだの!?」
「あら? 初恋のお姉さんに子供がいてガッカリした??」
「いや、別に……」
ヤルモ、複雑。確かに初恋であったのだが、初恋の人が筋肉ダルマになっているほうがショックが大きい。まさかそんな女性に三人の子供がいることにも驚いているけど、さすがに失礼なのでヤルモは口にはしなかった。
「あたしはやっちゃんに、こんなかわいらしいお嫁さんがいるのにビックリしたな~。腕まで組んで仲良しね~」
「ま、まぁな」
イロナはいちおう妻設定で通している。性奴隷と言うと世間体が悪いから、ヤルモは言えないのだろう。
そうして各々喋りながら歩いていたら、特級ダンジョンに到着。そこには先日話をしていた頭の堅い神父が立っており、聖女交代の審査役としてついて来ると鼻息を荒くしている。
その神父に簡単な挨拶だけして、いまだに工事中の特級ダンジョンに入り、仮設の受付で各種手続きをしてから全員で階段を下りた。
「イロナ、俺たちは先に行こうか?」
「う~ん……あいつらを少し見てみたい」
「まぁイロナがそうしたいなら……」
ヤルモとしてはイロナが怒りそうなので先行しようとしたが、イロナは勇者候補がモンスターと戦うところを見たい模様。ヤルモも従うしかない。
「んじゃ、いつも通りのやり方で、先行して進んでくれ」
「「「「「はい!」」」」」
ニコパーティは、オスカリの指示でいい返事をしてから進んで行く。オスカリパーティはその後ろに続き、マルケッタと神父が真ん中を歩き、最後尾にイロナとクラーラに挟まれたヤルモだ。
その順番で歩いていたら、角を曲がった先でモンスターを発見したニコパーティ。少し時間が掛かったものの、MPの消費を押さえて倒していた。
それからもニコパーティがモンスターを倒し、罠を解除して順調に進んでいたら、オスカリが下がって来てヤルモの肩を組んだ。
「どうだ? いい人材だろ??」
「暑苦しいからくっつくなよ」
「俺が見付けたんだぜ??」
「だから離れろって!」
オッサンに肩を組まれても気持ち悪いだけなので、ヤルモは振り払ってから喋る。
「まぁダンジョンの歩き方、罠の見付け方、モンスターの倒し方……どれを取っても上級者並みだな。あの歳では凄いと思う」
「だろ~?」
「でも、特級は少し早いかな? いいとこ90階ぐらいしか持たないだろうな」
「ま、それはレベルが問題なだけだ。今回はお試しで、100階まで見せてやるつもりだ」
「ふ~ん……優しいんだな」
「あ、嬢ちゃんだと……」
その先を言わないオスカリ。イロナだと最下層まで連れ回されると気付いたようだ。
「てか、そのおばちゃんどうした??」
ヤルモとオスカリが喋っている前では、クラーラが号泣している。
「ニコ君たち、立派になって~。うわ~ん」
と、自分から巣立った生徒が頑張っているので、涙腺が崩壊しているのだ。
「なんか、あいつら昔の教え子だから感動してるらしい」
「それでか……」
クラーラは引くほど泣いてるが、ヤルモからの情報を得てオスカリは納得。
「てことは、あのおばちゃんも強いのかな?」
「さあ? 実力は聞いてない」
「ちょっと試してもらおうぜ」
「おい! 無茶させるなよ」
クラーラは筋肉ダルマに見えても知り合いのお姉さんなので、ヤルモとしては危険なことはしてほしくない。しかし、オスカリは面白がってクラーラを最前線に連れて行き、ヤルモもついて行く。
「オークジェネラルが三匹だけど、一人で行けそうか?」
「クラねえ。こいつのことは無視していいぞ」
ちょうどニコパーティが見付けたモンスターを、オスカリがクラーラに回そうとしたがヤルモに止められる。
「ブタさん三匹ぐらい余裕よ。お姉さんに任せなさい!」
だが、クラーラはこういう始末。そして……
「「「「「おいおいおいおい……」」」」」
「なんだそりゃ……」
クラーラのアイテム袋からは巨大な四角いハンマーが出て来たので、ニコパーティ以外を引かした。
「じゃ、お肉を叩いて伸ばしてくるわ」
有言実行。クラーラはオークジェネラルに無防備に近付くと、巨大なハンマーを軽々振り回し、ぺらっぺらに叩き潰すのであったとさ。