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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
11 アルタニア帝国 帝都2
250/330

250 アルタニアの勇者候補2


「もうそれで許してやってくれ」


 ニコの振りかぶった剣は、イロナに指で掴まれて奪い取られたので、これで決着でいいだろうとオスカリが近付いて来た。


「う~む……我の殺気のなか動けただけマシか……あの勇者の剣よりもマシだったし、合格にしてやろう」

「かわいそうに……」


 イロナの合格発言に、オスカリはニコを哀れむ。勇者候補からイロナの生け贄に決定したのだから……

 あと、遠いカーボエルテ王国では、イロナにまで馬鹿にされた勇者クリスタがくしゃみしてるけど……


「パーティ戦も見ようと思っていたが……あの調子じゃ無理か」


 ニコパーティは、ニコが肩で息する以外は全員腰を抜かして震えている。これではイロナ相手に攻撃できないので、代役を立てる。


「主殿!!」


 ヤルモの登場だ。



 時は少し戻り、同郷のマッチョなおばさんクラーラとヤルモが離れた場所で喋っていたら、イロナからとてつもない殺気が放たれたので会話の内容が変わった。


「何あの子? あんな子供を殺すつもり?? ちょっと止めて来るわ!!」


 クラーラが慌てて走り出したところを、ヤルモに手を取られた。


「クラねえ。あれは試してるだけだから大丈夫だ」

「え? あ、ホントね。もう終わったみたい」


 クラーラが目を戻すと、ニコが剣をイロナに奪われたところだったので、クラーラも落ち着きを取り戻す。


「それにしてもクラねえ、イロナの殺気を受けて怖くなかったのか?」

「怖かったわよ。でも、子供を見ちゃうとね~……それを言ったら、やっちゃんもすっごく力が強くなったのね。あたしに引きずられないなんて凄いことよ」

「いや、俺だって成長してるんだよ」


 こうしてお互いを褒めていたら、イロナが呼んでいたのでヤルモはいい返事をしていた。


「なんか呼んでるから行ってくる。またあとでな」

「まだ何も話してないんだから、あの子に殺されないでね~」


 クラーラに見送られたヤルモはドタドタと走り、イロナの目の前で止まる。


「主殿。あいつらと戦ってやってくれ」

「え? なんで俺が……」

「やれ」

「はい……」


 渋々返事したヤルモであったが、状況について行けていないのでオスカリに説明を求めた。


「あいつらが嬢ちゃんに怯えてしまってるんだ」

「んなもん、お前かパラディンがやればいいだろ」

「嬢ちゃんの指名なんだからしょうがないだろ~。嫌なら嬢ちゃんに言え」

「言えるか!」


 面倒事はオスカリたちに押し付けたいヤルモであったが、イロナに文句を言うよりニコパーティの相手をするほうがマシなので、呪いの大盾と模擬刀を装備して前に出た。


「えっと~。とりあえず、全員で攻撃しろ。俺は頑丈だから手加減はいらないからな。もしも手加減なんてしたら、イロナが怒るかもしれないからやるなよ?」


 ニコパーティに注意事項をヤルモが説明したら、ニコが代表して応える。


「あの……さすがにそれではあなたが死ぬんじゃ……」

「いいからやれ。お前たちの本気を引き出さないと、俺もイロナに殺され兼ねないんだ。助けると思って。な?」

「はあ……わかりました」


 ニコが実力も知らないオッサン相手に丁寧に対応しているところを見ると、イロナが睨んでいるからめったなことが言えないのだろう。

 なので、一旦パーティ仲間の所へ戻ってゴニョゴニョやってから、全員で武器を構える。


「行くぞ!」

「「「「うん!」」」」


 ニコパーティの構成は、平均的な顔と体の魔法剣士ニコ。

 ちょっと大きい男、戦士オット。

 筋肉質な女性、武道家エイヤ。

 魔女っ子みたいな女性、魔法使いヒルダ。

 教会勤めしていそうな真面目な女性、プリーストのペトラ。


 全員20代前後の若者で、やや攻撃的なパーティだ。


 しかし、パッとしないオッサン相手に全員で向かうのは気が引けたのか、ニコとヒルダの風魔法のみで、ヤルモを攻撃して終わらそうとした。


「おお~い。本気でやってくれよ~。そんな攻撃効くわけないだろ~」


 ただでさえレベル差があるのに、手抜きの魔法なんて大盾を構えるヤルモを1ミリも動かせるわけがない。


「ヤバイ……あのオッサンもかなりヤバイぞ……ここからは、ラスボスと思って相手するぞ!」

「「「「うん!!」」」」


 ヤルモの挑発めいた言葉は、少しはニコパーティの心に響いた模様。それよりも、一歩も下がらないヤルモを見て気を引き締めた。


 まずは、ニコとオットのダブル斬り付け。だが、何度斬り付けようとも、ヤルモは大盾と模擬刀で完全防御。

 もちろん、これはニコの予想していたことなので、二人が攻撃しているところに回り込んだエイヤが素早く攻撃を入れる予定。

 当然ヤルモもそう来ると読んでいたので、三対一にならないようにニコとオットのどちらかは弾き返し、エイヤの徒手空拳は右腕の中央で受けている。


 ダンジョンボスならば、この攻撃を繰り返せば確実に、一人、ないしは二人の攻撃が入るはずだが、ヤルモには一切通じない。


「くそっ! 硬い……ヒルダ!!」


 三人でダメならば四人。ニコたち三人は攻撃を合わせ、タイミングよく後ろに飛んだ。


「【フレアサークル】!」


 そしてヒルダによる魔法で、ヤルモを炎の檻に閉じ込めた。その攻撃は、ニコたちは少しやりずぎたかと喋っていたら、炎が収まってヤルモの姿が現れる。


「うん。なかなかいいんじゃないか?」

「「「「「はい??」」」」」

「でも、まだまだやれるだろ? さっきのより強い攻撃があるなら、もっと使ってくれていいぞ」

「「「「「ええぇぇ~……」」」」」


 ニコパーティ戦意喪失。ダンジョンボスですら痛そうにするのに、ヤルモはピンピンしてるし、もっと頑張れと言って来るのでは仕方がない。


 この日、ニコパーティは二匹の化け物によって、心をバッキバキに折られたのであったとさ。


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