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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
02 カーボエルテ国 ハミナの町
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025 中級ダンジョン7


 中級ダンジョン地下30階。ボス部屋の前で少しだけ水分を取ったタピオとイロナは中へと入る。


「おお~。ドラゴンだ。だが、小振りだな」


 イロナは久し振りに見たドラゴンに目を輝かせたが、自分が知るドラゴンとは大きさが違うようだ。


「まぁこのダンジョンでは頑張ったほうだろ。たぶん、めったに出ないレアボスだ」


 ダンジョンボスは倒される度に変わる。連続して同種が出る場合もあるが、ダンジョンエネルギーの消費量によって、強いモンスターが出る場合もある。

 今回に限っては、この中級ダンジョンでは出るはずのないモンスターなので、エネルギー不足でドラゴンは2メートルほどの大きさとなったようだ。


「もうお昼も回ってしまっているし、さっさと倒して地上に帰ろ……」

「任せろ!!」

「あ……」


 タピオが喋り終わる前に、イロナはダッシュ。ドラゴンの噛み付きをかわし、横に回り込むと剣を振り下ろす。

 その一撃で、ドラゴンの首は一刀両断。本来ならば、中堅冒険者でも手こずる相手なのに、これまたあっという間に倒してしまうのであった。



「フフン♪」

「上機嫌だな」


 タピオはまた敵が弱すぎると言われるかと思い、ビクビクしながら近付いたが、イロナは嬉しそうにしていた。


「やはり、ドラゴンの首を一撃で斬り落とすのは気持ちいい。なかなかこうも綺麗に斬り落とせるものではないぞ」


 どうやらドラゴンの首を()ねる行為は、イロナの趣味のようだ。いかに綺麗に切断するかにこだわりがあるらしく悪い顔で笑っているので、タピオはブルっとするのであった。



 ダンジョンがドラゴンの体を吸収する中、イロナの頭の中に言葉が浮かぶ。


「お、レベルアップだ。前回からかなりかかったな。主殿も上がったか?」

「いや……」


 イロナがレベルアップしたことで、タピオは目的を思い出す。


「そういえば、俺のレベル上げでダンジョンに来たんだった……」

「むっ……確かにそうだった。何故、主殿は積極的にレベルを上げないんだ」

「イロナが取るからだろ~」

「あ……」


 タピオはイロナが倒したモンスターのドロップアイテムを回収することが多く、経験値の多いモンスターはイロナが一人で倒す。

 これではいくらパーティ戦闘をしていても、タピオに入る経験値は少なく、イロナのほうがレベルが上がるのが早くなるってわけだ。

 いまさらミスに気付いたタピオは肩を落とし、イロナもちょびっとは反省するのであったとさ。



 ドラゴンのドロップアイテムを拾うと、二人は転送魔法陣にて移動。地上に戻って衛兵に各種手続きをしてもらう。

 衛兵は、タピオたちの装備ではあり得ないと思いながらも、証拠が揃っているのでその件に関しては何も言わなかった。

 ただ、一組の冒険者が一週間近くも戻って来ていないと心配するようなことを衛兵は言っていたので、タピオははぐらかす。

 しかしイロナが口を滑らせてしまい、中堅パーティはしばらく中級ダンジョンの出禁になる流れとなってしまった。


 言ってしまったものは仕方がない。タピオは衛兵に銀貨を支払い、口止めをお願いしてから広場に繰り出すのであった。



 簡単な昼食を済ませると、一度宿屋に寄って予約。先日と同じ部屋が空いていたようなので、二日分の料金を支払ってから、冒険者ギルドに移動する。

 冒険者ギルドでは、また逃げ出そうとした猫耳受付嬢ミッラの受付に行き、大声を出さないように念を押してから、今日の成果を報告する。


「はあ……たった一泊二日で、中級ダンジョンを制覇したのですか……」

「これでCランクだろ? 上級ダンジョンの仮通行証も発行してくれ」

「まさかたった二人で潜るのですか??」

「俺が若い頃は一人で潜っていたよ。まぁラスボスとは戦わなかったがな。それより早くしてくれよ」

「は……はい」


 驚いているミッラを急かすタピオ。あまり世間話で自分たちの正体を探られたくないらしい。

 そうしてドロップアイテムの買い取りまで済ませると、足早に受付カウンターを離れるのだが、一組の冒険者パーティが道を塞いだ。


「昨日は有り難う御座いました!」


 この頭を下げるパーティは、タピオたちが命を救った若手パーティ。リーダーのシモが礼を言ったのだが……


「知らん。人違いだ」

「え……」


 タピオは冷たい。徹底的に人を避けるタピオは、人助けした者に対しても態度が変わらないのだ。


「主殿。それはないんじゃないか?」

「いたっ……痛たた。取れる、取れるって」


 ただ、イロナがいたからには、いつものように素通りさせてもらえず、組んでいる腕に力を入れられて止められていた。

 そこからはイロナだけで世間話をするのだが、タピオはこんな場所で話をしたくないらしく「奢るから」と言って広場に連れ出そうとしていた。

 だが、若手パーティはそれを断って、自分たちのホームで料理を振る舞う流れになり、タピオも続くしかなかった。


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