245 第二回特級ダンジョン攻略3
「見たか主殿! あの美しい噴水を!!」
ヤマタノオロチの全ての頭が地面に「ドーン」と同時に落ち、ダンジョンに吸い込まれて行くと、イロナは興奮しながらヤルモに迫った。
「ああ。デートスポットみたいだったな」
「あ……しまった。すぐに主殿のところに来ていたら一緒に眺められたのに……」
ヤルモの一言でイロナは残念がっているけど、実はヤルモはドン引き。
ヤマタノオロチを倒してくれたのはいいのだが、こんな倒し方は想像していなかったので、掛ける言葉が見付からなかったから、昔見たデート特集の噴水を捻り出したのだ。
「そういえば、帝都にその噴水があったんだった。壊れているかもしれないけど、見に行こうぜ」
「おっ! 久し振りのデートだな。いや、同伴か?」
「まぁそんなところだ。宝箱の確認をしよう」
現実逃避して話を逸らしたのにイロナが変なことを言うので、また話を逸らすヤルモ。本当は、どこで同伴なんて言葉を覚えて来たんだとツッコミたかったけど……
「レジェンドだけど……ハズレか~」
ヤマタノオロチを倒した報酬は、大きな魔石とレジェンドの杖。ヤルモとイロナでは装備不可なので、売るしかない。
「ま、宝箱が出ないよりマシか。帰ろうぜ」
「うむ。あれだけ綺麗に斬れたのだから、我も満足だ」
こうして第二回特級ダンジョン攻略は、二人とも喜ぶ理由は違っていたが、無事、終了するのであった。
「おっ! 早いな」
特級ダンジョンを制したヤルモとイロナは、もう夜だったため、冒険者ギルドへの報告は明日にしようと真っ直ぐ宿泊場所に帰ったら、上級ダンジョンに潜っていた勇者パーティがすでに戻っており、食堂でわいわいと喋っていた。
とりあえずヤルモたちも料理人に注文してから、空いてる席に座って辺りを見回す。
「作戦会議中か?」
勇者パーティは食事が終わっているのに、酒を片手に地図をテーブルに広げていたので、あまり興味のないヤルモでも挨拶程度に質問している。
「おう。そうなんだ。ていうか、どうやったらこんなに真っ直ぐ階段や宝箱に、ヤルモたちが辿り着くかの謎解きだけどな」
しかし、オスカリはこんなことを言うので、ヤルモは墓穴を掘ったかと思って嫌そうな顔になる。
「ま、気になるけど、聞かないから安心しろ。冒険者に攻略法を聞くのは、マナー違反だからな」
「……お前でも、マナーなんて言葉知ってるんだな」
「ひでぇっ!? んなこと言ってると、地図の報酬払わねぇぞ!!」
「すまん! 金はくれ!!」
あのガサツなオスカリが気を遣っているのを不思議に思って、ヤルモは本当に悪気はなく質問してしまったのだが、お金が貰えないと聞いて平謝り。
「謝るのはえぇな……やっぱ、金に困ってるのか?」
その変わり身と必死さに、オスカリも不思議に思うのであったとさ。
とりあえず食事が運ばれて来たので、ヤルモと喋るのはあとからにする勇者パーティ。そうしてヤルモたちがガツガツ食べ終えたのを確認したら、オスカリからの質問が来る。
「ここ、159階は何も書いてないんだが、どういうことだ?」
「そこは四天王のフロアだからだ」
「なるほど……ワンフロア丸々だったからか」
「それとだ……」
オスカリが納得すると、ヤルモは忘れていた情報をサービスで付け足す。
「ほう……変わった出現の仕方をするボスか」
「けっこう強かった。今まで潜っていて初めて見たから、俺の予想だけど、一定以上の深さがあるダンジョンにしか出ないんだと思う」
「俺も初耳だ。うちでも魔法陣からモンスターが出たのなんて聞いたことがない」
ユジュール王国の特級ダンジョンは聞いたところ、一番深いもので130階しかないようなので、ヤルモが適当に言った予想も勇者パーティは納得していた。
「あ、そうだ。159階の紙、ちょっとくれ。フロアが変わっていたから書き足す」
「おっ! それは助かるな」
これも勇者パーティからしたら、攻略本に書かれていたぐらいしか知らない情報だったので、生で話を聞けるから真面目に聞いていた。
「なんだかヤルモたちって、俺たちより勇者みたいなことしてるな」
ヤルモの話を聞き終えると、やっぱり茶化して来るオスカリ。
「たまたまだ。カーボエルテで、たまたま勇者パーティと知り合ったからだ」
「その勇者パーティは、どんなヤツだ? 前に弱いみたいなことを言ってたけど」
「う~ん……あまり詳しく言うのは気が引けるけど……志だけは勇者だ」
「なんじゃそりゃ? いや、それが一番大事か。それなら大丈夫そうだな」
「ああ。いまなら実力も、胸を張って勇者だと言えるぐらいに成長しているだろう」
ヤルモが遠い目をして勇者クリスタを思い出していると、オスカリは心配が無くなった。もしもの場合は鍛えに行こうかと考えていたようだ。
そうしてまた特級ダンジョンの話に戻ってわいわいやっていたら、今日のダンジョンボスの話題に変わって、勇者パーティはドン引き。
「ヤマタノオロチが噴水って……よくそれで笑えるな……」
イロナが自慢するように語った倒し方が異常すぎて、いくらなんでも笑えない勇者パーティであったとさ。