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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
10 アルタニア帝国 帝都1
232/330

232 特級ダンジョン10(アルタニア帝国)


「イロナも手伝ってくれよ~……アレ??」


 ケルベロスは四天王ということもあり、HPが多いのでヤルモの攻撃力では時間が掛かる。なので距離を取って、ケルベロスの背中でモフモフ泳いでいるイロナを呼んでみたら、ケルベロスは倒れた。


「俺は何もしてないのに……ひょっとして、イロナが撫でてたせいか??」


 ヤルモ、正解。イロナのレベルでは、手は凶器。スライムでもウルフでも男のシンボルでも、撫でただけで削れるから、ケルベロスもHPがグングン減って倒れたのだ。


「フゥ~。こんなに獣を()でられたのは初めてだ。さすが主殿だ」


 ケルベロスがダンジョンに吸い込まれるなかイロナは満面の笑みで戻って来たので、ヤルモは遠回しに文句を言ってみる。


「フェンリルの時はそんなことしなかったのに……」

「あの時は久し振りの戦闘だったからな。愛でるより殺したかったのだ」

「どっちにしても死んでるんだが……」

「まぁ撫でられて死んだほうが幸せだろう」

「そ、そうかも……」


 一切、納得のいかないヤルモ。しかし、イロナの趣味を頭ごなしに否定するとあとが怖いので、肯定するしかなかった。必要以上に撫でられて殺されると思って……



「また素材かよ」


 四天王を全て倒しても、高く売れそうなアイテムは出ず。四天王の魔石だけでも高く売れるのに、ヤルモは愚痴りながらドロップアイテムを拾い、長い廊下に移動する。


「二度目は譲ってやる」

「なんだかんだで、けっこう疲れたんだけど……」

「行け!」

「はい!」


 地下160階に向かう扉の前には、先ほどイロナが倒した大魔神が復活していたので、疲れの出ているヤルモの相手。その疲れは全てイロナがもたらした心労なのだが、行けと言われたからにはヤルモは突撃するしかない。


 ヤルモVS大魔神の戦闘が始まった。


 石の巨人ってだけなら、ゴーレムに毛が生えた程度。10メートル近くあっても、ヤルモの敵ではない。

 踏み付けを大盾で耐えて、崩してからの渾身の一撃。いくら攻撃力の低いヤルモでも、大魔神のスネの同じ場所に剣をぶつけまくれば、ヒビが入り、広がり、砕けるのは必然。


 それは片膝立ちになっても同じこと。足が砕けたら、右手、左手と攻撃して行き、最後は頭を砕いて勝利を収めるヤルモであった。


「意外とあっさり倒したな」

「まぁこの程度ならな」

「そういえば、ここ最近レベルを聞いてなかったが、いくつになったんだ?」

「……186です」

「おお~。かなり上がってるな。我が306だから、もうじき差しでやり合っても面白そうだな」

「戦うほう!?」


 ヤルモはてっきり夜のことを言うと思って嫌そうにしていたのに、イロナから戦闘のことを言われては驚きを隠せない。


「まぁまずは魔王からだ」

「いや、冗談って言ってくれよ~」

「行くぞ」

「はぁ~……」


 ヤルモの苦情は受け付けないイロナ。これ以上言っても殴られるだけなので、ヤルモも続くしかなかった。



 長い階段を下り、軽食を腹に入れたら二人は横になって体を休める。そうして15分ほど経ったら、装備の確認。


「準備はよいか?」

「おう!」

「行くぞ!」

「おお!」


 イロナの号令に、ヤルモは力強く返して扉を開く。そうして奥に進むと、マントを頭から被った人間のような者が立っていた。


「ようこそぉ、冒険者ちゃあぁ~ん」


 その者は、ピョンピョン飛び跳ねてヤルモたちを歓迎している。


「女? アレって魔王だよな??」


 その声は女性のものだったので、ヤルモは困惑してイロナに質問している。


「魔王で間違いない。(まと)っている覇気が違うだろうが」

「てことは、女のモンスターか……」

「ウフフフ……」


 ヤルモが納得したところで、女性はマントを脱ぎ捨てた。


「モンスターなんてぇ、人聞きが悪いわぁ。私は魔王よぉ」


 声高らかに自己紹介した魔王は見目麗しい女性。頭には羊のような角を二本生やし、背中には小さな羽。お尻からは細い尻尾を揺らして胸もデカイ。


「痴女だ……」


 そして服装は胸を丸出し。下もTバックでは、ヤルモに痴女と呼ばれても仕方がない。


「主殿。アレはサキュバスだぞ」

「サキュバスって……あのサキュバス!?」


 男の夢、サキュバス魔王の登場で、ヤルモはやや嬉しそうな声をあげても仕方がない。


「おい、主殿……何に向けて発情しているのだ」


 ヤルモのヤルモが立ち上がっても仕方がない。


「いだっ! イロナの裸を思い出していたんだ~~~!」


 そんなことになっては、イロナに蹴られても仕方がない。


「ウフフ。そんな女よりぃ、私の下僕にならなぁ~いぃ?」


 ヤルモがチョロければ、魔王が勧誘しても仕方がない……


「我の下僕を誘惑だと……死にたいようだな……主殿も」

「俺も!?」


 イロナが怒るのも仕方がないのだが、ヤルモまで殺害候補に入っているのは筋違い。それと、性奴隷のイロナを買ったのはヤルモなので、イロナに下僕と呼ばれる筋合いもないのだ。


「ウフフ。あなたからぁ、その男を寝取るのもいいかもねぇ。あなたの目の前でぇ、犯してあげるわぁ」

「ほう……我にそのような舐めたことを言ったのは貴様が初めてだ。この世から、一辺の欠片も残さず消してやろう」


 ()くして、ヤルモを賭けた女の戦いが、いま開幕するのであった。


「こええぇぇ……」


 そんな展開が初めてのヤルモは、嬉しさよりも恐怖が勝るのであったとさ。


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