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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
10 アルタニア帝国 帝都1
227/330

227 特級ダンジョン5(アルタニア帝国)


「えっと~……こっちのイロナは仲間だ。いいか?」

『オッケーマスター。ロックオン対称から外します』


 手鏡に映るヤルモの頭に乗っている軍服少女に命令すると、イロナからロックが外れてホッとするヤルモ。


「じゃあ、これで戦ってみる」

「ふむ……主殿がどうなるか見物だな」

「面白がってない??」

「さっさと行け!」

「は~い」


 (いびつ)な形の黒い鎧を着たヤルモの頭には軍服少女人形が乗り、四角く膨らんだ右肩にはロケット弾を装填。その右手には中華包丁みたいな大剣を握り、左手には呪いの大盾を装備。

 そんな姿だから……というか、オッサンが頭の上に軍服少女人形を乗せているから、イロナのツボに入りそうなので急かしているようだ。



 そのヤルモはというと、初めてのレアボス、ダンジョンボス並みに強いと聞いている巨大なドラゴンゾンビとの戦闘に挑む。


 まずは、いつも通り大盾を構えてジリジリ前進。ドラゴンゾンビからの攻撃を待って、カウンターを狙っていた。


『ロックオン完了しました』

「あん??」


 頭の上から聞こえた声で、ヤルモは先程のやり取りを思い出した。


「あ……そうだ。遠距離攻撃ができたんだった。好きに撃て」

『オッケーマスター。ファイアー』


 ヤルモの右肩から放たれた複数のロケット弾は、全てドラゴンゾンビに着弾。爆風と爆音を辺りに撒き散らす。


『ファイアー。ファイアー。ファイアー』

「も、もういい! やめろ!!」

『オッケーマスター。停止します』


 それも途切れることなく発射されたので、ヤルモも止めざるを得ない。


「チッ。煙でまったく見えなくなってしまった……あぶなっ!?」


 視界がゼロになったからヤルモはボヤイていたが、大盾を力強く構えた瞬間、衝撃が走った。

 ドラゴンゾンビの尻尾だ。ヤルモは煙の(わず)かな揺れで逸早く異変に気付いたので、防御が間に合ったのだ。


「う~ん……せっかく火力が増えたのに戦いにくい。しゃあねぇ。いつも通り行くか」


 今まで戦士の戦い方しかして来なかったヤルモには使いこなせないので、煙が晴れてからは本来の戦い方。

 剣で斬り、大盾で守り、崩し、渾身の一撃。いつも通りの戦い方でドラゴンゾンビのHPを削る。しかし、ドラゴンゾンビのHPは常に回復しているので、ヤルモの攻撃ではほんの少しずつしか減っていない。


「ブレスか!?」


 そんななか、ドラゴンゾンビは【猛毒の息】を吐いた。本来ならば敵のHPを徐々に減らす技だが、ヤルモは猛毒を吸ってもピンピンしているので目隠しにしかなっていないようだ。


「そうだ! ここで撃てばいいんだな。十発だけいけるか?」

『オッケーマスター。しかし、発射するには射線がありません』

「射線?? どうやるんだろう」

『体を斜めにしてください』

「あ? こう??」

『ファイアー』


 ナビの指示通り右足を半歩引くと、邪魔だった大盾と右肩の発射台との距離が開いたので、ナビはロケット弾を発射。すでにドラゴンゾンビはロックオン済みなので、ロケット弾は弧を描いて着弾する。


「あ~。なるほどな。そういうことか。じゃあ、5秒ごとに一発とか撃てるか?」

『オッケーマスター』


 仕組みを理解すると、ヤルモ劇場の始まり。いつもの防御と攻撃の合間にロケット弾が飛び交う。

 剣で斬ると同時にロケット弾が発射されたり、大盾で防御しながら発射したり。ロケット弾が邪魔になりそうな場合は大盾で射線を隠し、上手く立ち回るヤルモ。

 慣れて来ると、ロケット弾を二発、三発と増やしてダメージを増やし、【猛毒のブレス】の間もロケット弾でダメージを与える。



 着々とダメージを積み重ねていたら、ドラゴンゾンビの動きが変わった。


「おお~。思ったより早く発狂になった」


 ドラゴンゾンビは【猛毒の息】や【エネルギーブレス】を乱射し出したのだ。

 そんな危険な攻撃なのに、ヤルモはのん気なもの。毒は吸ってもHPは減らないし、エネルギー波は大盾で守れているので、ヤルモは新戦法の威力に惚れ惚れしている。


「アレってできないか? 口から吐くヤツ」

『オッケーマスター。大きさを調整できますが、いかがいたしましょう』

「そんなのできるんだ……じゃあ、大きくしてもらおうかな」

『オッケーマスター。準備が整いましたら、足を固定して射線を開けてください』

「わかった」


 太いビーム発射は溜めが必要らしいので、ヤルモは大盾を構えたまま数秒待機。すると、軍服少女からカウントダウンが始まった。


『5秒前。4、3……』


 それと同時に、ヤルモに異変が……


「ガッ……グガガガガガ……」


 突如アゴが外れ、ムリヤリ大口を開けられて痛いらしい。


『2、1……射線を開けてください』

「おああ」

『ファイアー』


 ヤルモが大盾をズラすと、口からビーム発射。それもいつもより太いビームとなって、ドラゴンゾンビの全体を吹き飛ばした。


「ガコンッ! ぶはっ!? はぁはぁ……」


 ビーム発射後は自力で戻さないといけないらしいので、ヤルモは自分にアッパーを入れてアゴを嵌めた。


「まだ生きてる! うおおぉぉ~!!」


 初めての攻撃方法でも、ヤルモは気を抜かない。ビームで全身焼け焦げたドラゴンゾンビにトドメを刺そうとロケット弾を撃ちまくりながら突撃し、剣を振り下ろすヤルモであった。


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