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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
10 アルタニア帝国 帝都1
221/330

221 報酬4


「主殿! 攻めてやれ!!」

「はい!!」


 ヤルモVSオスカリの模擬戦が、どちらが先手で攻撃するかで中断すると、イロナが介入。その顔が怖かったので、ヤルモもいい返事で攻め手をやるしかない。


「それと勇者!」

「はい!」


 ヤルモが怒られているところをニヤニヤ見ていたオスカリにも飛び火したので、こちらもいい返事。


「貴様は主殿を舐めすぎだ。防御だけが主殿の真骨頂ではないのだぞ」

「それはわかってるって~」


 オスカリが情けない声で肯定すると、ようやくリスタート。イロナの開始の合図で、ヤルモが前に出た。


「プッ……それじゃあ、俺を一生(とら)えられないぞ!」


 ヤルモが近付くと、オスカリは回りながら挑発。それだけでなく、隙あらば剣を振り、勝利を狙う。

 どう見ても、この状態になってからはヤルモが不利。前に出ても突撃しようとしても、ヤルモの間合いに入れないしオスカリの反撃を受けるので、結局は防戦一方に見える。


 しかし、追い詰められているのは、オスカリだ。


「そろそろ疲れて来たんじゃないか~?」

「いや、お前の終わりだ」

「はあ? 俺に追い付けないのに何言ってやがん…だ……へ??」


 オスカリが回り込もうとしたら、肩から壁に衝突。逆側に逃げようとしても、そこは壁。いつの間にかオスカリは、試験場の角に追い込まれていたのだ。

 これは、ヤルモの技術。前に出るのも突撃するのも微妙なフェイントを入れ、攻撃を受ける場合は大盾でオスカリの動きを調整していた。

 そのせいでオスカリの動きは綺麗な円運動にはならず(いびつ)な円運動となり、飛び出したところで壁とヤルモに挟まれた形になったのだ。


「降参するなら早くしろよ!」

「ぐおっ!?」


 その場所は、オスカリの死地。ヤルモは大盾で蓋をするように押し込んだので、オスカリは逃げようがない。


「いてっ! 足踏むな。スネ蹴んな。足踏むな。スネ、蹴らんのか~~~い!!」


 あとはヤルモのいいように……大盾を少し上げて、下半身に攻撃を入れまくる。

 これではオスカリは剣を振るえず反撃の蹴りを返すのがやっと。しかし、力と防御力ではヤルモに軍配が上がっているので勝てるわけがない。


「いてっ! 痛いって!!」


 一見地味に見えるが、オスカリは地味な痛みが蓄積されて、HPが地味に減って行くのであった。



「くそったれ~~~!!」


 地味な攻撃にキレたオスカリは、スキル発動。ヤルモの大盾に自身の剣を当てて、全身の力を使ってのゼロ距離からの会心の一撃。その一撃でヤルモは少し後退し、開いた空間で大きく剣を振っての会心の一撃。

 その二発でヤルモは吹き飛ばされ、地面に(わだち)を作った。


「チッ……めちゃくちゃやりづらいヤツだな……」

「だから舐めるなと言っただろうが……」

「嬢ちゃん!?」


 ヤルモの檻から脱出したオスカリが愚痴っていたら、イロナが隣にいたのでめっちゃ驚いた。


「手を抜いたら殺すと言ったのを忘れているのか?」


 そりゃ、イロナが殺気を放って怒っていたら、オスカリもビビるってものだ。


「マジで手を抜いてないんだがな~……これは相性の問題だな。でも、最後に勝つのは俺だ」

「それを舐めてると言っているのだ。持久戦になったら、主殿には勝てん。貴様の攻撃など、一日でも二日でも耐えきるぞ」

「あ……」


 オスカリ、納得。デスマーチでは、ヤルモは人ひとりを担いで走っていても、息を切らしていなかったのを思い出した。


「てか、なんで助言してくれんだ? 俺は敵じゃないのか??」

「長引いても面白くないだろうが。それよりも、死ぬ気の攻撃で、どちらかが散るほうがよっぽど見応えがある」

「そこまでやらないと、ヤルモの防御は崩せないってことか……」


 オスカリ、再び納得。イロナの趣味で助言していたことには触れず、覚悟を決める。


「お~い。イロナのヤツ、何言いやがったんだ? アイツ、俺を殺すつもりか?」


 オスカリの(まと)う空気が変わったことで、今度はヤルモが愚痴。二人の会話は聞こえていなかったようだが、ここまでの威圧を受けては、ヤルモも覚悟を決めなくてはならない。


「さあ! 華々しく散るのだ!!」


 そして、イロナの嬉しそうな声で、最終決戦が始まるのであった。



「行くぞ……」


 攻守は交代。オスカリは、最速の剣をヤルモの大盾に叩き付ける。


「ぐっ……」


 オスカリの全体重が乗った会心の一撃は、今までで一番重い攻撃だったので、ヤルモの技術でも耐えるのがやっと。次の瞬間には、オスカリはヤルモの右手に回り込んでいたので、剣を使って受けざるを得ない。


「うおおぉぉ~~~!!」


 そこからは、オスカリは会心の一撃の連打。ヤルモはバランスを崩していたけどなんとか大盾で受けるが、上手くオスカリを誘導できない。

 その会心の一撃の連打で、ついに防御が間に合わなくなるヤルモ。


「ぐあっ!?」


 オスカリの剣は腹に入り、肩に喰らい、痛みが走る。


「もらった~~~!!」

「ぐっ……うおおぉぉ~~~!!」


 さらに連続で会心の一撃を二発喰らったヤルモは、歯を食い縛り無理矢理カウンター。頑丈さと膨大なHPで耐え、オスカリに渾身の一撃を叩き込む。


 その刹那、オスカリが会心の一撃を放ち、お互い同時に攻撃を受けて吹っ飛ぶのであった……


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