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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
10 アルタニア帝国 帝都1
220/330

220 報酬3


「俺も持ってみていいか?」


 ヤルモが超重い呪いの大盾を装備したら、国のお抱え鍛冶職人のアンテロがあんぐり口を開けて固まった。すると、パラディンのトゥオマスが手を上げる。力自慢だからヤルモと張り合いたいようだ。


「ほい」

「おもっ!?」


 ヤルモが呪いの大盾を軽々渡すと、トゥオマスは片手でなんとか持てる程度。ヤルモに力で負けたと肩を落としている。


「お~。本当に重いな。これではスピードが落ちてしまう」


 イロナもやりたいと言って来たので渡したら、片手で余裕。見た目は華奢な女性なので、イロナの実力を知っていてもますます落ち込むトゥオマス。

 驚き過ぎてアゴが外れそうなぐらい大きな口を開けていたアンテロは完璧に外れ、今度は目玉が飛び出しそうになっている。


「俺も……ぐぎぎぎぎ……」


 勇者オスカリも楽しそうだからとパワー勝負に参加したが、ボロ負け。両手で5秒ほど持っていたが、ヤルモに助けを求めていた。


「やっぱりヤルモも化け物レベルだな。いっちょ手合わせしてみないか?」


 イロナのことはすでに認めているオスカリは、これまでのヤルモの戦闘を見て興味が出て来たようだ。


「やるわけないだろ」

「そこをなんとか! ちょっとだけだ。な?」

「疲れる。面倒」


 オスカリが頼み込んでも、ヤルモは塩対応。若い女性ですら突き放すヤルモなんだから、オッサンの頼みなんて聞くわけがない。


「主殿と勇者の決闘か……うむ! それは面白そうだな!!」


 イロナがいなければ……


「いや、疲れることは……」

「やれ!!」

「はい!!」


 反論しても、イロナに命令されたからにはやるしかないヤルモ。オスカリも尻に敷かれまくっているヤルモを見てニヤニヤしてるよ。


「貴様も死ぬ気でやるんだぞ。もしも手を抜いたら我が殺すからな!!」

「はい!!」


 しかし、イロナに睨まれたからには、同じ被害者。練習用の装備を借りたら、トボトボと鍛冶場の試験場に向かうのであった。



「さっそくその盾を使うのか?」


 四方を壁に囲まれた試験場の中央にて向かい合ったオスカリは、ヤルモの呪いの大盾に目が行く。


「今まで使っていた盾より一回りデカイからな。ダンジョンに潜るのに初めての装備じゃ少し心配だから、慣れさせてもらうよ」

「余裕だね~。その余裕、いつまで持つんだろうな」

「さあな」


 ヤルモは早く終わらせたいので、イロナに目配せする。


「はじめっ!!」


 すると、イロナがいきなり号令。オスカリは一瞬反応が遅れたが、ヤルモはずっしりと腰を落として、呪いの大盾と模擬刀を構えたまま動いていない。


「鈍足なんだから、いまのチャンスは活かすべきだろ」

「鈍足だから不意打ちが苦手なんだよ」

「そりゃそうか。それじゃあ、そこから突かせてもらおうか!」


 まずは小手調べ。オスカリは素早さを活かしてヤルモに急接近。からの、横に飛んで後ろに回り込んだ。

 その隙だらけの背中に一太刀入れる作戦だったようだが、ヤルモは半分ほど振り向いて大盾で受け止める。


「軽々受けるか……」

「みんなやることが一緒なんだよ」


 重装備相手にはよくある手なので、ヤルモは経験済み。相手が大きく動くのだから、いくら鈍足でも体を半分振り返るだけでいいから余裕で追い付けるのだ。


「それは失敬!」


 ヤルモを試したオスカリは、謝罪してからの連続斬り。そのスピードはイロナを除いたトップクラスなので、勇者パーティでも目で追うのがやっと。

 しかし、イロナの剣を受け続けたヤルモには遅いくらい。オスカリの息もつかせぬ連続斬りを、常に大盾の中心で受け続ける。


「よっと!」

「うおっ!?」


 オスカリの剣が雑になったところで、ヤルモは大盾を引いての崩し。オスカリが前のめりにバランスを崩したところに、ヤルモは剣を置く。


「あっぶね。そんなのもできるのかよ」


 さすがは勇者オスカリ。多少バランスを崩しても、強引に後ろに跳んでヤルモの攻撃を回避した。

 ヤルモは押すだけのパワーファイターだと決め付けていたオスカリは、愚痴りながら戦術を調整。そしてまた、連続斬りでヤルモの隙を探す。


「オラッ!」

「ヤベッ!?」


 後ろに体重の乗った剣など、ヤルモの恰好の的。今度は大盾で押し返し、オスカリが万歳したところに剣を振り下ろした。


「喰らうか!!」


 しかし、オスカリは腕をコンパクトに折り、剣での防御がギリギリ間に合って、辺りに激しい金属音が鳴り響く。


「ぐふっ……」


 残念ながら、ヤルモの狙いは頭ではない。がら空きの腹に、ケンカキックを入れてオスカリを吹き飛ばすのであった。



「チッ。跳ばれたか……」


 オスカリが予想より吹っ飛ばなかったので、後ろに跳んでダメージを減らしていたとヤルモは気付く。


「くぅ~……効いた。力を逃がしきれなかったぜ」


 それでもヤルモのパワーでは、オスカリに痛みが残っているようだ。


「しっかし防御は堅いわ力はあるわ、技も使えるって……思っていた以上に強いわこれ」


 オスカリが戦術を変えようかと悩んでいてもヤルモは前に出ないので、予想を告げる。


「はっは~ん……お前も俺相手では、攻勢に出られないようだな」

「そうだ。俺は盾役だからな」

「じゃあ、俺が守りに入ったらどうするんだ?」

「別に……睨み合いを続けるだけだ」

「ズルイぞ! 俺ばっかに攻撃させて!!」


 オスカリは攻め手に欠けるので、ヤルモに攻撃してもらいたい模様。しかし、ヤルモは元々攻め手に欠けるので譲られても困る。


 しばしオスカリがギャーギャー文句を言って、模擬戦が止まるのであったとさ。


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