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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
10 アルタニア帝国 帝都1
219/330

219 報酬2


 装備の整備がタダと聞いて、さっそく向かうことにしたヤルモ。案内してくれる勇者パーティに続き、イロナと共にイチャイチャしながら歩く。

 そうして辿り着いた場所は、アルタニア軍専用の鍛冶場。騒音が酷いから帝都の外れの外壁近くにあったから被害が無かったので、稼働しても問題ないようだ。


 兵士が囲む頑丈そうな建物に入ると、さっそくカンカンと小気味いい音が聞こえて来た。


「もうやってんだな」

「兵士の装備も酷いらしいからな~」

「そんなんで俺たちのをやってくれるのか?」

「それは英雄特権で先にやってくれるらしいぞ」

「俺は英雄じゃないからな」


 ヤルモとオスカリが喋っていたら職人風の若い男が寄って来たので、オスカリが身分を説明。すると、すぐにこの鍛冶場を任されている老人、アンテロの元へと連れて行かれた。


「こりゃひでえな……」


 さっそく装備を見せろとアンテロに言われたので、ヤルモたちの武器防具を見せたら、アンテロは眉をひそめる。

 そのアンテロの相手をするのはコミュ症のヤルモではなく、がさつなオスカリ。


「魔王もそうだが、思った以上に上位モンスターがいたからな。どれぐらいで整備は終わりそうだ?」

「全部なら五日ってところか……この軽鎧だけは無理だ。こんなボロボロじゃ直しようがない」

「あ~……どうする?」


 イロナの防具はこの中で一番ランクの低い物だったので修理不可能。なのでオスカリがイロナに振ると、イロナはヤルモを見た。


「イロナは滅多に攻撃を喰らわないからな~……しばらくアルタニア兵の装備を借りようか?」

「うむ。何を装備しても一緒だ」

「イロナに合いそうなの、何か無いか?」

「それならこっち来い」


 アンテロがぶっきらぼうにアゴで指図するので、ヤルモたちはアンテロのあとに続いて奥の部屋に入った。


「「「「「おお~」」」」」


 そこは、レジェンド装備の展示場。展示場は言い過ぎだが、30個以上の武器や防具が並べられている。


「皇帝陛下から、勇者たちには好きなだけ持って行かせるようにお達しが来ている。あの皇帝陛下が他国の者に渡すなんて、よっぽど感謝してんだな」


 本来レジェンド装備は皇帝のコレクションなので、滅多に譲渡されない。お飾り勇者パーティが就任する時でさえ、レンタルという形を取っている。元々ダンジョンに潜っていないから必要ないのだが……

 それをいくらでも持って行っていいとは、異例中の異例の大盤振る舞い。皇帝が操り人形になっているとは知らないアンテロは、ありえないって顔でレジェンド装備を撫でている。


「城に保管していた物を発掘中だから、まだ全て揃ってないんだ。これももう数日掛かるだろうな。あの馬鹿デカイ城を壊すなんて、魔王ってのは、トンでもない化け物だったんだな」


 アンテロは真相を知らないのでウンウン頷いているだけだが、その他はイロナに視線を送っていた。イロナがあんな戦い方をしなければと思いながら……

 ちなみに、ここにレジェンド装備が集められているのは、盗難に合う確率が低いから。元々頑丈な建物の上に、ただでさえ危険な武器が置いてあるから盗難対策も万全なので運び込まれている。



「全部貰っていいのか??」


 アンテロから説明を受けたヤルモは目が金貨。全てを売れば、人生2、3回はやり直せると金勘定をしてしまっている。


「ちっとは自重しろ。これを売って復興費用にすんだよ」


 なので、オスカリに止められた。民を守る勇者としては、見過ごせないようだ。


「チッ……しゃあねぇ」

「装備できるだけにしろよ? 俺たちは受け取らないんだからな??」

「わかってるよ!」


 ヤルモは半分ぐらい奪おうと思っていたが、オスカリたちが断っているのでは取りづらいらしい。半ギレで、レジェンド装備に近付いた。


「イロナ。なんか欲しい物あったか?」

「この剣がもう少し長いといいんだがな~」

「おしいのか……ま、もらっとけ。予備でもメインでも、どっちでも使えるだろ。あっちの軽鎧もどうだ?」


 防具を探しに来たのに、イロナは剣をご所望。なので、ヤルモは軽い感じで決定し、本筋に戻してイロナに白い軽鎧を装備させる。


「おお~……いいんじゃないか?」

「うむ。レジェンド防具はサイズがピッタリになるから、やはりしっくりくるな」

「じゃあ、それで決定な。俺はどれにしよっかな~?」


 イロナの装備が決まったら次は自分の物。とりあえず、一際目に付く大きな黒い盾に近付くヤルモ。


「これって、レジェンドってわりには色合いが悪魔的じゃね?」


 今まで見たレジェンド装備は美術品のように綺麗な物ばかりなので、ヤルモはアンテロに説明を求める。


「その盾はいちおうランクはレジェンドってなってるんだが、呪いの装備だ」

「呪い? 装備したら、何かデメリットがあるのか??」

「そうだ。硬さはレジェンド装備の中でも一番なんだが、見た目より重くなる呪いが掛かっているらしく、とにかく重い。騎士5人がかりでようやく動かせる物だから、なんにも使えねぇんだ。ま、そのおかげで、レジェンド装備なのに皇帝陛下に奪われずに、ここの鍛冶場に飾れるんだけどな」

「ふ~ん……」

「おい! 触るな! 倒れたら怪我するぞ!!」


 ヤルモが大盾の裏に回って握りを掴むと、アンテロが焦り出した。


「お~。確かに重い。けど、なんとかなりそうだ」

「嘘だろ……」


 呪いの大盾、ヤルモに装備可能。誰にも装備できなかった大盾を軽々持ち上げたヤルモを見て、アンテロはアゴが外れそうなぐらい口をあんぐり開けるのであった。


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