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217-1 魔王討伐直後2


 帝都から黒い霧が散々に飛び去るなか、その隙間から太陽の光が射し込み、いまだレッサーヴァンパイアと戦闘中だったアルタニア軍の元へと届けられた。

 その光はレッサーヴァンパイアを灰に変え、辺りに広がった頃には、アルタニア軍は全てを悟った。


 勇者パーティが魔王を倒したと……


 レッサーヴァンパイアが次々と灰になって行くなか、建物の上に五人の影が現れる。


「聞け! 魔王、討ち取ったり! 魔王……討ち取ったり~~~!!」

「「「「「うおおおおぉぉぉぉ」」」」」


 勇者パーティの登場だ。オスカリの簡潔な叫び声に、アルタニア軍は声にならない声を張り上げ、歓喜に打ち震えた。

 その声は徐々に揃い、大きな勝鬨(かちどき)となって、いつまでも響き渡るのであった……



 歓喜の声のなか、勇者パーティはアルタニア軍のド真ん中を割るように進み、褒め称えられる声は苦笑いでやり過ごす。

 そうして帝都を出て、本陣にまで戻った勇者パーティは皇帝に謁見。ヘンリクが用意していたお褒めの言葉を皇帝に棒読みで喋らせ、これにて魔王討伐作戦は完全に終了となった。


 それからも賢者ヘンリクは忙しい。皇帝と聖女マルケッタを使い、野営の準備と帝都の整備の指示。夜までには、皇族と自分たちの寝床だけは準備させ、あとのことは皇帝に命令させた将軍に任せる。


 その頃にはヤルモたちの元へ伝令兵が現れ、宿泊場所の準備が整ったと説明を受ける。しかしイロナが絶賛筋肉痛で動けないので、担架で運ぶしかない。


「手伝いましょうか?」

「いや、いい。先を歩け」

「はあ……」


 ヤルモの行動に伝令兵が呆けている理由は、イロナが寝ていた寝袋に二本の槍を結び、ヤルモが両方の端を握って持ち上げているからだ。

 本来の担架での運び方は、両端を二人の人間が握っても重いのだから、どう考えてもおかしい。ヤルモのパワーだから、こんな超不安定な運び方でもイロナを揺らさずに運べるのだ。


 本日の宿泊場所に着いたら、兵士が貴族邸を囲むように守っていた。これは、暗殺犯対策。

 いくら皇帝を魔法で縛っていても、もしものことがある可能性が残っているので、ヘンリクが手を回していたようだ。


 ヤルモたちが貴族邸に入ると、軽く掃除した部屋に案内される。ただし、マジックアイテムの調整が終わっていないので、水等はお風呂の浴槽に張られた水を使わないといけないとのこと。

 体を拭くぐらいしかできないが、ヤルモは飲み水も食料も持っているのでそれで了承し、今日の夕食は断って、誰も部屋に入るなと言っていた。


 その部屋で、ヤルモは献身的にイロナのお世話。服を脱がせ、イロナの体を綺麗に拭き、ヤルモのヤルモはテント。いくら股間が膨らんでいても、イロナは動けないので狙われない。

 イロナが綺麗になったらベッドに運び、ヤルモも体を拭いたら、ベッドの隣にある椅子に腰掛ける。


「そのまま寝るか? 何か胃に入れるか??」

「うむ。空腹だから食わせてくれ」

「わかった。あ~ん」

「あ~ん」


 ヤルモはとりあえず、柔らかいパンを一口大にちぎったらイロナの口へ。水もゆっくり飲ませていたら、イロナは肉が食べたいとのこと。

 お昼用のドラゴン肉が残っていたので、一口大にナイフで切ってイロナの口に入れる。やや硬かったからイロナの筋肉痛を刺激したようだが、大好物なので頑張って食べていた。


 ヤルモもお腹がへっていたので、イロナが咀嚼(そしゃく)している間に携帯食をモグモグ。そんなことをしていたら、イロナが笑い出した。


「フフフ。至れり尽くせりだな」

「まぁ、今日のMVPには、これぐらいして当然だ」

「有り難いが、これも性奴隷の仕事だろ? 明日には動けるようになっているから、次は我の番だな」

「それは楽しみだ」

「うむ。明日は十回ヤルぞ」

「それは死ぬかも……」


 優しくしてくれるのかと思っていたイロナから死の宣告が来ては、ヤルモもテンションダウン。どうやってイロナのヤる気を削ごうかと考えながら餌付けする。

 それからイロナがお腹一杯になったら、ヤルモは頭をガシガシ掻いてから頭を下げる。


「イロナ……ありがとうな」

「ん? なんのことだ??」

「魔王だ。イロナが魔王を倒してくれたから、俺の故郷が救われた。本当にありがとう」


 ヤルモがイロナの手を取ると「痛いから下ろせ」と言われたので雰囲気はあまりよくない。


「礼を言われる筋合いはない。我は我のやりたいことをしただけだ。これだけ楽しめたのなら、こちらから礼を言いたいぐらいだ」

「それでもだ。イロナ……ありがとう」

「だから……ん……」


 ヤルモはイロナが動けないことをいいことに、唇を奪って黙らせる。するとイロナも目を閉じ、長い時間が流れ……


 ドーーーン!


 ない。ドアが突然開き、オッサンたちが雪崩れ込んだ。


「なっ……お前! 何やってんだ!?」


 そう。勇者パーティがヤルモたちの甘い一時を覗き、「見せろ見せろ」となって倒れ込んだのだ。


「いや~……いっつもお前たちが何してるか気になってな」


 しかも、オスカリは覗いていたことの反省の言葉が一切ない。


「せめて謝りやがれ!」

「まあまあ。酒を持って来てやったんだから、酒の(さかな)にちょっとぐらい聞かせろよ」

「出て行け~~~!!」


 こうして魔王討伐の宴は勝手に始まり、ヤルモたちの部屋が騒がしくなるのであっ……


「うるさい!」

「「「「「は~い」」」」」


 イロナに一喝されて、勇者パーティは自分の部屋に戻って行くのであったとさ。


次話『 217-2 』は性的な描写が含まれていますのでアルファポリスにて『 R-20 』のサブタイトルで、明日更新します。

18歳以上でもしも読まれたい方は、アルファポリスにてしばしお待ちください。

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