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216 魔王討伐直後1


「フゥ~~~……」


 魔王が灰になって消えると、イロナは【戦女神化】を解いて余韻を楽しんでいた。


「イロナ!」


 そこへ、ヤルモたちが駆け寄って来た。


「お疲れさん」

「うむ。さすがに疲れたな」


 まずはヤルモからの労いの言葉。以前労ったら疲れていなかったのでイロナに怒られたが、今回は全力を出し切って疲れていたから笑顔で受け取ってもらえた。


「てか、さっきのはなんだったんだ!?」


 次に、オスカリ。魔王を倒したよりも労いよりも、イロナの【戦女神化】が気になるらしい。


「アレは……」

「わああああ! なんでもない! 詮索するな!!」


 イロナは特に隠しているわけでもないので喋ろうとしたが、ヤルモに大声で止められた。


「なんだよ。一緒に戦った仲間なんだから、教えてくれてもいいだろ」

「もう魔王がいなくなったから仲間じゃない」

「じゃあ、マブダチからのお願いだ」

「しつこい。あと、何度も言うけど、俺はダチになったつもりはないからな」

「連れねぇな~」


 人見知りで人間不信のヤルモでは、友達と呼ぶ人間は騙して来ると思っているので一切受け入れない。そのせいで、オスカリは悲しそうな顔になった。


「そんな顔しても、俺たちの秘密は喋らん。それに聞かないほうが身のためだ。カーボエルテの勇者と聖女はイロナの秘密を知って、死ぬほど後悔していたぞ」

「そんなこと言われたら、よけい気になるだろ」


 クリスタたちを出して脅してもきかないので、ヤルモは直接脅す。


「世界がイロナに滅ぼされることになってもいいのか?」

「うっ……もういいわ!」


 さすがにイロナの名前を出されると効果抜群。どんな経緯で滅ぼされるかわからなくても、怒らせたら確実に滅ぶのでオスカリも諦めるしかなかった。



「まぁアレだ。これでアルタニアは救われた。俺たちはまったく役に立たなかったけどな」


 オスカリが自分たちを卑下してそんなことを言うので、先ほど突き放したから少しはかわいそうと思ったヤルモがちょっとは慰める。


「そんなことはないだろ。イロナのスタミナ温存には役に立ったはずだ。カーボエルテの勇者じゃ、足を引っ張るだけだったぞ」


 比べる対象がクリスタしかいないのでヤルモが何度も名前を出したが為に、遠いカーボエルテではクリスタが連続でくしゃみをしていたが、ヤルモとオスカリには関係ない。


「その勇者は気になるが……ま、そう言ってくれて浮かばれたよ」


 オスカリが満更でもない顔をすると、珍しくイロナからもお褒めの言葉が出る。


「そうだ。お前は真の勇者だ。主殿と一緒だったが、お前たちでは魔王に一太刀も入れられないと思っていたぞ。我の予想を覆すとは、天晴れだ!」

「はあ!? おおお、お前。見てたのか!? だったら早く助けに来いよ~~~!!」


 まさかイロナが空から見ていたと知って、あの苦労はなんだったのだと嘆くオスカリたち。ヤルモもウンウン頷いていたが、気になることはある。


「いつから見てたんだ?」

「主殿が一人になる少し前だ」

「もう少し早くてもよかったんじゃね?」

「皆、動きがよかったから、邪魔すると悪いと思ったのだ。人数が減ってからも見物だったぞ」

「そりゃ、死ぬ寸前だったからだよ~~~」


 本当にギリギリだったので、ヤルモも情けない声を出してしまったが、ハッとして身構える。情けないとイロナに殴られると思ったらしい……


「アレ? 殴らないのか??」


 しかし、イロナは立ったまま動こうとしないので、ヤルモは不思議に思う。


「あとから殴る」

「あとから? てか、ずっとその体勢だけど、どうかしたのか??」

「これは……耳を貸せ」


 イロナが言いづらそうにするので、ヤルモは耳を近付けた。


「アレは短時間しか使えない上に、筋肉痛が酷いのだ」

「あ……俺のと一緒か」

「そうだ。だから、いまは体を休めているのだ」

「ふ~ん……」

「なんだその顔は……触ったら殺すぞ」


 ヤルモがチャンス的な顔をすると、すかさずイロナに脅されたので慌ててポーションを出した。


「筋肉痛には効かないけど飲んでおけ。あ、飲ませようか?」

「うむ。ゆっくりだ。ゆっくりだぞ」


 ヤルモとイロナがコソコソとイチャイチャしていたら、仲間と喋っていたオスカリが近付いて来る。


「俺たちはアルタニア軍に報告して来るけど、お前たちはどうする?」

「えっと……しばらくここで休憩してる。寝る場所が決まったら呼びに来てくれ」

「おう。わかった」


 オスカリがふたつ返事で(きびす)を返した瞬間、ヤルモは言い忘れていたことを思い出した。


「待った!」

「なんだ??」

「魔王を倒したのは、お前たちってことにしてくれないか? 俺たち、目立ちたくないんだ」

「できるか!!」


 最高級の手柄はふたつ返事といかなく、すったもんだあった末、勇者パーティとヤルモパーティの共闘で魔王を倒したことになるのであった。



 それからヤルモはイロナを休憩させようと地面を整地して寝袋を敷き、「ゆっくり、もっとゆっくり」と言うイロナを寝かせて頭を撫でる。


「触るでない」

「あ、はい」


 ちょっと触っただけでも筋肉痛に響くらしいので、手を引っ込めるヤルモ。


「そんなことになるから、アレを出すのを渋っていたのか」

「いや、筋肉痛のせいではない」

「じゃあ、なんでだ?」

「アレは強力すぎる。戦闘が楽しめないだろうが」

「そっちか~~~」


 イロナが【戦女神化】を出し渋っていたのは、たんなる趣味。どこまでも戦いを楽しみたいイロナにヤルモは納得し、特性を聞きながらのどかな時間が流れるのであった……


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