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210 アルタニアの魔王5


 魔王第二形態に、イロナは苦戦中。不規則に動く六刀流は受けづらく、避けるのもやっと。魔王はスピードでもイロナの上を行ったらしく、かするようになって来た。


「もらった!」


 魔王の剣がイロナの顔をかすったと同時に足を滑らせてしまい、倒れたところを狙われる。

 六本の剣が同時に振るわれ、真横に近い体勢のイロナの全身が斬り裂かれ……


「フンッ!」


 ない。避けようのない体勢なのに、イロナは空気を蹴って真横に脱出。そのまま真横に跳んで、少し離れた場所で地面を削って止まった。


「よく避けたな……いや、空を飛んでいたのだから、体勢を崩していても関係ないか」


 足を止めたイロナにゆっくりと近付く魔王はお褒めの言葉。いや、分析に近い言葉をイロナに送った。


「先ほどの攻撃はなかなかよかったぞ」


 イロナもイロナでお褒めの言葉。自分に手傷を負わす相手と出会って嬉しいみたいだ。


「もう勝負は見えたな」

「底の浅い発言はするな。我はまだ本気を出していないのだぞ」

「フフフ……まだまだ余を楽しませてくれるのか」

「逆だ。貴様が我を楽しませるのだ!」


 相変わらず魔王みたいな発言から、イロナの肉体強化スキル発動。このスキルは、ドラゴンの首を綺麗に落としたい時に使われることがほとんどだが、強敵にもたまには使うらしい。


「第3ラウンドだ」

「行くぞ!!」


 イロナの準備が整うと、魔王の突撃。凄まじい速度の六刀流が振るわれるが、全てイロナに紙一重でかわされる。


「フンッ!」

「ぐあっ!?」


 その速度のなか、イロナしか見えない隙にカウンター。鎧の上から叩き斬り、魔王を吹き飛ばした。


「喰らえ~~~!」

「うおおぉぉ~~~!!」


 そこを畳み掛けるイロナ。必死に受ける魔王。二人の斬り合いはイロナに分があるが、それでも魔王には回復能力があるから互角の応酬となるのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 一方、その戦いを見ていたオスカリたちは……


「すげぇ……竜巻が起こってんぞ」


 異次元の戦いに、称賛の声を送っていた。


「う~ん……」


 そんななか、ヤルモだけが難しい顔をして見ていたので、オスカリは肩を叩く。


「なんて顔してんだ。嬢ちゃんが押してるだろ」

「まぁ……そうだけど……」


 イロナたちの戦いを目の前でやられたらさすがに見ることは難しいだろうが、外からならばどちらが優勢かは見える。

 現にイロナは攻撃を受けることは無くなり、連続とはいかないが魔王は斬られる回数が多い。だが、ヤルモの口が重い。


「何か気になることがあるのか?」


 オスカリはイロナの勝ちを確信しているが、もしものことを想定して見ているのでヤルモの態度が気になるようだ。


「イロナがな~……」

「嬢ちゃんがどうした?」

「もっと楽しそうにしていてもいいと思うんだけど……心なしか、魔王も余裕な表情じゃないか?」

「確かに……」


 さんざんイロナに甚振(いたぶ)られた経験を持つ者の勘。オスカリもイロナの雰囲気が気になり出した。


「これ、あんまり言いたくないんだけど……」


 ヤルモが口を濁しても、オスカリは聞くしかない。


「なんだ?」

「まさかだけど……まさかだぞ?」

「気になるだろ。早く言えよ」

「魔王って、第二形態以上があったりしないよな?」

「第、三形態……聞いたことあるヤツいるか!?」


 ヤルモが危惧している予想を告げると勇者パーティで話し合うが、そのような話は噂ですら聞いたことがないとのこと。

 しかし、嫌な予感はひしひしとヤルモたちにのし掛かる。これは、百戦錬磨のトップ冒険者の勘なのかもしれない。


「あの魔王の顔……マジで第三形態があるかもしれないぞ」

「イロナが勝てるならいいけど……」

「念のため、介入した場合のシミュレーションをしておくか。いまの大きさから変わるかもしれねぇから……」


 イロナが歯が立たないケースやイロナと共闘するケース。万が一、イロナが倒れたケース等を想定して話し合いをする勇者パーティ。

 ヤルモも作戦に組み込まれているので、魔王を見ながら耳を傾けている。


 そうして戦闘を見ながら話し合って20分ほどが経ったところで動きがあった。


「やったな……」

「ああ……」


 イロナに斬られた魔王が、倒れたまま動かなくなったのだ。しかし、オスカリとヤルモたちは、これからが本番と言わんばかりに緊張しているのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 ツカツカと魔王に歩み寄るイロナ。ヤルモたちと同じく、いまだに臨戦態勢を解かない。


「フフフ……第3ラウンドも余が負けるとは……」


 イロナが近くに来たと気付いた魔王は、空を見たまま弱々しい声を出した。


「それは演技か? それとも本気か??」


 イロナが剣で指しながら問うと、魔王は大声で笑い出した。


「フハハハハハ。まさか気付いていたのか!? フハハハハハ」

「やはりか……」


 イロナがニヤリと笑うと、魔王はヨロヨロと立ち上がった。


「そうだ。余にはまだ底がある。とくと見ろ! 第三形態だ~~~!! フハハハハハ」


 魔王復活。先程の竜巻よりも大きな竜巻が現れ、雷鳴と暴風が吹き荒れる。その内部にいる魔王は、人知れず体が変容して行くのであった……


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