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206 アルタニアの魔王1


「ちょっと休憩してから行くか?」


 イロナとヤルモが石垣に座ってイチャイチャしていたら、勇者パーティが戻って来てオスカリが声を掛けた。


「そうだな……何か腹に入れておくか?」

「うむ。ドラゴンエンペラーの肉があっただろ? アレを出してくれ」

「ほい」


 新・四天王を倒したら、小休憩。各々手持ちの携帯食を食べていたが、イロナだけはお弁当に作ってもらっていた骨付き肉をワイルドにムシャムシャ食ってる。

 そうして食事が済むと、イロナはヤルモの太ももに頭を乗せて目を閉じた。


 勇者パーティはイロナを少しでも休ませようと、見張りを志願。二人に背を向け、囲むように立つ。


「しっかし、寝顔だけ見たら、ただの嬢ちゃんなのにな」


 オスカリはチラッと後ろを見ると、賢者ヘンリクとコソコソ喋る。


「私たちより戦っているのに疲れを見せないなんて、いったい何者なのだろう」

「さあな~……ま、知らないほうがいいんじゃないか?」

「うむ。もし本当に魔王だったら、私たちにお声が掛かる。絶対に戦いたくない」

「てか、お前だけ嬢ちゃんにしごかれてないんだから、次は参加しろよ」

「嫌に決まってるだろ。私は筋肉担当じゃないんだ」

「い~や。引きずってでも嬢ちゃんの前に連れて行くからな」


 オスカリとヘンリクがチチクリ合っていたら、イロナの目が見開いてヤルモの体がビクッと跳ねた。ちょっと怖かったみたいだ。

 それからイロナは装備を確認しながら付けていき、ヤルモたちも装備を整えた。


「嬢ちゃん。体調はどうだ?」

「絶好調だ。これならもう少し派手に戦っていてもよかったかもしれん」

「そ、そうか……んじゃ、行くか!」

「「「「「おう!!」」」」」


 イロナを心配したオスカリは、万全と聞いておいしいところを奪った。そして、イロナを守るように前を歩き、ヘンリクとコソコソと喋っている。


「どんだけ化け物なんだ……もう俺なんてヘトヘトだぞ」

「まったくだ……歳は取りたくないもんだ」

「歳のせいだけじゃない気がするんだが……でも、そろそろ俺たちもそんな歳か~」

「そうだな。後任も考えていかなくてはならないな」


 イロナのせいで、引退を考えてしまう勇者パーティ。けっして体力でも若い者には負けていないのだが、化け物のイロナとスタミナおばけのヤルモを見てしまっては、勘違いしても仕方がないことなのかもしれない。


 そんな無駄話をしながらも勇者パーティは露払いを務め、帝都城に侵入。新・四天王からは魔王が玉座の間にいると情報を得ていたので、賢者の予想を元に先を進む。

 帝都城はユジュール王国の城より倍近く大きいが、似たような作りだったのでそこまで迷うことはない。それに邪魔をするモンスターもすでにいないので、思ったより早く玉座の間に着いた。


「俺たちが開けていいか?」

「かまわん」

「うっし。臨戦態勢だ」


 オスカリはイロナに許可を取ると、パラディンのトゥオマスと共に重厚な扉に手を掛けた。


「行くぞ!」

「おう!」


 そして同時に強く押して大きく開き、二人は防御体制を取る。


「あいつが魔王……このまま進むぞ」


 玉座の間には、玉座に腰かけて足を組み、頬杖をつく赤黒い髪の男がいるのみ。その貴族のような服装の男はいまだ立つ気配がないので、勇者パーティは防御陣形のままゆっくりと歩を進める。


「よく来たな冒険者よ……」


 玉座に近付くと、女性と見間違うほど整った顔をした美男子の魔王が姿勢を崩さず声を掛けて来たので、勇者パーティはその位置で止まった。


「新・四天王を倒したのならば、なかなかの実力者なのだろう。どうだ? 全員、余の配下とならないか??」


 魔王の言葉は、まずはスカウトから。その問いに、オスカリが返す。


「誰が魔王の配下になるってんだよ」

「断るのか……不老不死にして領地もくれてやるのだ。何が不満なのだ?」

「そうやってあいつらも引き抜いたのか。だが残念。俺たちには何を言ってもきかないぞ!」


 オスカリは魔王に剣をビシッと向けて反論すると、勇者パーティは全員武器を魔王に向けた。ヤルモは……乗り遅れているのでやらないみたい。


「フッ……意志の固い人間もいるのだな」

「そうだ。俺は勇者オスカリ! 魔王の言葉に何ひとつ揺るがない!!」

「勇者? あのザコの集団か……」


 魔王が眉を潜めると、オスカリは反論する。


「そいつらは口だけ勇者だ。本物の勇者の実力はまったく違うぞ」

「ほう……ならば楽しませてもらおう。その後、ムリヤリ眷属にして、その手で世界を滅ぼしてやろうではないか!」


 魔王が声高らかに立ち上がると、勇者パーティは中央を開けるようにジリジリと下がった。


「何を下がっているのだ?」


 今まで魔王を挑発していた勇者パーティが下がるので、さすがに魔王も不思議に思う。


「あ~……偉そうなことを言ってたけど、お前と戦うのは俺たちじゃないんだ」

「は? じゃあ、誰が戦うのだ? そこの重装備の男か??」


 魔王の問いにヤルモが首を横にブンブン振っていると、イロナが前に出る。


「我だ! 貴様こそ、我を楽しませてくれるのだろうな!!」


 イロナがロングソードを掲げて怒鳴るので、魔王は首を傾げる。


「一人で戦うのか??」

「そう言っているだろうが……もう我慢ならん! 行くぞ~~~!!」


 イロナ、我慢の限界。どちらが魔王かわからないことを言いながら、魔王に斬り掛かったのであった……


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