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204 新・四天王4


 勇者パーティはライネを倒したら、急いでヤルモの助けに向かった。


「あ~……嬢ちゃん。あいつのこと、助けないのか??」

「ん?」


 そこでは、ヤルモがカイザーヴァンパイアの二体、グラマーな美女アルヤとゴシックロリータの少女パウリーナと激闘を繰り広げているのにも関わらず、イロナが石に腰掛けて眺めていたのだ。


「なかなか面白いから、ちょっと見学していたのだ」

「いや、どう見ても押されているだろ?」


 ヤルモはアルヤの剣とパウリーナの魔法に手も足も出ずに、防御一辺倒。これでは、オスカリも苦戦しているように見えても仕方がない。


「お前ほどの男がどこを見ている。主殿は、あの状態をずっと続けているのだぞ」


 いちおうイロナは勇者であるオスカリを認めているらしく、少し褒めたらオスカリは頭をボリボリ掻いてヤルモの戦闘を凝視する。


「あ……確かに嬢ちゃんの言う通りだ。俺の速度でもギリギリだったのに、ヤルモが追い付けるわけがない。なのに、完璧に受けている……」

「完璧ではない。致命傷を避け、バランスを崩さないように受けているのだ」

「どうなってんだ……」


 ヤルモの技術を見た勇者パーティは、一斉に息を飲む。


 ヤルモは、アルヤとパウリーナの直接攻撃はどの角度から来ようと正確に大盾で受け、間に合わない場合は攻撃力の低いパウリーナの杖を鎧で受ける。

 パウリーナの氷魔法で攻撃された場合は大盾で防御し、死角から現れたアルヤの剣を剣で受ける。

 アルヤとパウリーナのその速度は、勇者オスカリですら受け切るにはギリギリの速度なので、勇者パーティは感動にも似たような感覚が押し寄せているようだ。


「我もやられたことなのだが、弾き返す時に相手の位置を調整しているのだ。だから、連続しての攻撃が遅れるし、予想しやすいようだ」

「嘘だろ……あの速度の中で、そんな高度なことをやっているのか……」

「な? 面白いだろ??」

「まぁ……そうかな??」

「本当は反撃してくれたら完璧なのだがな~……主殿のスピードでは、受けているだけで奇跡か」


 イロナはヤルモを褒めているようだが、勇者パーティにはいまいち伝わらない。これは「そんなことより助けろよ」と、一番に思っているせいかもしれない。

 しかし、イロナが楽しそうに見ているので助けに行けず、勇者パーティもヤルモVSカイザーヴァンパイアの戦闘を見続けるのであった。



 イロナと勇者パーティが見ているなか、アルヤとパウリーナは幾度もの攻撃を仕掛けていた。


「なんなの! いったいいつになったら倒れるのですの!?」


 ヤルモの防御が硬すぎて、アルヤはお怒り。余裕で倒せると思っていたのに、一向にクリティカルヒットが入らないので苛立って来た。


「パウリーナ! ……いいですわね?」

「うん!」


 ヤルモに攻撃を仕掛けながら、アルヤとパウリーナは堂々と相談。これは超音波で喋っていたから、ヤルモには聞こえないからいいのだ。


 その相談が終わると、折りを見て実行。


「きゃっ!?」

「パウリーナ!?」


 パウリーナ痛恨のミス。ヤルモに攻撃をしようと近付いたのに、石に(つまず)いてベチャッと前のめりにこけてしまった。

 ヤルモの目の前でこけたのだから恰好の的。アルヤも焦って守りに入る……


「なんで攻撃しないのですの!?」


 しかし、ヤルモは後ろに跳んで大盾を構えているので、アルヤが怒鳴り付けた。


「普通、隙だらけの者がいたら攻撃しますでしょ!?」

「だって……攻撃したら、お前が攻撃してただろ??」

「ぐっ……」


 残念ながらアルヤの策略はヤルモにバレバレ。わざとパウリーナに隙を作らせ、さらに犠牲にして、ヤルモが攻撃している隙をアルヤが突く作戦だったのだ。


「ムカつく野郎ですわね。わたくしたちに一切攻撃しませんし……」


 ヤルモもできることなら攻撃したいのだが、下手に攻撃して隙が生まれると大ダメージを受けかねないので防御に徹しているのだ。



 アルヤが攻撃をやめてヤルモを恨めしい目で見ていると、パウリーナが何やら気付いて、ヤルモの後方を指差した。


「なっ……どうしてあいつらがここに揃っていますの……」


 そこには、イロナと勇者パーティの姿。新・四天王の仲間が負けると思っていなかったアルヤはあからさまに驚いた。


「やっと気付いたか。イロナは開始5分でこっち来てたぞ。勇者パーティは5分前ぐらいに来たかな??」


 現在は、戦闘開始から20分ほど。激しい戦闘をしていても、ヤルモは視野を広く取り、体内時計は正確に時を刻んでいたのだ。


「クスターとライネはどうしたのですの!?」

「倒したからこっちに来たんだろ」


 アルヤは信じられないようなのでヤルモが簡潔に説明。しかし、アルヤはもうひとつ気になることがある。


「さっき開始5分で来たと言ってたのに、どうしてあなたを助けないのですの? しかも全員揃ってからも……」

「さあ??」

「あなた……仲間から嫌われているんじゃなくて??」

「そんなわけないだろ~~~!!」


 ヤルモ、全力否定。イロナのことだから面白がって自分の戦闘を見ていたと確信し、勇者パーティも止められているのだと信じてはいるが、これまでボッチ生活をしていたのでアルヤに指摘されたからには自信が揺らぐ。


 この戦闘、ヤルモにようやく与えたダメージは、精神攻撃。ヤルモは大ダメージを受けて、フラフラっとよろけるのであったとさ。


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