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203 新・四天王3


 ヤルモが戦闘を始める少し前、勇者パーティはいきなり総攻撃を、冒険者風の若い男ライネに仕掛けた。


 賢者ヘンリクのホーリーランス。

 大魔導士リストのファイヤーランス。

 着弾と同時にパラディンのトゥオマスの突きと魔法剣士レコの斬り付け。

 ラストは勇者オスカリによる会心の一撃。


 総攻撃は全てヒット。最後のオスカリの袈裟斬りを喰らったライネは吹っ飛び、花壇に激突したのであった。



「そこそこ手応えはあったんだけどな~……わざと喰らってくれただけか」


 本来ならば、このコンボで巨大モンスターもいちころなのだが、新・四天王でありカイザーヴァンパイアとなったライネには効かない。

 しかし、これは想定内。魔王が聖属性になっているという情報があるから、眷属に聖属性の攻撃が通じるかを試していたようで、ヘンリクとリストはアイコンタクトで何かを確かめ合っている。


 その総攻撃を喰らったライネはいちおうダメージは負ったようだが、立ち上がった頃には完全回復していた。


「あ~……けっこう痛いね。ヴァンパイアにも痛覚あるんだ」


 幼さの残る顔のライネはニヤケながら、勇者パーティに近付いて質問する。


「勇者パーティって聞こえてたけど、そんなモノなの?」

「俺たちが弱いと言いたいのか??」

「そうそう。そんな感じ。勇者なんて、たいしたことないんだね。どうりでダンジョン攻略を冒険者にやらせるわけだ」


 ライネの言い分にオスカリは不思議に思う。


「お前……昔の記憶があるのか?」

「うん。どうせ死ぬならアルタニア帝国に復讐したいじゃん。魔王様が眷属になるなら記憶を残してくれるって言ってくれたんだ」

「そんなことのために人間やめたのか……」

「そんなこと? 皇帝って酷いんだよ。僕たちに四六時中働かせて満足な給料払わないんだ。あ~あ……あの時、名誉職だとか言われて飛び付かなければ、冒険者のまま楽しく暮らせたのにな~」


 ライネに後悔の念が見えたので、オスカリは説得を試みる。


「だったら俺たちと一緒に来ないか? これからアルタニア帝国を改革する予定だ」

「お~。それはいいね。ヴァンパイアのままでも冒険者になれるのかな?」

「俺が掛け合ってやる」

「やった~!!」


 ライネは大袈裟に喜んでいるので、オスカリは説得が上手くいったと思ったのも束の間。


「これでまた冒険者狩りができるね」

「あん??」

「ほら? 上級ダンジョンの下層なら、殺したとしても滅多にバレないじゃん? モンスターと戦ってる冒険者を後ろから斬ると、いい顔してくれるんだよね~。なのに、ひとパーティしか入れない特級ダンジョンじゃ面白さが半減だよ」


 ライネの(ゆが)んだ笑顔が(おぞ)ましく感じたオスカリは嫌悪感を見せる。


「チッ……クソ野郎だったか……」

「それそれ~。その顔……僕の正体に気付いた人はいつもその顔をしてくれるんだ。驚き過ぎで面白いよね~」

「しゃあねぇ。交渉決裂だ」

「交渉? 元々そっちに行くつもりなかったよ。これから人間を狩りまくれるんだから、断然こっちのほうが楽しいでしょっ!」


 ライネは喋りながら腰から下げた二本の剣を抜いた。


「お前にこれからはない! 俺たちがきっちり消し去ってやる!!」


 オスカリはそう言って突撃。激しい剣劇を繰り広げる。しかし、ライネは二本の剣で軽々受けている。


「おっそ。かっる……そんな剣じゃ、僕にかすることもないね」

「どうだろうな!」

「うっ!?」


 オスカリが大振りした瞬間、ライネの後ろからトゥオマスがランスを。横からはレコが炎を(まと)った剣を突き刺した。

 これは、当初の予定通り。オスカリは一人で相手し、仲間が攻撃しやすい場所に追い込んでいたのだ。


「だからどうした! そんな攻撃効かないよ!!」


 ライネが剣を振り回すと、二人は離脱。するとタイミングよく、光の柱にライネは(とら)われ、空から雷が落ちる。


「ぐああぁぁ」


 ヘンリクとリストが攻撃魔法を放ったのだ。勇者パーティは連携の取れた動きをアイコンタクトひとつでやってのけたのだ。


「いまだ!!」


 こんなチャンスを見逃さないオスカリ。勇者パーティの前衛三人が畳み掛ける。


 オスカリの会心の連撃。

 トゥオマスの連続突き。

 レコの連続斬り。


 全て聖属性の支援が乗っているので、ライネに取って大ダメージとなった。



「だからそれがどうした~~~!!」


 しかしライネは強引に脱出。素早く二刀を振り、大きく後ろに飛んだ。


「ぐああああ!?」


 そこは、ヘンリクの罠がある場所。ライネが地面を踏んだ瞬間、聖属性の柱が立ち、足が止まったところをリストが追い討ち。今度は火柱が立った。


「まだまだ行くぞ~~~!!」

「「「「おおおお!!」」」」


 そして嵌め技。勇者パーティはライネに攻撃させないように慎重に戦い、一方的にダメージを積み重ねるのであった。



「ようやく再生は止まったようだな」


 ライネが両手を切断されたまま立ち尽くすと、オスカリは仲間に攻撃をやめさせて一人で前に出た。


「き、汚いぞ……」

「そうか? モンスター相手に戦う時は、いつもこれだったんだがな~」

「一対一なら絶対に負けなかったのに……」

「言うねぇ~。背中から斬らないと戦えないクセに」

「ちがっ……」

「いいや。違わねぇ。これが、お前が仕出かした結末だ。正々堂々戦ってもらえるわけがねぇだろ」


 オスカリはライネの言い訳を被せ気味に論破する。


「ふざけるなあぁぁ~~~!!」


 するとキレたライネは太い両腕を生やし、オスカリに飛び掛かった。


「やると思ったぜ!」


 しかし、オスカリに一切の油断はない。剣を真っ直ぐ振り下ろし、ライネを真っ二つに斬り裂いた。


 こうしてライネは灰となり、戦闘時間が15分で勇者パーティの勝利となるのであった。


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