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199 魔都6


 空ではヴァンパイアエンペラーとドラゴンをイロナが相手取り、地上では巨大モンスターに囲まれた勇者パーティが倒れたヤルモを必死に守っている。

 そんな激しい戦闘が繰り広げられるなか、横になって息を整えているヤルモにオスカリから声が掛かる。


「おい! さっきのヤツは……」


 ヤルモは戦車モードのことを聞かれると思って心を閉ざす。


「また使えるのか!?」

「ゼェーゼェー。詮索するな……え??」


 しかし、微妙に違っていたので聞き返した。


「もう一度さっきのヤツを頼りたい! 使えないなら撤退を視野に入れる。どっちだ!?」

「つ、使える。ゼェーゼェー」

「時間を言え! それまでヤルモのことは必ず俺たちが守る!!」

「ゼェーゼェー。10分ほど……」

「わかった! 聞いたな!?」

「「「「おう! 任せろ!!」」」」


 オスカリはよけいなことは聞かずに、勇者パーティも力強く返す。その激闘のなか、ヤルモは息を整えながら考えてしまう。


 こいつらは俺のことを聞かないのか?

 てか、こんな状況なら、俺を(おとり)にして逃げてもいいだろ?

 いや、イロナがいるから逃げられないのか……

 それでも、あんなもの見せられたら詳しく聞いて来てもいいものなのに……

 また勇者か……チッ。こいつらは、いつも俺の心を惑わせる。


 アルタニア帝国の勇者は別として、勇者クリスタに続き、勇者と認めるに足る男に出会ったからにはヤルモにカルチャーショックが生まれる。

 その男が、自分を頼りにしているようなことを言ってくれた。不利な状況でも見捨てず必死に戦ってくれている。ここまでされたからには、ヤルモも男気を見せないわけにはいかない。


(あ~……くそっ! もったいないけど、これを飲むしかないか!!)


 いや、若干後ろ向きなことを心の中で考え、息を整えながらヤルモはポーションをがぶ飲みする。

 そのポーションは、ヤルモが何度も深いダンジョンに潜って手に入れた物。鑑定ではMPを完全回復するとなっていたが、上限が千となっていた。売れば、金貨20枚は下らないポーションだ。

 もしもの時のために今まで手を付けなかったMPポーションを、ヤルモは総個数の約5分の1を飲み干したのだ!


 ……あ、ヤルモは普段MPを使わないし、貧乏性だからけっこう持ってたっぽい。



 空からはドラゴンやヴァンパイアエンペラーが降り、地上では勇者パーティが激しい戦闘を繰り広げるなか、ついにその時が来た。


『戦車モード二移行シマス』


 ヤルモ、復活だ。


 ドンッ! ドドォォーンッ! ドドドォォォーーーンッ!


 ロケット弾が飛び交い、ロックオンされた巨大モンスターが破裂すると、勇者パーティが一斉に後ろを見た。


「いけるか!?」


 オスカリの声に、ヤルモは親指を立てて答えとする。そしてロケット弾が再び発射され、次々と巨大モンスターが沈む。


「よし! 援護に回るぞ!!」

「「「「おう!」」」」


 ヤルモがキャタピラを回して前進すると、タッチ交代。勇者パーティはスタミナを温存しつつ、ヤルモが倒し(そこ)ねた巨大モンスターにトドメを刺しながら続く。


「ほう……連続して使えたのだな」


 そうしていたら、イロナがヤルモの後ろに着地した。


「嬢ちゃんもすげぇが、ヤルモもすげぇな」

「フッ……我の主なのだから当然だ」


 ちょうど休憩中のオスカリが褒めると、イロナは誇らしくする。


「ところでなんだが、コウモリってのは何体いたんだ?」

「5匹だ。どうも指揮役が足りなくなるとかで一気に向かって来たらしいから、そこそこ楽しかったぞ。クックックックッ」

「アレを5体も相手取ったのか!?」


 全員でボコったから手こずったとは言いづらいが、それでもヴァンパイアエンペラーの防御力と回復力は本物だったので、オスカリが驚いても仕方がない。

 実際には、そこにドラゴンも10匹以上まざっていたのに、イロナはそれらを相手に余裕で斬り刻んだのだが……


「ま、まぁ、結果オーライ! 少し休んでおけ」


 オスカリはそれしか掛ける言葉は見付からず、順番が来たので巨大モンスターに突撃して行くのであった。仲間には「質問したら自信を無くすからやめておけ」と告げて……



 イロナもドラゴンがいなくなったので徒歩で進み、体を休めていたら、巨大モンスターも尽きた。その瞬間にヤルモは戦車モードを解き、仰向けに倒れた。


「ゼェーゼェーゼェーゼェー……」

「今回はまた派手にやったな」


 そこにイロナが覗き込み、嬉しそうにしている。


「ゼェーゼェー……二連続はきつい。こんなに疲れたのは初めてだ。ゼェーゼェー」

「だが、モンスターは多く倒せただろ?」

「う、うん……ゼェーゼェー」

「これでまた我に近付いたな!」

「いや、どうだろう……」


 どうやらイロナは、ヤルモがレベルアップしてると思って喜んでいるようだ。これで、夜も喜んでくれると思って……


 違いなんて、ほぼ誤差なのに……


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