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195 魔都2


 魔王討伐作戦、開始間近……


「おい……あの二人、様子が変じゃないか??」


 ヤルモとイロナを見たオスカリは仲間とコソコソやっている。

 そりゃ、ヤルモがいつもより男らしい顔をキリッとして、イロナが乙女のような顔でモジモジしているのが気になるのだろう。


「なんかあったのか??」


 仲間に聞いてもその謎が解けないので、オスカリは直接聞いちゃった。


「別に……な?」

「ん……な?」

「いや、絶対なんかあるだろ! いだ~~~!!」


 凛々しいヤルモと乙女なイロナにしつこく聞いては、照れたイロナから張り手が来ても仕方がない。

 昨夜は珍しくヤルモが攻めてイロナを喜ばせたから、こんな態度の逆転現象が起こっているのだ。あの魔王を征服したヤルモに自信が現れ、なんだかよくわからない感情に目覚めたイロナ。

 結局は二人の謎が解けないままオスカリがのたうち回るほどのダメージを負って、魔王討伐作戦の開始となるのであった。



「さあ! 前進だ~~~!!」


 ヤルモたちがわいわいやっていても作戦は進み、賢者ヘンリクの号令でアルタニア軍は前進する。ヤルモとイロナは腕を組んで歩き、勇者パーティはイチャイチャする二人に続く。

 そうして帝都前に着いたアルタニア軍が陣形を組んでいると、オスカリがイチャイチャしてる二人に声を掛けた。


「なんかよくわからんが……」

「「うん?」」

「魔王を倒しに行かないのか??」


 イロナなら、アルタニア軍の配置なんて気にせず突っ込んで行くと思っていたので、ヘンリクもそれを想定して作戦を組んでいる。

 しかし二人でチチクリ合っていたから、オスカリはよけいなことを聞いてしまったのだ。


「ま、魔王……」


 そのせいで、イロナの闘志がわなわなと湧き上がり……


「いだっ! 痛いって~!!」


 そのせいで、イロナの締め付けが強くなってヤルモの腕が折られそうになった。


「主殿! 行くぞ!!」

「走るから~~~!!」


 イロナ、完全復活。ヤルモも情けなさ復活。首根っこを掴まれて、イロナに引きずられて行くヤルモであった。


「俺……なんかマズイこと言ったか??」

「「「「お前のせいだ」」」」


 せっかく大人しくなっていたイロナが元に戻っては、オスカリの元へ非難の声が殺到するのであったとさ。



「こんなことしてる場合じゃないだろ! 行くぞ!!」

「「「「おう!!」」」」


 オスカリたちが揉めていても、イロナがヤルモを引きずって進んでいるので遅れるわけにはいかない。勇者パーティは焦って駆け出し、数人の伝令兵がそのあとに続く。


 その前方、先行していたイロナであったが、急に後ろに飛んだがために、ヤルモが宙を舞ってドシャリと落ちた。


「やっと離してくれた……てか、どうして止まってるんだ??」

「上だ」

「うえ??」


 ヤルモは引きずられて後ろしか見えなかったので、イロナの行動に理解が追い付いていない。しかしイロナが上を指差すと、状況を理解した。


「はい? モンスターが籠城戦してるだと??」


 そう。外壁の上にはモンスターらしき影がずらっと並び、弓や杖を構えていたのだ。


「クックックッ。面白いことをして来る……魔王が学習するというのは本当だったようだな」

「マジか~。こんなの兵士が大変だぞ」

「まぁ我らには関係ないことだ」

「そりゃそうだけど……イロナは上を占拠してくれないか?」


 弓矢や魔法を掻い潜って中に入るのは自分たちなら余裕だが、兵士に死傷者が出るのは確実なので、ヤルモはダメ元でお願いしてみた。


「うむ……そっちに面白そうなのがいるかもな。任せろ!」

「スタミナは温存するんだぞ~?」


 イロナは強い敵がいると思ってヤルモ案をすんなり受け入れた。その直後、勇者パーティがヤルモに追い付く。


「おい……お前の女……空飛んでるぞ?」


 そして、空を駆けて行ったイロナに驚いた。


「賢者から聞いてないのかよ」

「お前! 知ってたのかよ!?」


 今回はヘンリクも勇者パーティに参加しているので、オスカリたちから文句を言われていた。たぶん驚かそうと思って教えなかったのだろうが、ヤルモが割り込む。


「そんなことより、モンスターが外壁から攻撃して来たんだよ。対策考えろよ」

「なんだと!?」

「いちおうイロナを送り込んだけど、どこまで倒してくれるかわからん」


 ヤルモが報告するとオスカリは驚いているだけなので、会話はヘンリクと代わる。


「それだけで十分だ。その隙に突っ込もう」

「んじゃ、俺が先行する。適当についてこい」

「「「「「おう!」」」」」


 適材適所。ヤルモの頑丈さは勇者パーティにも知られているので、先行しても問題ない。ただし、外壁からの攻撃では角度があるので、ヤルモが守れるのは真後ろの少しだけ。

 ヤルモは大盾をプラカードのように真上に(かか)げて走り、自分への攻撃は無視。弓矢や魔法を顔や体に喰らっているのに、ものともせずに進んでいる。


 勇者パーティは、伝令で連れて来ていた数人のアルタニア兵を守らなくてはならないので防御重視。直撃しそうな攻撃の数が多ければ、魔法で対応。単発ならば剣等で薙ぎ払う。

 本来ならば数百の攻撃が降り注ぐのだろうが、すでにイロナが外壁の上で暴れているから簡単に守れているのだ。


 そのイロナはというと、襲い来るモンスターを小間切れにしながら品定めしている。


「人型ばかりだな……これはひょっとして、ヴァンパイア……いや、レッサーヴァンパイアか?」


 モンスターの正体は、ヴァンパイアより劣る自我の無いレッサーヴァンパイア。

死して尚、魔王に操られる哀れなアルタニア国民だ。だというのに、イロナは容赦ない。一切躊躇(ためら)うことなく斬り刻んでいる。


 そうこうしていたら、ヤルモたちも外壁の門に到着。皇帝が暮らす首都ということもあり、その門は大きくて分厚い。


「おらああぁぁ!!」


 だが、ヤルモはタックルで撃破。ちょうど(かんぬき)があった場所に穴が開いたので、衝撃で門が少し開いた。


「お前も嬢ちゃんと同類だな」


 そこに数秒遅れでやって来たオスカリは、門の厚さを確認してボヤイている。


「んなこと言ってる場合か。賢者の予想、当たってるぞ」

「「「「「うっ……」」」」」


 そこには、アルタニア国民の哀れな姿。イロナとは違い、そのレッサーヴァンパイアたちに同情して躊躇いが生まれる一同であった。


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