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190 ムオニノの町1


 賢者ヘンリクがアルタニア皇帝を傀儡(かいらい)にしたその夜、滞在している領主邸でボヤ騒ぎが起こったがヤルモが謝罪して場の収拾となり、次の日を向かえた。


「昨日、部屋で何やってたんだ?」


 朝食の席ではオスカリが気になっていたが、ヤルモの答えはこれ。


「ロウソクの火が、服にな……俺、防御力高いから気付くの遅れて……」

「ロウソク使ったプレイなんかしてんのかよ!?」


 しかし、オスカリたちには半分ぐらいバレている。実際にはSMプレイではなく、イロナの速度のせいでローションが蒸発して煙りとなっただけなのだが……


 オスカリたちに一通りからかわれたヤルモは、ようやく止まった頃にこれからの話に移る。


「そんで……これから帝都に立つんだよな?」

「それなんだがな~……」


 ヤルモの問いにオスカリは言いづらそうにして、イロナをチラッと見た。


「5日ほどここに滞在する予定だ」

「なんだと!?」


 オスカリが発表すると、ヤルモよりイロナが(いきどお)ってテーブルを叩き割った。


「ちょっ、ちょっと待とうな。こっちにも都合ってモノがあってだな」

「我から楽しみを奪う権利がお前たちにあると思っているのか……」

「怖いって! 頼むから話を聞いてくれ! てか、ヤルモも止めてくれ~~!!」


 イロナが怒っているのならば、ヤルモが止めるわけがない。口笛を吹いて明後日の方向を見てるよ。

 しかし、オスカリはヤルモの後ろに隠れやがった。


「おい! なに俺を盾に使ってんだよ!」

「少しだけ時間を稼いでくれ」

「いたっ! イロナもなんで殴るんだよ!!」

「実はだな……」


 イロナがヤルモをサンドバッグにして楽しんでいる間に、オスカリがこれからのことを説明する。


 現在アルタニア軍は、ここに集められた以外にも各地に点在しており、それを集結する指示書はすでに送られている。しかし、集合場所がここケミヤロビになっていたので、ヘンリクとしては場所を変えたかった。

 全軍を帝都に集結させるには早馬を出しても、この広大なアルタニア帝国では時間が掛かる。上手くいっても、ある程度の数を集めるには最低5日は掛かるので、出発はずらしたいようだ。



「も、もう無理……パタ」


 ヤルモがいくらガードを固めてオスカリを守っても、イロナの攻撃力なら5分持たせるのがやっと。いや、必死で守らないと殺され兼ねないので、オスカリのために守っていたわけではない。


「次はお前か……」


 ヤルモが崩れ落ちると、目の前のオスカリがイロナのターゲット。


「くっ……くそっ! やったらああぁぁ!!」


 さすがは勇者オスカリ。ヤルモと違って潔くイロナに挑み、3分もの戦闘でボコボコにされたのであった。


「クックックックッ……これはこれでありかもな。よかろう! 5日待ってやろうではないか!!」


 こうして勇者オスカリの頑張りのおかげで、魔王イロナから許可が下りるのであった……


「こ、これって……毎日俺たちがあの化け物の相手をしないといけないのか?」

「俺を入れるな! 勇者パーティでなんとかしやがれ!!」


 仲良く倒れるオスカリとヤルモは、イロナの押し付け合いをするのであったとさ。



 それから5日、皇帝の側近として忙しくするヘンリクとマルケッタ。帝都を攻める作戦を細かく決め、幾度も早馬を走らせて新たな指示書を送る。


 そんななか勇者パーティプラスヤルモは、5日間、地獄のイロナブートキャンプ。ヘンリクがいないから、ヤルモもムリヤリ参加させられていた。当然、イロナが楽しむために……

 装備は自前の物を使うと、魔王戦の前に全てイロナに壊されそうなので兵士から拝借していたが、半日も持たないから被害額が膨らんでいた。


 毎日イロナにしごかれた勇者パーティは、5日後には満身創痍。ヤルモは夜のしごきもあったので、真っ白。

 これでは戦闘もできないと勇者パーティから泣きが入り、アルタニア軍の馬車に乗り込んで移動する一同であった。



 一番の心配はイロナであったが、毎日戦っても壊れないおもちゃがこんなにあったので、気分は上々。移動の遅さにも文句は言わないし、野営をしてもニコニコしてる。

 その笑顔が、ヤルモと勇者パーティを震えさせていたが……


 異変といえば、たまにヤルモとイロナのテントから変な声が聞こえて来たぐらいで、出発から3日後、無事、帝都の手前にあるムオニノの町を見据えた。


「じゃあ、とりあえず俺たちで入って調べてみるな」

「後続は任せてくれ」

「チッ。あいつらは……というか、あの嬢ちゃんのせいか……」


 オスカリとヘンリクが話し合っていたら、ヤルモはイロナと共に突撃。オスカリは言うことを聞かない二人に舌打ちしたが、ヤルモがイロナに後ろから小突かれている姿が目に入ったので、文句は少し訂正していた。


「俺たちも続くぞ!」

「「「おう!!」」」


 勇者パーティは、ヘンリクを残して突撃。残っているヘンリクはというと、アルタニア軍に町を包囲するように指示を出していた。


 その間、先行していたヤルモは、大盾を構えて町の門に突っ込み、大穴を開けて侵入した。


「なんだ……ザコばかりではないか」

「けっこういるから手伝って欲しいな~??」


 町の中には、ゴブリン、オーク、ウルフ、オーガ等々。テンション上げて突入したわりにはモンスターが弱いのでイロナはガッカリし、ヤルモは数の多さに面倒になっている。


 ()くして、ムオニノ奪還作戦は始まったのであった。


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