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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
07 カーボエルテ王国 王都4
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163 勇者と聖女の力2


 ドロップアイテムを売り払ってホクホク顔のヤルモは、イロナと共にイチャイチャしながら町を歩いていたが、弟子のようにまとわりつくリュリュたちがいるのでいつものようにはいかない。

 買い食いする時もガン見されているので、ヤルモは人数分買っては渡していた。特にヒルッカには甘いので、欲しそうに見ていた髪留めまで買ってプレゼントしていた。


「ヒーちゃんがおねだり上手になってる……」

「将来、男に貢がせる悪女になるかもしれませんな」

「ヒーちゃん! そっちに行っちゃダメー!!」


 パウリの悪女発言に、リュリュは焦ってヤルモを止める。そりゃ、ヤルモは父親でもないのに娘を溺愛する父親かってぐらいヒルッカに物を買い与えているのだから仕方がないのだ。



 楽しく買い物をしたヤルモたちは、夕方にはウサミミ亭に戻ってダラダラ。夕食時には食堂に集まるのだが、ヤルモは疑問を口にする。


「今日は勇者と聖女の姿を見てないけど、どこに行ったんだ?」


 その言葉で、リュリュたちが「ギクッ」とした顔になった。


「なんだその顔は……」

「勇者様はお城に用があるらしいのです! 聖女様も教会に用があると言ってました!」

「ふ~ん……なんの用だ?」

「そ、そこまでは……でも、公務みたいなことを言ってたので、お二人は忙しいのかと……」

「公務ね~……まぁ、マッピングなんて面倒な仕事もあるもんな。勇者なんてやるもんじゃないか」

「で、でも……」

「ん?」

「あ、いや、なんでもないです」


 ヤルモと喋っていたリュリュは、聖女マルケッタがヤルモを勇者にしようとしていたことを思い出したがすぐに口を閉ざした。

 その尻拭いにヒルッカやパウリが喋りまくり、ヤルモからマルケッタの影を払拭しようと頑張る。


 それから自室に戻ったヤルモとイロナはヤルことをヤッて眠るのだが、ヤルモは寝付きが悪いのかずっと天井を見つめていた。


「眠れないのか?」


 深夜に目が覚めたイロナは、ヤルモの横顔を見ながら問う。


「いや、別に……もしかして起こしちゃったか?」

「いや、小用だ」

「あ……そう……」


 イロナは単純にトイレに起きただけなので、ヤルモはそれしか言えない。そうしてトイレを済ませたイロナはベッドに戻って、ヤルモに抱きついたところで失敗に気付く。


「しまった……」

「どうした?」

「見たかったか??」

「なんの話をしてるんだ!」


 どうやらイロナは性奴隷としての仕事で見せようとしていたらしいが、ヤルモはツッコム。だが、今度見せてもらう約束をしていたヤルモ。そのおかげか、考えていたことを忘れて眠りに就くヤルモであった。



 翌日は、まだクリスタたちの姿がないので、食事の席でヤルモはリュリュに質問している。


「あいつらはいつ戻るんだ?」

「えっと……数日と聞いているんですけど……何かご用があるのですか?」

「俺たちのことを雇う契約書も交わしていないからな~。早くしてくれないと予定が立てられないんだよ」

「あ……勇者様たちが戻って来なかったら、二人でダンジョンに行ったりします?」

「まぁ金は稼がないといけないからな。依頼がなきゃ、ここの宿代もどうしていいかわからないし」


 現在ウサミミ亭の宿泊費はクリスタ持ちとなっているから、ヤルモは動くに動けなくなっている。そのヤルモの悩みを聞いていたエイニは、突然立ち上がってヤルモに近付いた。


「ヤルモさんならタダでいいですよ! いつまでだって泊まって行ってください!!」

「いや、それは悪いだろ」

「だってヤルモさんが来てくれたから、ウサミミ亭が復活したんですも~ん。だから出て行かないでくださいよ~」

「俺じゃない。勇者のおかげだ」

「その勇者様を連れて来たのはヤルモさんですよ~」

「わかったからくっつくな。痛いんだよ」


 涙目のエイニに抱きつかれたヤルモは嬉しいくせに押し返す。イロナがテーブルの下で足をゲシゲシ蹴っているから止めたいようだ。



 それからヤルモはイロナを連れて庭に出るのだが、まだ分厚い雲が残る空を見ながら静かな時が流れているのに、パウリたちがやって来てうるさくなる。


「師匠! 訓練に付き合ってください!!」

「ああん? 剣を振るぐらい一人でできるだろ」

「そこをなんとか!!」

「ふむ……主殿がやらないなら、我が相手してやろう」

「え……」


 ヤルモに頼んでいるのにイロナが立候補してくれるので、パウリの額から汗がダラダラ流れる。

 しかしイロナはお構い無し。パウリに盾を構えさせ、剣を撃ち込んで何度も吹っ飛ばしていた。


「次、主殿だ!!」

「俺も!?」


 パウリでは物足りないと、ヤルモもイロナの餌食となる。ついでにヒルッカまでも、イロナブートキャンプで昼までしごかれて動けなくなるのであったとさ。



 その深夜……


 ヤルモは夕方まで寝ていたことと、ここ数日寝付きが悪かったこともあり、完全に目覚めてしまった。どうしたものかと考えたヤルモは、イロナを起こさないように自室を出て庭に向かう。

 そこでヤルモが作った丸太ベンチに座り、雲の切れ間から見える星をボーッと見てどれぐらい時間が過ぎたであろう……


「ヤルモさん……」


 クリスタとオルガがやって来た。


「今ごろ帰って来たのか?」

「まぁ……ね」

「忙しいのはわからなくはないけど、先に仕事の話をしてから行けよ。俺の予定が立てられないだろ」


 ヤルモは二人の顔を見てグチグチ言うが、クリスタは真顔で語り掛けるのであった。


「ヤルモさん……アルタニアに帰りなよ」


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