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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
07 カーボエルテ王国 王都4
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162 勇者と聖女の力1


 クリスタたちが食堂で何やらやっている頃、イロナも自室で何やらヤろうとしていた。


「今日はヤラないのか?」

「うん。いい……」


 ヤルモは部屋に帰って来てもベッドに寝転んでダンマリ。食事が来ても食べずに寝転んだまま。イロナからのお誘いも、背を向けて断ってしまった。


「これでどうだ?」


 イロナは服を一枚ずつ脱いで、ヤルモの視界に入る。


「いいって言ってるだろ」


 しかしイロナの裸体を見ても、ヤルモは拒否してゴロンと逆に向いてしまった。


「ほう……我に命令するとは、偉くなったものだな……」


 性奴隷の主としては命令するのは当然のことなのだが、普通の性奴隷ではないイロナには通じない。殺気を放ち、ヤルモの寝転ぶベッドに乗り込んだ。


「え……イロナ??」


 殴られるものだと思っていたヤルモは震えていたが、イロナが背中に密着して頭を撫でて来たから不思議に思っている。


「主を慰めるのも性奴隷の仕事だろ? 話を聞いてもわからないとは思うが、これぐらいなら我にもできる」

「そ、そうか……」


 しばし二人は、そのままの姿勢で静かな時間が流れる……



 そうしてイロナの温もりで少しは気持ちの落ち着いて来たヤルモは、体を逆に向け、イロナの顔を見つめた。


「何も聞かないでくれてありがとな」

「フッ……我には人族の考えなど理解し難いからな」


 ヤルモは「そんな誇らしげに言うこと?」とか思いながらも続ける。


「あ~あ……なんで俺はツイてないんだろ」

「さてな。我にはわからん」

「前世で何か悪いことでもしたのかな?」

「生まれる前のことなんてわかるか」

「なんで家族に罪が行くんだよ」

「それならわかるぞ」

「あ、わかるんだ」


 愚痴に相槌を打つだけのイロナの変化球に、ヤルモは少し笑顔を見せる。


「アルタニアって国と、あの女(マルケッタ)が悪いのだろ? 滅ぼして家族を救い出せば万事解決だ」


 せっかく笑顔になったヤルモは、イロナの案に怖くなった。


「国を滅ぼすって……簡単に言ってくれるな」

「何故だ? 我と主殿がいれば簡単だろう」

「プッ……俺はいらない。イロナだけで十分だ」

「うむ。我だけでも問題ないな」

「故郷を滅ぼす、か……」


 それ以降ヤルモは喋らなくなってしまい、静寂に包まれる。


「主殿? ……なんだ。寝たのか……」


 どうやらヤルモは、イロナと喋っていたら安心して眠ってしまったようだ。


「ぎゃっ!? なんだ!?」


 しかし、イロナがよかれと思ってやったヤルモのヤルモに向けてのアイアンクローで目覚め、夜が長くなるのであったとさ。



 翌日……


 結局いつも通りイロナと楽しんだヤルモは昼まで爆睡。自分の大きな腹の音に驚いて目覚め、何か食べようとイロナと共に食堂に顔を出した。


「パパ~~~!!」


 するとヒルッカがヤルモに飛び込んで来て抱きついた。


「な、なんだ?」

「勇者様から聞きましたよ! アルタニア帝国でそんな酷いことされてたなんて……うわ~ん」

「あいつ……子供に何を言ってやがんだ」


 ヒルッカが泣いていても、それよりクリスタに怒りが湧くヤルモ。しかし当たり散らしたいクリスタは目に入らず、その代わりにパウリとリュリュが近付いて来た。


「師匠! 自分は師匠がそんなことをしてないと信じてるッス!!」

「ボクもです! ヤルモさんがそんなことするはずありません!!」

「あいつ……よけいなことばっかりしやがって」


 皆が冤罪を信じてくれるのは少し嬉しいのか、クリスタにボヤく振りして照れ隠しをするヤルモ。そうして頭をガシガシ掻いていたら、エイニとリーサが料理を運んで来た。


「あっ! ヤルモさん。おはようございます。昨日は何も食べてなかったからお腹すいてるでしょ? いっぱい作ったから一緒に食べましょう!!」

「あ、ああ……また一緒に食べるのか」

「これがうちのスタイルですから!」


 エイニはもうしれっと食事に参加するでなく、共にすることを宣言してからのゴリ押し。ヤルモもいつものことなので、抱きついて離れないヒルッカを運んで席に着いた。


「「「「「いただきます」」」」」


 それから楽しい食卓。皆は聖女マルケッタの件には触れずに、自分の持っている面白い話をして場を盛り上げる。

 ヤルモは最初の頃は食事をモリモリ食べていたが、腹が落ち着いて来ると皆の話に耳を傾け、お腹いっぱいになったら席を立つ。


 自室で出掛ける準備を終えたヤルモはイロナと共にウサミミ亭を出たのだが、リュリュ、ヒルッカ、パウリがあとをつけて来るからうっとうしいようだ。


「なんでついて来るんだよ」


 いつまでたっても離れないので、ヤルモは振り向いて迷惑そうにすると、三人は何やらゴニョゴニョやってリュリュが代表して喋る。


「これも勉強です!」

「なんのだよ。物を売りに行くだけだぞ」

「物を売る……わあ~。ヤルモさんは商人としても手練れなんですね~」

「なんだその嘘くさい言い方は……ついて来ても面白くないぞ」

「いいんですいいんです」


 何を言っても離れてくれないので、ヤルモは雨が上がったばかりの町中を渋々三人を引き連れて歩く。そして数々の裏取引を見た三人は、ドン引きを通り越して感心していた。


「薬草をあんなに高く買い取ってもらえるなんて……」

「わたし、あのお店に薬草を持ち込んだことあるけど、ギルドの値段の半分以下だったよ」

「さすが師匠です! どうやったらそんなことができるのですか!?」


 どうやらヤルモの裏取引は本当に勉強になったリュリュ、ヒルッカ、パウリ。ただし、これはヤルモの力ではないので、商人の後ろ盾を得ろとしかアドバイスできないヤルモであった。


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