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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
07 カーボエルテ王国 王都4
156/330

156 おさらい6


「【ブレイブスラッシュ】!!」


 カイザーミノタウロスとの戦闘は大詰め。クリスタは突撃しながら斬撃を飛ばし、【灼熱炎】を斬り裂いた。


「どりゃ~~~!!」


 そして、カイザーミノタウロスが振り回した斧を避けたと同時に腕を駆け上がり、顔面に向けての連続斬り。【灼熱炎】を撃たせまいと剣を振り続ける。


「ヒルッカさん! 自分に構わず行ってください!!」

「わかりました!!」


 クリスタが作ってくれた道を辿ったパウリは、往復して戻って来た斧を盾で受け、必死に下がらないように耐え、ヒルッカを前に進ませた。


「ヒーちゃんに触れさせるか~~~!!」


 ヒルッカがカイザーミノタウロスの懐でナイフを振り続けるなか、左拳が迫るとリュリュの攻撃魔法が乱れ飛ぶ。雷、風、氷、土属性。いくつもの槍を撃ち続け、カイザーミノタウロスの攻撃を阻害する。


「パウリ君! ヒルッカさん! 頑張って!!」


 カイザーミノタウロスが発狂中では、パウリがいくら防御を固めても衝撃でHPが減ってしまう。クリスタがいくら炎を散らそうとも下で戦うヒルッカのHPが減ってしまう。

 そんな二人をオルガは治癒し続け、勇者パーティは一心腐乱に戦い続ける。


「ぐあっ!?」

「キャ~~~!!」


 しかし、ついにパウリに限界が来て、勇者パーティはカイザーミノタウロスが振った斧の風圧で吹き飛ばされてしまった。



「はぁはぁはぁ……大丈夫。いま治すから……」


 オルガは怪我の酷いヒルッカに駆け寄って治療するが、MPは残り少ない。パウリとリュリュも気絶しているので、急がないと自分の命の危険がある。


「やはり私たちでは早すぎた……」


 オルガはMPが尽きたと同時に諦めるような言葉を呟くが、その言葉は遮られる。


「「そうでもないぞ」」

「ヤルモさん……イロナさん……」


 イロナとヤルモだ。いつの間にか前に出ていた二人は、同時に同じ言葉をオルガに掛けたのだ。


「見よ……アレがお前たちの勇者だ」

「ギリギリだったな。だが、勇者がキッチリ決めてくれた」


 二人が同じ場所に指を向けるので、その先に視線を向けると、勇者クリスタがカイザーミノタウロスの首を()ねた場面がオルガの目に映し出されたのであった。



「ゼェーゼェーゼェー……カイザーミノタウロス……討ち取ったり~~~!!」


 クリスタは剣を掲げて勝利宣言すると、皆は駆け寄って抱きしめ……


「あ~……決め台詞言ってるところ悪いんだけど、みんな疲れ切っていてそれどころじゃないぞ」

「へ?? ヤルモさん、イロナさん……」


 いや、クリスタに近付いたのはヤルモとイロナだけ。なのでヤルモは申し訳なさそうに現実を告げていた。


「うっそ~ん。かっこよく決めたと思ったのに~~~! あ……」


 クリスタは後ろを振り向き、オルガたちが倒れている姿を見て文句を言っていたが、体は正直だ。死闘を繰り広げた疲れで、ストンと膝が落ちて地面にへたりこんだ。


「クックックッ……これでまた、我に近付いたな。勇者単体なら時間が掛かるが、パーティならば、思ったより早く我とやりあえそうだ。クックックッ」

「やっぱり私たち皆を狙ってたの!? その笑い方怖いから、戦ってる時はやめてよ~~~」

「やっぱ崩れ掛けたの、イロナのせいだったんだ……」


 イロナが威圧的に笑うので、クリスタは全て理解する。ヤルモも勇者パーティの動き方がおかしかったのは、イロナの殺気のせいだと理解したのであった。



 戦闘を終えた勇者パーティは全員寝転んでいるので、ヤルモがポーションを振り掛け回って皆を起こす。

 しかし、スタミナ切れで動けないようだったので、「今回はサービスだ」とヤルモは言って、二人づつ首根っこを掴んでカイザーミノタウロスの落とした宝箱の前に集めた。


「猫じゃないんだから……」

「運び方はどうでもいいだろ。早く開けないとダンジョンに吸い込まれるぞ」

「ヤルモさんが開けてくれたらいいのに」

「んなことできるか。これは、お前たちが倒して手に入れた物だ。自分たちで開けて使え」

「ヤルモさん……」

「うまい肉だったら俺にも分けてくれよ」

「あははは。お肉だったらね~」


 ヤルモが宝を譲ると言ったらクリスタが目を潤ませたので、照れ隠しにボケる。そのボケにクリスタは目を擦りながら笑っていたが、ボケが面白かったわけではなく、感動の涙を拭いていようだ。



「みんな、いっせいのうせで開けるよ?」


 これは、勇者パーティ全員の勝利だ。クリスタは確認を取って皆が頷くと、声を合わせる。


「「「「「いっせいのうせ!」」」」」


 五人は息を合わせ、宝箱の蓋を力を合わせて開けると、大きな魔石と杖が出て来たのであった。


「レジェンドの杖……聖女様かリュリュ君が装備できそうね」

「ここは攻撃力を上げるためにリュリュ君が持つべきでしょう」

「いいのですか!?」


 お高いレジェンド装備をくれることに驚くリュリュに、クリスタは杖を渡していたが、どうやら装備できないようなのでオルガの手に渡っていた。


「なるほど……ヒーラー専用の装備みたいですね」

「空色の盾みたいに何かスキルはついてない?」

「あっ! あります! 一日一回ですけど、蘇生できるみたいですよ!!」

「凄い! 聖女様にピッタリじゃない!!」


 レジェンド装備のスキルに興奮する勇者パーティであったが、一人だけは文句を言っていた。


「チッ……なんで勇者たちばっかりいい装備が出るんだ。ふざけんなよ。クソッ……」


 ヤルモだ。自分はたいしていい物が出ないので睨んでいると、クリスタにポンッと肩を叩かれた。


「ププッ……ドンマイ!」

「慰めるならニヤケ面で言うな!!」

「「「「「あはははは」」」」」


 こうして第五回特級ダンジョン攻略は、途中、卒業云々で泣いていたクセに、最後は笑い声のなか終わりを告げるのであった……


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