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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
07 カーボエルテ王国 王都4
155/330

155 おさらい5


「ま、まぁ、いまはそんなこと考えてる場合じゃないよ! リュリュ君は魔法の詠唱。皆は動く準備しておいて!!」

「「「「は、はい!!」」」」


 灼熱の炎が吹き荒れるなか、【空の御守り】の中でイロナについて世間話をしていたクリスタたちは戦闘に意識を戻す。

 その数秒後には【灼熱炎】は止まり、リュリュの氷魔法がカイザーミノタウロスの胸に直撃した。


「行くよ!」


 クリスタの声と共に戦闘は振り出しへ。クリスタとパウリで防御を固め、リュリュとヒルッカの遠距離攻撃で削る。

 チャンスがあればクリスタは前に出て剣を振り、カイザーミノタウロスが片膝を突いた場合はパウリも攻撃に加わる。

 時折放たれる【灼熱炎】は皆を固めて【空の御守り】で耐え、オルガがHPの減った者にすかさず治癒魔法。


 勇者パーティは息の合った攻撃を繰り広げるが、カイザーミノタウロスのHPの減りが悪い。なので、ヒルッカにもナイフを握らせて近接戦に力を入れる勇者パーティであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 一方その頃ヤルモとイロナは、勇者パーティの激しい戦闘を遠くで観戦していた。


「ほう……あの犬娘、なかなか動けるようになったじゃないか」

「ヒルッカはイロナをマネた足運びをしているみたいだな。一撃離脱でもきっちり急所に入れられてるし、思っていたより逸材だったのかも」

「ふむ。あの坊主頭も、主殿の防御技術をよく学んでいる」

「パウリは根性あるからな~。俺のほうが音を上げそうになったよ。アイツ、しつこいんだよ」


 勇者パーティの戦闘を見ながら評価するヤルモとイロナ。二人で訓練をつけたから強くなったようだが、イロナは不思議に思っていることもあるようだ。


ちっこいの(リュリュ)といい、勇者の元へ集まる者は、なんだか成長が早くないか?」

「確かにな……魔法のことはよくわからないけど、妙に才能があるヤツが集まっているな。これも勇者の仁徳……いや、あいつにはそんなのありそうにないな」

「となると……職業補整のようなものか……」

「かもな。運だけは強そうだ」

「うむ。かなり運は強いな」


 勇者パーティを笑って見ていた二人であったが、イロナの笑い方が変わる。


「クックックッ。勇者の成長を待つ前に、そこそこ強くなった勇者パーティとやりあっても面白そうだ。クックックッ」

「リュリュたちまでターゲットになってしまったか……かわいそうに……」


 イロナの笑い方に恐怖するヤルモは、勇者パーティ全員を憐れみ、両手を合わせて祈りを捧げるのであったとさ。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



「全員、前に集中! 後ろを見るなぁああぁぁ~~~!!」


 後方からおぞましい威圧が勇者パーティに襲い掛かったせいで、戦闘バランスが崩れ掛けたその瞬間、クリスタが叫んでなんとか持ち直す。

 そうしてカイザーミノタウロスから【灼熱炎】が放たれるのに合わせて、勇者パーティは集まり、クリスタの【空の御守り】で守られる。


「さっきの禍々しい気配はなんだったのでありますか!?」


 パウリは後方から来た威圧にいまでも恐怖しているので焦ってクリスタに問う。


「イロナさんよ。今まで私にしか向けて来なかったのに、なんで全員同じ感覚を……」


 威圧の正体をイロナと聞いてパウリは納得。しかし、勇者パーティ全員に威圧が向けられたので、クリスタは考え込んでしまう。


「も、もしかして……」

「聖女様、どうしたの?」

「もしかしてですけど、私たちまでイロナさんの対戦相手にされたなんてことないですよね?」

「あ……あるかも……みんな。御愁傷様」

「「「「ええぇぇ~~~!?」」」」


 オルガが正解を言ってしまったので、一同困惑を通り越して驚愕。クリスタだけは、仲間が増えたことにちょっと喜んでいたけど、そんな場合ではない。


「ま~。アレよ。強くならないことにはイロナさんに殺されるから、ラスボスを倒してレベル上げよう! ね??」

「「「「はあ……」」」」

「もう炎は止まりそうだから! ここで負けても、イロナさんに殺されるよ!!」

「「「「はい!!」」」」


 行くも地獄、戻るも地獄では、やる気のない声を出した皆も死ぬ気でやるしかない。できるだけ長く生きるためには……



 皆の気合いが入った頃には【灼熱炎】は止まり、必死に戦う勇者パーティ。剣を振り、ナイフを振り、魔法を放ち、カイザーミノタウロスにダメージを負わせる。

 そうして少しずつダメージを積み重ね、勇者パーティに疲労が見えた頃、カイザーミノタウロスの【発狂】が始まった。


「【範囲展開】!!」


 カイザーミノタウロスが炎を吐きながら斧をブンブン振り回すと、クリスタはすかさず【空の御守り】を使って皆を守った。


「【空の御守り】はこれで打ち止め。でも、終わりはすぐそこよ!」


 クリスタは肩で息をする皆を集めるとネガティブな報告のあとに大声で鼓舞し、次の指示を出す。


「炎は私がなんとかする。しんどいだろうけど、パウリは斧を止めて。頼んだよ」

「はっ!」

「リュリュ君はありったけの攻撃魔法を撃ち込んで」

「はい!」

「ヒルッカちゃんは、できるだけ手数を増やして攻撃ね」

「はい!」

「聖女様……私はいいから、皆を守ってあげて」

「誰も死なせません!」


 クリスタは個別に指示を出し、返事をもらったらカイザーミノタウロスに剣を真っ直ぐ向ける。


「さあ、これで終わらせるよ! 私を信じてついて来~~~い!!」


 こうしてカイザーミノタウロスとの戦闘は、大声を張り上げたクリスタが突撃して、最終局面を迎えるのであった。


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