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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
07 カーボエルテ王国 王都4
153/330

153 おさらい3


「さて、今回で5回目だ。ラスボスもお前たちだけで倒そうぜ」

「「「「「はい!」」」」」


 ウサミミ亭でしばしの休息と訓練をした勇者一行は、ヤルモの言葉にいい返事で返し、第5回特級ダンジョン攻略に挑む。

 今回はダンジョンボスとの戦闘を予定しているので、勇者パーティとヤルモパーティが戦闘を交互に繰り返し、疲労を少なくしている。


 クリスタからの依頼、ダンジョン講座は今回でラストということもあり、ヤルモに質問が集中する。道の決め方進み方、モンスターの倒し方逃げ方、疲れた場合の耐え方休み方、もしもの場合の撤退の仕方……

 ヤルモはほとんど答えているが、わからない場合は自分ならこうすると説明して、自分たちでもよく話し合うように伝えていた。


 クリスタたちは素直に聞き、オルガが小マメにメモを取り、話し合いながら順調に進んでいる。そんなクリスタたちを微笑ましく見ていたヤルモだが、心配事もあるようだ。


(どうかドラゴンがラスボスになりませんように……)


 今回の攻略で最後となる予定なので、ダンジョンボスがドラゴンでイロナに横取りされると困る。そうなったら確実にダンジョン講座は延長。延長どころか経験を積ませられないので、下手したらニ回は延びてしまう。


(まぁこいつらとなら、それもいいか……)


 少しうるさいが裏表のないクリスタ。勉強熱心で小動物みたいなリュリュ。父のように慕ってくれるヒルッカ。師匠と呼んでぶつかって来るパウリ。優しくて巨乳のオルガ。


(ダメだダメだ。いつ騙して来るかわからんぞ)


 うかつにも、勇者パーティに気を許していたヤルモは、首を横に振って気を取り直す。


(まぁ……こいつらなら騙されてもいいかもな)


 しかしすぐに、クリスタたちを見守るような目に変わる。どうやら皆と一緒に過ごした時間が孤独なヤルモに変化をもたらし、父性みたいなものが目覚めたらしい。


 子供に騙されるなら受け入れられると……



「さっきからコロコロ顔を変えてどうしたんだ?」


 今回も順調に進んで地下80階のセーフティエリアで食事をしていたら、イロナはヤルモの表情が気になったようだ。


「いや、なんでもない……」

「なんでもないことはないだろ。勇者や聖女を見ながらヘラヘラ笑っていただろうが」

「そんな顔していたか??」

「いまもしているだろう」

「いてっ。ちぎれるって!」


 イロナは勘違いしてヤルモの頬を伸ばす。ヤルモは攻略方法を話し合っている勇者パーティを微笑ましく見ていただけなのだが、イロナには女子を見ていたと思われたみたいだ。

 まぁほとんどオルガの巨乳に目が行っていたから、間違いではないのだが……


「またやってるの?」


 今日はヤルモがイロナのせっかんを受けるやり取りが多かったので、クリスタは呆れている。


「なんか顔が赤くない?」

「イロナにほっぺたつねられたからだ」

「ふ~ん……ま、いいや。それよりモンスター、かなり弱くなって来てるよね?」

「だな。俺たちがハイペースで潜っていることもあるが、勇者たちが強くなったからでもあるな」

「……なに? 急に褒めて……気持ちわるっ」


 いきなりヤルモに褒められたクリスタは、一瞬ポカンとしたが、照れ隠しか、はたまた調子に乗らないためか酷いことを言った。


「たまには素直に褒めてもいいだろ。最初なんて、ホントこんなにちっさかったのにな~」

「いや、身長はそのままよ。誰と勘違いしてるの?」

「その勇者がだぞ。いまではこんなに立派になって……ぐずっ……うぅぅ」


 ヤルモ、親戚のオッサンみたいになる。どうもクリスタたちの成長が涙腺を刺激したようだ。子供の頃から見ているわけでもないのに……


「泣いてる!? なんかヤルモさんが泣き出したんだけど~~~!!」


 しかしクリスタには伝わらず。皆を呼んで大騒ぎになった。


「ウフフ。ヒルッカさんの時にも思いましたけど、ヤルモさんは涙もろいのですね。私たちの成長に喜んでくれるなんて……ね?」

「ちょっ! 聖女様、言わないでよ、ぐずっ……せっかく我慢、ぐずっ……ほら、私も……うわ~~~ん」


 いや、クリスタもわかっていたから、おちゃらけて涙を我慢しようとしていたのだ。オルガにはその気持ちがわかりきっていたのでクリスタを抱きしめ、自分も目から涙を落とすのであった。



 ヤルモたち三人はしばらくグスグスやっていたが、その気持ちは全員には広がらない。途中参加の者がわからないのはわかるが、最初から見ていたイロナも三人が泣き続けている意味がわからないようだ。


「どうでもいいが、お前たちなんて我から見たら、まだま……」

「「イロナさん!」」


 水を差そうとしたイロナは、リュリュとヒルッカのちびっこコンビに止められた。


「確かにまだ卒業も決まっていないのに泣くのはおかしいですけど、ここは空気を読んでですね」

「そうです! ちょっと泣くのは早いですけど、いまはそっとしておきましょうよ~」


 そう。二人が言う通り、道半ば。


「「「そうだけど~~~」」」


 そのツッコミは声が大きすぎて、ヤルモ、クリスタ、オルガに丸聞こえだったが、涙の止まらない三人であったとさ。


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