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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
06 カーボエルテ国 王都3
148/330

148-1 女子会3


「えっと……リーサ! イロナさんの相手をお願い!!」


 イロナのカミングアウトが重すぎたので、ここは一番話の合っていたリーサにイロナを預け、クリスタたちは固まって話し合う。


「正直な感想言ってもいい?」


 クリスタがコソコソ喋ると、一同コクコク頷く。


「聞くんじゃなかった~~~」


 一同、大後悔。トゥオネタル族はまだしも、職業『戦女神』は表にも出せないどころか出したが最後、世界が滅ぶ未来しか待っていないので、全員その感想しかなかった。


「これ、喋ったらダメなヤツだからね? 本当にお願いね? 私、イロナさんと戦っても瞬殺されるからね? マジだからね? 喋ったら、被害者が増えて行くだけだから、絶対に喋らないで~~~」


 半べそでお願いするクリスタ。イロナの強さを熟知している者は物凄く深く頷いているので、口にすることはないだろう。しかし、イロナの恐怖を知らないエイニはそうっと手を上げた。


「あの……イロナさんって、そんなにお強いのですか?」

「聞いてなかったの? 270階ものダンジョンをソロで潜って魔王まで倒しているのよ?」

「嘘という可能性は……」

「それはない。断言できる。軍を動かしても皆殺しは確実よ。今現在、イロナさんを止められる戦力は、ヤルモさんだけ。それでも何分持つか……」


 真顔で嘘みたいな事実を告げるクリスタに、エイニも変な汗が出てしまって信じるしかなかった。


「なんであの時、私はヤルモさんの忠告を聞けなかったんだろ……いつも正しいことを言っていたのに……」

「こんな事実、必死で止めるはずです……私はこれから皆を(あざむ)き続けて生きて行かないといけないなんて……」


 楽しいはずの女子会が、イロナの情報を聞いたせいで空気が淀み、夜が更けて行くのであっ……


「飲むわよ! 飲んで忘れるわよ!!」

「「「「「はい!!」」」」」


 いや、記憶喪失になるまでしこたま飲んで忘れることにしたのであった。


「うぅぅ……全然酔えない……」

「私もです……」


 ヒルッカは酒の匂いが充満しただけでダウン。その他も丑三つ時までには眠ったのだが、国の行く末を心配するクリスタと、教会の行く末を心配するオルガは、朝方になっても酒が回らないのであったとさ。



 翌日……


 ヤルモは朝に目覚めたものの部屋にはイロナの姿はない。食堂に顔を出してもパウリとリュリュしかいない。料理担当のエイニもいないので食事も出て来ない。

 三人は腹がへっていることもあり、厨房を漁ってパンとスープで腹を満たして一時解散。昼になっても女子会をしていたメンバーは誰ひとり現れないので、ヤルモたちはクリスタの部屋をノックした。


「うおっ! 酒くさっ!?」

「お~。主殿~」

「ぐあっ! イロナ、折れる折れる!!」


 部屋から出て来たのは、へべれけのイロナ。昨日の深酒が残っているのか、ヤルモに抱きついて甘えている。しかし、その抱きつきは凶器。ヤルモは手加減を忘れたイロナのベアハッグで骨がギシギシ鳴っている。


「ボクが開けなくてよかったです……」

「あんなに防御力の高い師匠が細くなって行く……」


 見た目には地味な技なのに、イロナがしたからにはリュリュとパウリを引かせるには十分。ヤルモの体が細長くなって行くのだから仕方がないだろう。

 さらにディープキスを喰らったヤルモはグロッキー状態。そこでようやくイロナがケラケラ笑いながら離れてくれたので、ヤルモはお姫様抱っこで部屋に連れ帰っていた。


「うっ……酔っちゃいそうです」

「自分は窓を開けます。リュリュはヒルッカさんを助けてあげてください」


 酒くさい女たちの世話は男たちの仕事。二人で手分けして人を運んだり水を運んだりと介抱する。

 ただ、パウリはエイニとリーサにからまれて、美味しい思いをしたようだ。坊主頭をジョリジョリ撫でられたり、腕に抱きつかれて柔らかい感触を楽しんだりと……


 この日は二日酔いで苦しむ女性陣のために、男性陣が食事を作ったりして、介抱に勤しむのであった。



 翌日も、少し体調の悪そうな女性陣であったが、エイニとリーサは宿の仕事をしていなかったので申し訳なさそうに謝っていた。

 ただ、パウリが赤い顔をしていたので、ヤルモに睨まれていた。心の狭いヤルモは、酔っ払いの女にチヤホヤされたパウリが許せないのだろう。

 この日も休日となり、夜には復活したクリスタとオルガはヤルモを部屋に呼び付けた。用件を告げずに呼び出すものだから、ヤルモはもしかしたらそんな展開があるのかとドキドキして部屋に入った。


「そこに座ってくれる?」


 部屋に入るとクリスタは床を指差すが、そんなプレイか何かと勘違いしてヤルモは床に座る。


「正座!!」

「はい!」


 オルガまでドSっぽく命令するので、ヤルモはそういうプレイかとますます勘違いして行く。


「ヤルモさんは、どこまで知ってるの?」

「いや、俺は……あまりマニアックなプレイは……」

「はあ!? なんの話をしてるのよ!?」

「イロナさんの話に決まってるでしょ!!」


 まさかこんな真面目な場面でヤルモがエロいことを考えていたと知って、クリスタとオルガは激オコ。めちゃくちゃ(ののし)られたヤルモは、やはりそんなプレイなのではないかと股間がもっこりするのであった。


「てか、イロナの話って??」


 クリスタたちの罵倒が止まったら、ヤルモは残念そうに問う。


「トゥオネタル族は知ってるのよね? 職業のことは?」

「聞いたことのない職業とまでしか……」

「はぁ~~~~」

「なんだよ。トゥオネタル族でも、目立ってしょうがないだろ」


 クリスタが「なんでしらねぇんだよ!」と言わんばかりの長いため息を吐くのでヤルモはムッとして返すと、オルガが膝をつき、目線を合わせてヤルモの顔を両手で挟んだ。


「ヤルモさん。あなたは事の重大性に気付いていません」


 顔は笑っているのになんだか目が怖いオルガの説明で、イロナ取扱い説明書に「『戦女神』他言無用。世界が滅ぶ」と付け加えられたのであった。


「俺は止めたのに、お前たちが聞くから悪いんじゃないか??」

「「そうだけど~~~」」


 ヤルモは絶対に口にしないのに、無駄に聞き出したことで心配事が増えたのだから、ヤルモの反撃は心に深く突き刺さるクリスタとオルガであったとさ。


次話『 148-2 』は性的な描写が含まれていますのでアルファポリスにて『 R-16 』のサブタイトルで、明日更新します。

18歳以上でもしも読まれたい方は、アルファポリスにてしばしお待ちください。

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