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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
06 カーボエルテ国 王都3
145/330

145 合同チーム8


 地下100階へ下る階段にて、イチャイチャしながらやって来たヤルモとイロナは、クリスタたちからジト目で見られていた。


「なんだ?」

「べっつに~」

「なんなんだよ。みんなして」


 皆の視線が気になったヤルモであったが、クリスタが目を逸らすと全員一斉に目を逸らすから、ますます気になる。なのでヤルモは、長い階段を下りながら何度も聞いていた。

 しかし、いい返事をもらえなかったので諦めて、ダンジョンボス部屋の前で少し休憩。携帯食を少し腹に入れながら、特級ダンジョンの感想を聞いていた。


「けっこうダンジョンレベルが下がって来たと思うんだけど、気付いたか?」

「う~ん……わっかんないや」


 どうやらヤルモにはモンスターが弱くなっていると感じていたようだ。しかし、クリスタたちはレベル爆上がり中なので、些細な違いがわからないらしい。


「そうか……パウリのレベルでは、地下99階なんて抜けられないと思っていたんだけどな~」

「あっ! 確かに! 二度目の挑戦の私みたいな感じだった!!」

「だろ? 下がって来たと仮定してだ。次は勇者パーティだけで地下100階まで辿り着けるかもな」

「今回で三回目だっけ? もうそこまで来てるんだ……」


 クリスタは依頼内容を思い出し、自分たちが強くなっていることは喜ばしい限りだが、ヤルモから卒業することに少し寂しさもあるようだ。


「もうすぐおしまいか……まぁそんな顔をするなよ」

「ヤルモさん……」


 ヤルモも同じ気持ちだと知って、クリスタはジーンっと……


「五回目以降は歩合で受けてやるよ」

「ヤルモさ~~~ん!」


 いや、単純にヤルモはお金の心配をしていると思っただけ。ちょっと感動していたクリスタは、お金よりも感動を返して欲しいと思うのであった。


「ま、前回のボスは俺たちでなんとかなったし、前と同じパーティで行こっか。できればトドメまで一緒にやるからな」

「「「「はい!」」」」

「パウリはよく見ておけよ。次はお前が俺の役をやるんだからな」

「はいッス!」

「さあ、行こうか!」


 こうして第三回特級ダンジョン攻略は大詰め。勇者一行は大きな扉を開けて部屋に入ると、ダンジョンボスと対峙するのであっ……


「レジェンドドラゴンだ!」

「あ……」


 いや、巨大な金色のドラゴンを見て、イロナだけが突っ込んで行くのであったとさ。



 意気揚々と突っ込んで行ったイロナを見送ったヤルモたちは、呆気に取られている。どうも、さっき気合を入れたのに梯子を外されたから、その気合をどこに持って行けばいいかわからないみたいだ。


「なんでドラゴンなんだよ~」

「本当に……ついてるんだかついてないんだか」

「イロナが戦ったら参考にもならないぞ」

「あはは。飛んでるもんね~」


 意外にも、ヤルモにも先生の自覚があるらしく、空中戦を繰り広げられたらたまったもんじゃないとボヤく。そのボヤきはクリスタにも聞こえていたから笑われるが、気付いたことがあるようだ。


「さっきも思ったけど、ヤルモさんって先生やる気がなかったんじゃなかった?」

「ん? どういうことだ??」

「ほら? 最初は断ってたじゃん。なのに、五回目以降も受けてくれるって言ってたし、ラスボス戦も教えてくれるようなこと言ってたよね?」

「そんなこと言ったか~?」

「フフフ……照れちゃって~」

「いいからイロナの戦闘を見ろ」


 ヤルモ、失言。自分でも言っていたと気付いて、クリスタを突き放す。しかし、しばらく「うりうり~」とからかわれていたので、「ちゃんと見てないとイロナに殺されるぞ」と脅してうやむやにしていた。


 そんなことをしている二人とは別に、リュリュ、ヒルッカ、パウリはイロナの戦闘に釘付けになっている。


「いつ見ても凄い……」

「どうやって飛んでるんだろ……」

「あの細腕で圧倒するなんて……」


 異次元の強さのイロナの戦闘は見逃せないのだろう。さらには戦い方すら美しいので、うっとりしたような顔にもなっている。


「はぁ……回復役がいらないなんて、私の立場は台無しですね」


 オルガは自分の出番が一生来ないと知っても、清々しい気持ちでイロナの戦闘を見ている。



 そんな面々の視線を受けるイロナは、ブレスを斬り裂き、爪を弾き、噛み付きは消えるように避けて、首に一太刀、二太刀、三太刀……数え切れないほどの斬撃をレジェンドドラゴンの首に叩き付けている。

 そうこうしていたらレジェンドドラゴンの発狂モードが始まり、七色のブレスがそこかしこに飛び交っていた。


「俺の後ろから一歩も出るなよ。かすっただけで腕を無くすぞ」


 直撃しそうなブレスには、盾を構えたヤルモが対応。皆は幻想的な景色に心を奪われているようなので、ヤルモは脅すように注意していた。


「あ……」


 その数秒後には、レジェンドドラゴンの頭は胴体から切り離され、クリスタが小さく声を出したあとは、自然と拍手を送る勇者パーティであった。



「また一段と綺麗に斬り落としたな」


 レジェンドドラゴンの頭と体が残るなか、ヤルモは労いの代わりにイロナを褒める。


「クックックッ。会心のできだ。我の作品の中でも、一、二を争うぞ。クックックッ」

「へ~。そりゃ、勇者たちも拍手を送るわけだ」

「ふむ。もっと褒め称えよ」


 イロナは気分よく、クリスタたちからも感想を聞いて鼻高々。いまだにイロナの趣味がわからないヤルモは、冷静にドロップアイテムが出るのを待っていた。


「やった! 宝箱だ」


 現金なヤルモは花より団子。前回は宝箱が出なかったので嬉々として宝箱を開けた。


「た、て……」


 しかし、すぐにガッカリ。その態度の変わりように不思議に思ったクリスタは、宝箱に近付いて覗き込む。


「なんか私の鎧と同じ色の盾ね。でも、欲しかったレジェンドの盾じゃないの?」

「ちっさいだろ~~~」


 残念ながら、出て来た盾は空色のショートシールド。ヤルモの体に合わないのでガッカリしていたようだ。


「じゃあ、私が貰っていい? パウリが盾役をしてくれるなら、大きいのは必要ないし……もちろん別料金は払うわ」

「ああ。勝手にしてくれ」

「やった! 色合いが合う盾が欲しかったのよね~」


 空色の盾は勇者クリスタに装備され、皆に見せて喜んでいたが、なにやら気付いてしまった。


「あれ? この盾……『範囲展開』? わっ!」

「「「「おお~」」」」


 クリスタは頭の中に流れ込んだ言葉を発すると、空色の盾から光が放たれ、自身を軽々包み込める大きな球体となったのだ。


「なんだそれ!?」

「なんか……この盾のスキルみたいな?? 【空の御守り】だって」

「嘘だろ……レジェンド装備ってそんな機能もあるのかよ~~~」


 またまたヤルモはガックシ。いかにも強そうなスキルを見て譲ったのは失敗だったと嘆くヤルモの声が響くなか、第三回特級ダンジョン攻略は終わりを告げるのであった。


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