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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
06 カーボエルテ国 王都3
143/330

143 合同チーム6


 調子に乗ったクリスタはヒュドラと死闘を繰り広げていたが、尻尾での強烈な一撃を喰らって吹っ飛んだ。しかしクリスタは盾での防御が間に合っていたので、地面を削り、直ぐ様体勢を立て直す。


「いった~……あ、あれ??」


 ここで、クリスタは誰もヒュドラと戦っていなかったと気付いて振り返った。


「なんで私一人で戦ってるの!?」

「前! 前見ろ! 来てるぞ!!」


 クリスタが驚いていても、ヒュドラは待った無し。突撃して来たのでヤルモが大声で教えたら、クリスタは必死で避ける。

 だが、跳んだ場所が悪く、ヤルモたちに合流するにはヒュドラと戦うしかないから、クリスタは必死に剣を振り続けている。


「ちょっとだけ、気合いを入れて来ていいか?」

「ふむ……いきなり集中力が切れたな。我に殺されたくなかったら死ぬ気で戦えと言って来い」

「う~い」


 誰も自分について来ていないのでは、クリスタが混乱しても仕方がない。ヤルモはそのことを伝えに行こうとしたのだが、イロナ軍曹に「脅して来い」と言われて、そそくさと戦闘区域に入るのであった。



 戦闘区域に入ると、クリスタに攻撃していたヒュドラの尻尾を両手で掴んだヤルモ。


「どっせ~~~い!!」


 からの投げっぱなし。巨大なヒュドラが10メートル近くも飛んで行ったら、涙目のクリスタがヤルモに抱き付いて来た。


「おっそ~い! 何してたのよ~」

「ちょっ……くっ付くな。あまり時間が無いから、イロナからの伝言を簡潔に言うからな」

「イロナさん……」


 イロナの名が出て、嫌な予感が働くクリスタ。


「そうだ。アイツを一人で倒さないと殺されるぞ。かわいそうに……」


 なのでヤルモは多くを語らず、不憫(ふびん)なクリスタの頭を撫でる。


「うっうぅぅ……うわああぁぁ~!!」


 全てを理解したクリスタは、自分を鼓舞するように大声を張り上げ、ヒュドラに突撃して行くのであった。まだヒュドラのほうが、イロナより勝てる見込みがあるから……



「おお~。いい動きになったじゃないか」


 ヤルモが元の場所に戻ると、イロナはいい気なもの。クリスタが命を燃やして戦っているのに笑顔で見ている。


「まぁ……これなら勝てるかもな……」


 逆にヤルモは心配そうな顔。クリスタが押しているのはいいのだが、全てを出し切っているので、倒したあとに死ぬんじゃないかと考えている。

 オルガたちはというと、精一杯の応援をするしかない。先ほど魔王イロナの殺気に当てられたので、手助けに行くと殺されると思って一歩も前に進めないのだ。



 そんな各々の考えは露知れず、クリスタは必死に戦っている。ブレスを素早く避け、首や尻尾の打ち回しは避けたり盾で受けたり。チャンスがあればカウンターを入れ、ダメージを積み重ねる。


「おっ! アレってイロナっぽくないか??」

「さて……付け焼き刃が通じるかどうか……」


 長い戦いになっているのに、クリスタは加速。まるで踊るような足捌きは、ヤルモにはイロナの動きに重なって見えるようだ。


 クリスタは踊るように剣を振ってヒュドラを翻弄(ほんろう)。物凄いスピードで移動し、ヒュドラの四肢を斬り付けている。

 しかし、イロナが言った通り、まだまだ完璧とは言いがたい。たまに足がもつれて止まり、そこにヒュドラの前足やブレスが放たれる。

 その場合は盾でいなしてなんとか耐えるが、HPが削られる。だが、クリスタには治癒魔法があるので、隙を見て回復。また隙を見て攻撃。


 一人で勇者パーティの戦闘方法を再現して戦い、ついにその時が来る。


「これでラスト! 【ブレイブスラッシュ】!!」


 クリスタの会心の一撃。クリスタから放たれた斬撃は四本目の首を斬り落とし、ヒュドラは地面に倒れるのであった。



 ヒュドラがダンジョンに吸い込まれるなか、死力を尽くしたクリスタも立ってられず背中から倒れ込む。

 そこに、ヒュドラが倒れると同時に走り出したオルガたちが滑り込んだ。


「勇者様! 大丈夫ですか!?」

「ゼェゼェ……なんとか……つつつ」

「いま治療しますね!!」


 クリスタは息も絶え絶えHPゲージは真っ赤っ赤。MPもすっからかんなのでオルガに治療を任せ、皆からの称賛の声を聞いている。


「はぁ~~~。なんとか生き残ったな」


 ヤルモとイロナはその輪に入らずに遠くから見ていた。


「クックックッ。まだまだ粗削りだが、なかなかよかったぞ」

「イロナが素直に褒めるとは珍しい」

「主殿が言う通り、勇者は戦闘の天才だ。主殿の戦い方、我の戦い方、どちらも使いこなし、合わせて自分の物にしつつある」

「確かに……俺たちはとんでもないヤツに教えているのかもな」

「クックックッ。早く我に追い付いて来い。そして我を楽しませろ。クックックッ」

「イロナって、実は魔王ってことはないよな?? いだ~!」


 まるで魔王のような発言に、ヤルモは怖くなって確認を取ったのだが、イロナにこづかれてHPを減らすのであった。



 その同時刻、クリスタは体がカチンコチンになってオルガに心配されていた。


「勇者様!? まさか体が固まる呪いでも受けたのですか!?」

「い、いや……なんだかわからないけど、悪寒が……」

「そういえば、前にも似たようなことがありましたね」

「この感じは……初めて魔王を見た時と同じような……」

「「「「魔王……」」」」


 クリスタが魔王と発言したら、一同振り返る。そこには、ヤルモをこづくイロナの姿があるだけなのだが……


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