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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
05 カーボエルテ王国 王都2
117/330

117 新メンバー発掘5


 ヒルッカをパーティに迎えた勇者一行は、馬車に揺られてウサミミ亭に帰ったら、メンバー紹介と歓迎の宴。例の如く店員のエイニとリーサも輪に加わり、美味しい夕食をいただく。


「ところでさ~……」


 ヤルモは聞いておかないといけないことがあるのでエイニに質問する。


「昨日からリュリュが泊まっているみたいだけど、部屋って空いてたのか?」

「おっそ……」


 あまりにも遅い質問に、エイニは冷たくツッコんでしまったが、客に向ける顔ではないと気付いてすぐに笑顔に戻した。


「部屋は急いで使えるようにしたんです。ちょっとお客様を泊めるには不十分ですが、リュリュ君は大丈夫と言ってくれました」

「ふ~ん……一人部屋なんだ……」


 どうやらヤルモは、リュリュがまたクリスタとオルガの部屋で一緒に寝ているのではないかと勘繰っていたようだ。しかし一人と聞いて、何やら安心している。


「ヒルッカ用の部屋も準備するのか?」

「それが……空きがないので、勇者様の部屋にお願いしようかと……」

「む、無理です!」


 ヤルモとエイニが喋っていると、自分の名前が呼ばれたヒルッカは焦って立ち上がった。


「勇者様たちとなんか恐れ多いです! わたしはリュー君と一緒でいいです!!」

「え~。いいのに~」

「そう言われましても……無理なんです~」


 クリスタから許可が下りてもヒルッカは半べそ。結局はリュリュと同部屋となって、ヤルモは舌打ちしていた。自分が同い年だった頃を思い出して、リュリュがモテモテなのがどうしても許せないヤルモであった。


 歓迎会が終わると、各々の部屋へ。イロナからの夜のイジメは、昨日死ぬほど受けたので、ヤルモはやんわり断ってなんとか阻止して眠っていた。



 そして翌日……


「珍しい……ヤルモさんも来るの?」


 ヒルッカの所属するブラックパーティに文句を言いに行こうとしたクリスタたちは、ヤルモが頼んでもいないのについて来ると聞いて不思議に思っている。


「アイテムを売りに行くのに、馬車に乗せてもらいたいだけだ。ついでに荷物持ちをしてやる」

「ヒルッカちゃんを守りたいって素直に言えばいいのに」

「早く行くぞ」


 クリスタにバレていても、気にせずヒルッカの大荷物を持ってウサミミ亭を出るヤルモ。そうしてクリスタが頼んでいた馬車に勝手に乗り込むと、全員が続いて出発となった。

 馬車は町中を進み、ヒルッカが待ち合わせをしていた中級ダンジョン前に着いてもブラックパーティはまだ来ていない。仕方がないのでしばらく喋りながら待っていたら、ヒルッカがブラックパーティが来たと言ってリュリュの後ろに隠れた。


「勇者様??」


 まさかこんなところで勇者クリスタが立っているとは思っておらず、ブラックパーティは呆気に取られている。その中で、リーダーの剣士の男だけは何故か嬉しそうに前に出て来た。


「勇者様が俺に会いに来たということは、審査に通ったのですね!」

「何を勘違いしてるか知らないけど、別件よ」

「え……応募したからパーティ勧誘じゃ……」

「なわけないでしょ。ヒルッカちゃんのパーティ脱退について来たのよ」


 クリスタが不機嫌に用件を伝えると、リーダーの顔が曇る。


「ヒルッカは俺たちに借金があるのですが……」

「いくら? 私が払うわ」

「結構な額ですよ?」

「早く言いなさい。それとも、額も決まっていない物を払わせているの??」

「しょ、少々お待ちください」


 即答できないリーダーに詰め寄ると、仲間と何やらゴニョゴニョ話し合って額を告げる。


「金貨100枚です……」

「たかっ!? 何を壊したらそんな額になるのよ!」

「その、SSS級(トリプル)の籠手なので……」

「わかったわ。払うから借用書を出しなさい」

「へ??」

「借用書よ。借用書。それと、ヒルッカちゃんが支払った額の書類も一緒に出して」

「はい??」


 まさか低レベル冒険者のヒルッカに対してそんな大金を払うと思っていなかったリーダーは固まってしまう。


「あなた……まさか借用書もないのに払わせていたわけじゃないでしょうね?」

「いえ……いま、持ってないだけで……」

「なんで無いのよ! そもそも、何を壊したら金貨100枚になるのよ!!」

「ですから、高い防具を……」

「お前らじゃ、そんな装備なんて持てないだろ」


 クリスタに責められても、ゴニョゴニョ言い訳を続けるリーダー。なのでヤルモが割り込んだ。


「金貨100枚なんて冒険者の年収だ。買おうと思ったら、上級をクリアできるぐらいじゃないと買えない。どうやって買ったんだ? 盗んだのか??」

「たまたま宝箱から出まして……」

「はあ? 中級で出るわけないだろ。お前、素人か??」

「なっ……オッサンこそ何者だ!」

「お前よりマシな冒険者だ。どうせ上級にも潜れない鳴かず飛ばずだから、弱者をいいように使っているんだろ。お前みたいな奴が居るから冒険者が野蛮だとか言われるんだ。迷惑だからさっさとやめてくれ」

「うるせぇ! オッサンは勇者様の後ろに隠れているだけだろ!!」


 その通り。ヤルモは偉そうなことを言っているわりにはクリスタの後ろに隠れているので、いまいち締まらないのであった。


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