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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
05 カーボエルテ王国 王都2
111/330

111 勇者の仕事1


 特級ダンジョンを制した勇者一行は、ダンジョンを出たら衛兵に帰還の報告。この手の事務処理はクリスタの仕事なので、ヤルモとイロナはイチャイチャしながら見てるだけ。

 冒険者ギルドにも報告があるけど、これもクリスタたちに丸投げ。ヤルモとイロナはイチャイチャしながら町に消えて行った。


 お昼を過ぎていることもあり、適当な店に入って昼食をがっついた二人は、鍜治屋に寄って装備の整備を頼む。その時、イロナの武器が予想以上に損耗が激しいと言われて、同じ剣を三本も作ることとなった。

 素材はヤルモの持ち出しなので、前回と値段は同じ。訓練用の武器等と一緒に支払いをしてウサミミ亭へと帰る二人であった。



「おお~。綺麗になってる」

「本当だな。見違えた」


 ウサミミ亭は数日見ない内におばけ屋敷から豪華な宿屋へと様変わりしていたので、ヤルモとイロナは感嘆の声を出しながら扉を潜った。


「いらっしゃいませ。誠に申し訳ありませんが、ただいま満室になっておりまして、お客様をお泊めすることができません。またの御来店、お待ちしております」


 丁寧な口調で深々とお辞儀するウサギ耳メイドのリーサを見て、ヤルモとイロナは目を見合わせる。


「ちゃんとしてる……」

「宿屋だな……」

「はあ。宿屋ですが……」


 二人が一向に帰る素振りを見せないのでリーサが困っていたら、廊下からパタパタと走る音が聞こえて来た。


「ヤルモん。イロナさん。お帰りなさ~い」


 二人に気付いたウサギ耳店主エイニが走って来たのだ。


「ああ。ただいま。てか、急に綺麗になって店員までいたから驚いたぞ」

「そうなんです! 勇者様からまとまったお金を貰ったので急いで直してもらったのです。それとこちらは、以前働いていた従業員で、私のお姉さんみたいな人なんです~」


 とりあえずお互いの紹介をしてもらったら、リーサは予約客だったと知ってヤルモに謝罪していた。

 どうやら勇者一行と聞いていたから、もっと綺麗な格好の連れだと思っていたようだ。だが、入って来たのは布の服の袖を破いたオッサンと、綺麗な見た目の女。

 リーサはオッサンが高い金を払って連れ込んだと勘違いしたらしい……


 ヤルモとイロナはリーサに部屋に案内され、夕食ができるのをひとっ風呂浴びて待つ。ただ、イロナの性的虐待を受けていたので、ヤルモはHPを減らしていた。

 そうこうしたらリーサが食事ができたと呼びに来たので、ヤルモたちは言われるまま食堂に入った。


「なんだ。帰って来てたのか」


 そこには、ぐで~んとテーブルに突っ伏すクリスタとオルガ、普通に座るリュリュがいたので、ヤルモたちは対面に座る。


「つ、疲れた……ダンジョン帰りに報告はしんどい」

「ダンジョンより、こっちのほうが疲れました。終わらなかったですし」


 二人は書類仕事に明け暮れて終わらなかったので、宿題まで受け取って来たようだ。その愚痴を言おうとした時にエイニが夕食を並べ始め、クリスタたちはお昼を抜いていたので先に食事を終わらせることにした。


「では、いただきます」


 エイニの合図で始まる夕食。クリスタたちはお腹がへりすぎて料理を掻き込んでいるので、ヤルモがツッコミを入れるしかない。


「従業員も増えたのに、一緒に食べるんだ……」

「え? あ……あはは。前も言ったじゃないですか~? これがうちのスタイルなんですって~」


 どうやら魔王討伐の真相を知らないリーサは、勇者クリスタの大ファンらしい。

 リーサを勧誘する際には、エイニがついに宿を復活させると聞いて喜んで受けたのだが、しばらく勇者一行の貸切りと聞いた時のほうが尋常じゃないほど喜んだらしい……

 そこにエイニから「勇者様とごはん食べちゃった」なんて聞いたからには、自分も御一緒したいがために、おかしいと思いながらもこのスタイルを貫こうという話になったようだ。

 しかし、そんなことを言うと一緒に食事をしてくれないと思い、嘘をついてやがる。


「それじゃあ、次からは部屋に持って来てくれないか?」

「は……あ、まだ人が足りないので、できません! すいません!!」


 ヤルモの案にエイニは「はい」と即答しそうになったが、リーサが凄い勢いで首を横に振っていたので言い直す。

 おそらく、ヤルモにルームサービスを許可してしまうと、クリスタたちまで引きこもってしまうと考えたのだろう……



 結局はルームサービスの話はうやむやになってしまい、ヤルモが食後のコーヒーを飲んでいたらクリスタが近付いて来た。


「ヤルモさんも手伝って~」

「あ? 何をだ??」

「これ~~~」


 クリスタはアイテムボックスの鞄から、書類をドーンと山積みに置いた。


「なんだこれ??」

「ダンジョンの地図と出現モンスター、罠や宝箱、ドロップアイテムなんかも書かないといけないの」

「攻略本の資料を作らないといけないのですけど、勇者様はまったく覚えてないんです」


 クリスタとオルガの説明に、ヤルモはポンっと手を打つ。


「そういえば勇者にはそんな仕事があったな」

「なんで教えてくれないのよ~。それならマッピングして進んだのに~」

「いや、俺、勇者じゃねぇし。説明なんて受けたことねぇし」

「勇者様が話を聞いていないから悪いんです」

「聖女様も一緒に聞いてたでしょ~~~」


 どうやらクリスタもオルガも、魔王発生と討伐のゴタゴタで大事な説明を聞き逃していて、罪の擦り付け合いをしているようだ。


「じゃ、俺たちは寝るな」

「「待って~~~!!」」


 二人がケンカしている隙に逃げようとしたヤルモは、いきなり息の合ったクリスタとオルガに捕まるのであったとさ。


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