第12話 快勝! バトルヒロイン!
「召喚! 『《バトルヒロイン》ー鬼っ娘ベニザクラ』!」
「ギャっハハハハハハ! よ―やく出番だ! やっと暴れられるぜぇ!!」
魔法陣から現れたのは、真っ赤な肌の赤鬼娘だ。ふんどしと虎柄模様のサラシ以外は鬼の金棒しか持っていない、その額から伸びる角まで真っ赤な赤鬼である。
同時に彼女は、能力的にもフレーバーテキストの設定的にも、好戦的でコントロールが聞かないじゃじゃ馬でもある。
それが今の状況では頼もしい。切り込み隊長に実に適している。
「鬼っ娘、取り敢えず敵のモンスターをボコボコにしろ」
「アイサ了解! アタシの赤は、血祭りの赤じゃぁぁぁぁぁあ!」
たまたま目の前にいた敵に、まず飛びかかっただけにしか見えない真正面からの特攻。シンプルな直進運動。それが鬼っ娘がとる最初の行動だった。
そのまま振るわれた金棒の一撃で巨獣のファミリアが宙を舞い、落下するより先にポリゴンと光の粒子になり還っていった。
その攻撃力は《2300》だ。
余裕な態度で取り囲んでいた盗賊団に激震が走るが、そんなことはお構いなしに鬼っ娘の快進撃が続く。そしてその快進撃には、もれなく暴力もついてくるのだ。
(「敵の隊列が乱れました! 戦力の逐次投入を!」)
「『古代の戦士ダイナ』召喚! 『百足女郎』召喚! 『イグニス=サラマンダ』、『マーメイド=ウィンディーネ』、『ペガスス=シルフィード』、『サイクロプス=ノーム』、四大精霊まとめて召喚!」
ずらずらりと、俺の周りに可愛らしい《バトルヒロイン》たちが並ぶ。
彼女たちはそのまま同心円状に拡散し、取り囲む敵ファミリアを殲滅しに動いた。
「倒した盗賊連中からカードを剥ぎ取るのを忘れるな! 再召喚されたら面倒だ!」
(「総司令官殿、我輩も戦場へ!」)
「応よ! 『戦姫将軍・the・レッド』召喚! バレットはそのまま俺の近くで護衛な」
「承知しました」
そして戦況は、あっという間に俺の有利に進む。
特にジェネラルは《バトルヒロイン》の力を強化する能力を持っている。その指揮能力もあって、確実に敵は数を減らしていった。
「クソッ!おい、なんとかしやがれ!」
「『Roger』」
しかし、敵にも何体か『攻撃力』の高いファミリアが紛れていた。
「ぷげ!」
最も多くの敵を屠らんとする鬼っ娘が、その機械ゴーレムのようなファミリアの一撃に敗北していた。重量のある手のひらのサンドイッチで、全身がひしゃげてしまっている。
順当に彼女は光の粒子となり、俺の手札に戻ってくる。
「再召喚! 『鬼っ娘ベニザクラ』!」
まぁ、ファミリアは死なないし問題ない。また召喚すればいいだけのこと。
だってカードだし。
「ギャハハハ! 次は負けねぇ!」
「バトルに勝つには……このスペルカードだな。スペル詠唱!『パワーバランスブレイク』!」
「おおおおおおお!!」
こいつはファミリア一体を選択し、そいつにそのターン「全てのバトルに勝つ」効果を付与する強化なカードだ。
そのまま鬼っ娘のリベンジは果たされ、スクラップとなった機械ゴーレムが光の粒子となって散る。
「な、なら――」
「ベニザクラ! カードを奪え!」
「アイよ! ギャハハハ!」
「痛ぇ!?」
その機械ゴーレムに指示を出していた男を、ベニザクラが鬼の握力で軽く掴む。人間がそれに抗えるはずもなく、そいつはあっさりと手に持っていたカードを手放した。
「『風精霊』! コッチにカードを送ってくれ!」
「かしこまりました。ベニザクラ! マスターへカードをお投げなさい!」
天馬の上に乗る淑女のような精霊の、風による導き。それによって俺の手元に強カードがやってくる。
「『眷属化』《バトルヒロイン》!」
そして彼女は、俺の新たな仲間となる。
「召喚! 名前は――『《バトルヒロイン》ー機動ゴーレム tryangleΔ』!」
外見だけは、さっき男が使役していた機械ゴーレムと同じだ。
しかしその巨大ロボのような装甲が開き、中から機械仕掛けのアンドロイド少女が現れる。
「ピピっ。名前をご入力ください」
「俺の名前は朝たろ……いや、アーサーだ!」
「了解。Master名:Arthur様、認証完了。登録に不備なし。どうかご指示を」
「敵のファミリアを倒せ。《バトルヒロイン》は味方だから攻撃するな。あと、犯罪者風の男共はなるべく無傷で捉えろ。取り敢えず殺すな。ただし、カードは奪うこと」
「承知。そして実行。難易度は低い」
戦闘開始から、まだ十分も経っていないだろう。
しかしそれだけで、俺の《バトルヒロイン》たちは盗賊団とそのファミリアを半壊にまで追い詰めていた。
「――くそっ!おい、これを見ろ!」
「……そういうこと、やるかもなーとは思ってた」
「あ、アーサーさんッ……! ごめんなさい……助けて……」
人質戦略。分かりやすく卑怯で、しかし同時に有効なやり方だ。
ナイフを突きつけられたヨルルを盾に脅されれば、やれることは激減する。
「お、おいアンタ、それは流石に……」
「うっせェンだよ村人風情が!何の力もねぇ奴が口を挟むな!」
ふむ。内通してた裏切り者とは言え、村の人たちと盗賊が仲良しこよしって訳でもないようだ。カードの力で無理やり言うことを聞かされてるって感じか。
「おら、そこのカード使い!こいつがどうなってもいいのか?大人しくカードを捨て……」
おっと、そこから先は言わせない。
俺は鬼っ娘ベニザクラを出すのと同時に取り出したいおいた、一枚のカードを使用する。
「『時止の砂時計』」
これは、ゲームで使用するのとカードを実体化させるのとで、全く違う効果を発揮するタイプのカードだった。そう『賢者の石』が教えてくれて、実際に試してみたから間違いない。
その効果は、『ひっくり返した時から砂が落ちきるまでの間、時間を停止させる』。
つまりこの砂時計の場合は3分間、自由に俺は動けるということだ。
(まぁ、俺以外の《バトルヒロイン》たちも止まるから、自分でやんなきゃいけなくなるけど!)
そんなことを思いながら走り、俺は悪漢に掴まれていたヨルルを助け出すことに成功する。
こういう微妙なところで仕様の都合がいいからありがたい。
「おい、何ぼーっとしてやがる!奪われてんじゃねぇよ!」
しかしそこで、予想外な声が聞こえてきた。
停止した時間の中に、1人だけ動ける男がいたのだ。あの若衆のリーダーである。
その男の周囲には、初バトルの際に俺たちを守ったバリアーが展開されている。
一応、距離的には余裕があるから問題ない。取り敢えず一旦保留し、そのままヨルルをナイフを突きつける悪漢から遠ざける。
そして3分が過ぎて、時間停止が解除された。
「おうヨルル、大丈夫か?」
「―――?」
一人の例外を除き、ヨルル他、周りにいる奴らは全員ぽかんとしていた。何が起きたのか分かっていない表情だ。
「あ、アーサーさん……。助けてくれ――」
どうやら状況を把握したらしい態度を見せた直後、ヨルルは膝から崩れ落ちた。その瞳には涙が貯まり、全身がガクガク震えている。俺のマントの端にすがりつき、安心の反動からか声も上がらない恐怖に襲われているようだ。
「『白衣の天使』、召喚。取り敢えずセラピーを頼む」
そんな彼女を、癒やしの力を宿す白い翼が包み込む。
「何やってんだ! アイツにあっさり奪われやがって!」
「何の話だよ!知らねーよ!気がついたら一瞬で向こうが移動してて、人質まで奪われて……何が起きたんだよッ!」
どうやら相手方は何が起きたか分かっていないらしい。
まぁ時間停止なんて現象を、そんな発想すらない状態で初見。分かるわけないわな。俺だって条件が同じなら多分そうだ。
「ただ取り敢えず、バレット、やれ」
「かしこまりました」
その一言で意思を汲み取ってくれた忠臣は、ナイフを突きつけていた男を一刀のもとに打ち据える。手加減されてるから死にはしないだろうが、昏倒するには十分な一撃だ。
「――くそっ!攻撃ぶっ放せ!」
「了解!」
そして、当のバリアーをまとっていた男が周りの連中に命令し、モンスターに火の玉を吐き出させる。なるほど、やはりアイツはリーダー格なのか。
バリアーが展開されるということは、おそらくあの男はデッキを……最低でも40枚のカードを持っているということ。『時止の砂時計』が効かなかったのも、同じ理由だろう。
そんなことを考える俺に向かう火の玉が、俺たちに当たることはない。バリアーによって守られているからだ。当然、その範囲内にいるヨルルにも届くことはない。
まぁ、ビビるヨルルの手前だから平気なフリしてるだけで、多少は怖いと感じるが。
「――賢者の石、あのバリアーの発動条件は確か……」
「《はい。発動条件はおそらく、デッキを1つでも所持していること。即ち、カードを40枚以上所持していれば、その者はカードバトラーとなりバリアーによって守られます》」
「で、あのバリアーを破壊するには、ファミリアバトルで倒す以外の方法がないんだったか」
「《YES。その通りです》」
「成る程。なら――バトルヒロインたち!まずは敵を全員制圧すること!最後の敵は俺直々に相手する!」
「「「了解!!」」」
逐次戦力を供給しつつ、時には打ち倒した相手のカードを新たな仲間に変えていく。
「召喚!召喚!召喚!スペルカード発動!」
そして最終的に、場に残ったのは俺のファミリアとバリアーに守られたリーダー格の1人だけ。
「眷属化!眷属化!そして召喚!」
他の盗賊連中は目を回しており、拘束まで既に完了している。
「さて、これで終わりだ」
そして俺は、ファミリアバトルを行うためデッキケースを最後の盗賊に向ける。
(バトルの開始条件は、デッキを所有する者が同じく所有する一方へ勝負の意思を向けること)
「バトル・スタート!」
俺と相手の周りを、7つのエネルギーコアが宿るバリアーが取り囲む。
そして2人の間には、カードが展開されると同時にバトルフィールドが生まれていた。
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