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感情の色
感情には色がある。
相手の色を見ると、心情が手に取るように分かった。
隠しきれない心の色は、言葉よりもよほど正確に相手の気持ちを理解出来てしまう。
そして私は知ってしまった。
人間が一番強く思う感情は、『負』なのだと。
多くの人は、多くの色が少しずつ見える。
1つの感情だけ現れているというのは少ない。
幸を表す明るい色も、だんだんと薄れて他の色と混ざり消えて行く。
けれど、負の感情だけは違う。
人によって差はあるが、黒めの赤が多い。
心が赤黒くなるとすぐに周り全体を侵食し、しだいに全体を染め上げてしまう。
幸は他の感情に蝕まれ、負は他の感情を蝕んでいく。
力関係ははっきりしていた。
強い負の感情が勝つ。
人は幸せになるために生まれてくると誰かが言っていたが、もし本当ならばこの力関係は神様の設定ミスだと私は思った。