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1話

初投稿です!

色々至らぬ点などあるかと思いますが、よろしくお願いします!

 ──ある町のとある葬儀所。そこには二人の写真がおかれていた。片方は男性、もう片方は女性。

 その写真の目の前に人形をギュッと抱えた、幼い少女が光の灯っていない目でそこに立っていた。


『...やだ、あの子可愛そうね...まだ7歳だっていうのに両親を亡くしたなんて』

『交通事故だそうよ...しかも、運転してた人も亡くなったんですって!まるで仕組まれたみたいよねぇ...』


 後ろで少女の親戚的位置にいるであろう女性達がコソコソと話している。出来るだけ少女に聞こえないように話しているようだが、普通に少女のいる位置にははっきり声は届く...が、少女はそれを聞いてなかった...否、それどころではなかったのだ。

 少女の顔付きは、まさに絶望の淵に叩き落とされたかのよう。そこからは感情を読み取ることは出来ない。まるで感情を全て殺してしまったかのように...


『しっかし、可愛げなんて全くないわね...前はあんなんじゃなかったんでしょう?』

『えぇ、両親か生きてた頃はとても可愛らしかったらしいですわよ...あぁなるのも仕方がないんじゃありません?』

『...でも、引き取りたくはないでしょう?』

『...そうですね。あんなに可愛げがない子を引き取りたがるなんて、よほど物好きなんでしょう』


 そう、少女はほとんどこれのせいで誰も引き取ろうとしなかった。少女の両親と親しかった親戚で引き取ろうとしようとした者もいたが、経済的な理由でやむ無く断念した...という例もあるがごく少数である。

 このままでは少女は児童養護施設に行くことになってしまうであろう...その時だった。




『あ、なら私が引き取りますよ。一応それなりに稼ぎのいいとこ就いてますし、その子一人ぐらいなら養えると思います』




 一人の若い女性が立候補した。

 彼女の名前は『神崎杏』。当時18歳で割と大きめの企業に偶然入ることが出来たという色々とラッキーな人だった。少女とは何の接点もないが一応親戚ではあった。仕事によって会う機会がほぼ無かった...という方が正しい。この葬式によって初めて会ったのだ。

 そんな杏はゆっくり、ずっと立っている少女に近づいていく。それに気付いたのか少女はその方向を向いた...が、すぐ視線を元に戻した。


『...初めまして。私は「杏」。「神崎杏」っていうの。君の名前を教えてくれない?』

『.........』


 しかし少女は何も言わない。ずっと写真のほうを見つめている...が、少し経って口を開いた。


『...「桃」』

『桃?』

『「山中桃」...私の名前』

『!!......そっか、桃ちゃんか!』


 その様子を見ていた親戚達は驚く。なんせ、自分たちが話し掛けても全然反応しなかった桃がいとも簡単に、しかも初対面の人に対して声を出したからだ。


『さて...桃ちゃん。これから行くところってある?』


 その問いに対して桃は少し間を起きながらも軽く横に首を振った。


『ならさ...私のとこ来ない? 私今独り暮らしなんだよね。桃ちゃんが来てくれたら楽しくなると思うなぁ...勿論、桃ちゃんも楽しくなるように努力はするよ!』


















 ◯ ◯ ◯




「...夢か。何か懐かしかったような...」


 あの子を引き取った時の夢とか何年振りだろう...ここ最近は見てなかったのは確かなはずだけど。

 あの後は...確か色々手続き済ませて引き取って...名前は変えなかったんだよね。それが桃ちゃんの両親との絆だろうし。んで小学校、中学校...ってどんどん進んで行って今では立派な高校生。最初は本当に感情見せてくれなかったけど、少しずつ笑顔とか見せてくれて...今では元気一杯の女の子に育ってくれたよ。苦労したなぁ...でも、桃ちゃんが元気になってくれてよかった。


「あ、杏さん!おはようございます!朝ごはん出来てますよ!」

「...おはよ、桃ちゃん。いつもごめんね」

「私のしたくてやってますし、大丈夫ですよ!」


 なんていい子なんだ...と、誰もが思うだろう...





「──あ、その前に...えいっ!」





 ...ここまでならね。


「───桃ちゃん?毎日聞いてるような気がしなくもないけど...何をしてるの?」

「何って...杏さんの匂いを堪能してるだけです! あぁ、杏さんの汗の匂い...堪らないですぅ...」

「...そう」


 起こしにきてくれたかと思えばいきなり抱きついてきて、顔を私の胸に当てて深呼吸してる...しかもこれを毎朝。

 いや断った時もあったんだよ?! 特に最初のほう! でもね...断ったら断ったで...


『えっ...あ、杏さんに...拒絶、された...? 拒絶されちゃった...もう、生きる意味ないな...』


 とか良く意味分からないことを絶望顔になってブツブツ呟きだして、どこからか包丁を取り出して自分に刺そうとするんだよね...拒絶出来るわけないよ...


「...ねぇ桃ちゃん。そろそろ起きたいかなーって...」

「...後少し」

「はぁ...はいはい」


 何だかんだで許しちゃう私も甘いとは思うけどね...

 んで、気が済んだのか暫くしたらどいてくれた。これで1日持ちます! って笑顔で言われた時はどう返すべきか悩んだよ...

 でも、最初っからこんな感じだったわけじゃないんだよね。最初は特に会話も出来る状況じゃなかったしなぁ.........うん、謎だ。どうしてこうなったんだろうね?


 なんて考えてる内に顔洗ったりしてテーブルに着く。さて、朝ごはん食べますか───


「いただきます」

「はい、どうぞ♪」

「.........ねぇ」

「はい、何です?」

「...これも毎朝だけど、何で私の膝に座ってるの?」

「少しでも多く『杏ニウム』を補給するためです!!」

「『杏ニウム』て......」


 これも同様、拒絶したら変なことになるから拒絶出来ない。ま、苦ではないしね...


「...あ、この味噌汁美味しい」

「ありがとうございます♪ あ、今日の夜ご飯何がいいですか?」

「そうだなぁ...昨日はハンバーグだったし、今日は魚とかどう?」

「魚ですね! 分かりました!」


 ああいうのを除けば凄くいい子なのになぁ...全く、そろそろ28になるおばさんのどこがいいんだか...

 私はどこで間違えたんだろう...

いかがでしたか?

ありがちな展開でしたが、楽しんで頂けたのなら幸いです!

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