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召還社畜と魔法の豪邸  作者: 紫 十的@漫画も描いてます
後日談 その3 終章のあと、ミランダがノアと再会するまでのお話
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その11

 ミランダ達は飛空船に乗り込んでいた。

 それは飛空船を修理するため。


「見たところ、船体の穴は魔法で塞げるわ。もし、乗せてもらえるのなら、直してあげてもいいのだけれど」


 ドワーフ達へミランダが申し出たのだ。

 そして、船員達の了承を得て、簡単に船体の穴を氷で埋めてみせた。

 船員達は全員が驚きミランダを絶賛した。


「実は浮遊ランタンもちょっとやられてしもうてての」

「いいわ。そっちも見ましょう」


 そして船へ乗り込む事になった。

 飛空船の内部は、海を行く船と大差なかった。木造で飾り気の無い船。


「おわっ! フワフワする」


 歩き進む途中、ジムニが同じセリフを何度も口にする。

 斜めに大きく傾いた船内を進むにあたり、ミランダは全員に念力の魔法を施した。

 床面に軽く押しつけるように操作していることもあって、ジムニ達は傾いた船内でもスイスイと歩いた。

 急な坂道を難なく歩くことができる状況に、ジムニは戸惑い、シェラはひたすらに笑って楽しんだ。

 そうしてドワーフに案内されたのは、船内の動力部分。

 窓の無い質素な部屋に、人の背丈ほどある巨大なランタンが、フラフラと室内に浮いていた。

 銅のカバーがガラス製の円筒を覆った見事な品だ。

 炎をつつむ円筒形のガラス、それを小屋状のカバーは草木の細かい装飾が施してあった。

 その巨大なランタンは静かに火を灯してあたりを照らしている。

 明々とした炎の輝きは、皆を照らして、部屋の壁に大きな影をおとした。


「師匠、浮いているよ!」

「そうね。でも、触っては駄目よ」


 巨大なランタンを前に、手を伸ばすシェラをミランダが制した。

 そして「とても熱いから火傷してしまうわ」と続けた。


「んで、これを直せるのかいの?」

「もう直したわ」


 ドワーフの問いに、ミランダが答えるとその場にいた全員が驚く。


「師匠、どうやって直したの? ずっと一緒だったよ」

「目の前のランタン。あの炎を冷やしたの。少し待ってなさい」


 皆を代表するかのようなシェラの質問に、ミランダは答えるとランタンのガラス面に手をあてた。


『ジュゥゥ……』


 ミランダが這わせた手から蒸気が立ち上る。


「師匠!」

「大丈夫よ。ジムニ。これは器に残った余熱だし、きちんと魔法で防御している」


 穏やかにミランダが答えたと同時、船がグラリとゆれた。

 斜めになっていた床が水平へとジワリジワリと動いていく。


「どうやったんかいの?」

「浮遊の魔導具、これを冷やしたのよ」


 ミランダは巨大なランタンを指でなぞりながら説明を始める。


「ベヘヘバーケンの賢人達が考案したこの魔導具……浮遊ランタンは、熱くなりすぎると上手く動かなくなるの。だから、蓋を外して熱を冷ます……のが普通」

「だけどの蓋を外しただけでは駄目での。だから、補給のついでに、サミンホウトの技師を呼びにいっとるとこじゃ」

「そうね。技師なら水に細工できるだろうし、冷やすこともできるでしょうね。でも、この程度なら……ランタンで押さえられるほどの火であれば、直接冷やすこともできる」

「ほえぇ。んなら、あんたは魔導具かなんかで冷やしたんかいの?」

「そうね」

「師匠すごい!」

「シショーはなんでもできるんだな」

「確かに大したものだ」


 その場にいる全員がミランダを絶賛した。

 ミランダはその様子に苦笑するとパンパンと手を叩いた。


「これで飛べるはず。送っていただけるのよね。約束通り」


 こうしてミランダ達にサエンティとパエンティは、飛空船に乗って南への旅を再開することになった。

 低い高さを飛空船は進む。地上すれすれというわけではないが、大きな影を草原に落とすほどの高さだ。

 途中で、サミンホウトに向かった船員を回収するためだが、それは同時に大平原の巨獣と目のあう高さでもあった。


「師匠、グルングルンする」


 ある日、シェラは急上昇する飛空船に酔ってしまった。

 巨獣が飛空船に悪戯しようとしたので、逃げたのだ。

 気分の悪くなったシェラは、ミランダに膝枕してもらって、弱音を吐いた。


「お前ははしゃぎすぎなのよ。だから首の長い巨獣を驚かせてしまった」

「それでグィーンって船が空に向かったの?」

「そうね。お前は船に酔って目をまわしただけ。すぐに治るわ」

「お兄ちゃんは大丈夫だったよ」

「ジムニは、サミンホウトにいたらしいから……船は平気なのよ。とりあえず、お前は少し寝なさい」


 ミランダは遊牧民の帽子をシェラの顔に乗せる。それから、船べりに立っているジムニをみやった。

 最近、少し元気が無いようだけれど。ミランダは心配していた。

 彼の故郷であるサミンホウトに何かあるのかしら。

 でも、シェラの事を考えると、他の港町経由では時間がかかる。

 このまま飛空船に乗せてもらうとしても、サミンホウトに寄ることは変えられない。


「師匠、息ができないー」


 シェラの言葉でミランダはハッとして、思案を止める。


「息ができないわけないでしょう。お前はもう少し静かに休みなさい」

「あいあい」


 考えすぎよね。何かあったとしても、対応可能だし。

 ミランダはそう考えて自分をなだめた。

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