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召還社畜と魔法の豪邸  作者: 紫 十的@漫画も描いてます
第四章 冬が始まるその前に
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たそがれのもの

「黄昏の者にお願いしよう」


 召喚魔法の本に載っていた3つの召喚魔法。

 ブラウニー、黄昏の者、物体召喚。

 うち、ブラウニーは使ったことがある。彼らは血なまぐさいものは苦手らしい。

 基本死骸は触らないそうだ。

 逆に、黄昏の者は短気で荒っぽい性格をしていて、他者に危害をあたえたり生き物を殺すことが得意分野であり、触媒として動物の血や臓物だと本には載っていた。

 加えてブラウニーや黄昏の者などの意志をもつ者に関する召喚魔法の触媒は、後払いができるらしい。

 ブラウニー達も、触媒となる果物を召喚後によこせと言ってきたことがある。

 呼び出して、交渉を行い、追加の触媒を与えることで望みを叶えて貰う。

 つまり、鳥をさばいてもらう。捌いた結果出来上がる血や臓物を触媒として渡すわけだ。

 オレ達は肉が手に入り、黄昏の者は触媒を受け取る。互いがWinWinとなる秘策。


「やったことあるの?」

「ない。ないが、準備は万全だ」

「他者に危害を与えることが専門とか危なくないの?」

「話せば分かるさ」

「適当だー」


 そんなやり取りをする。

 屋敷にもどって、庭で魔法陣を描いた布を広げる。今日という日のために、用意をしていたものだ。

 準備中に、ノアが同僚達を呼びにいっていたようで、サムソン達もやってきた。


「あぶなくなったら逃げるから、なんとかしろよ」


 そんなことを言いサムソンが距離をとった。手帳を開いて何時でも魔法が唱えられるよう警戒している。

 召喚魔法を唱える。

 ジジジっと電子的なノイズ音がして、ゆっくりと黄昏の者が実体化した。

 濃い紫をした子供向け漫画にでてくる悪魔もしくは虫歯菌のような外見をしている。背中にはコウモリのような形をした羽を生やしている。この羽も濃い紫をしていた。


「うわぁ、なんかヤバげ」


 見た瞬間にミズキが感想をもらす。

 黄昏の者は、自分の両手をじっと見た後、オレに視線をあわせた。


「我が輩を呼び出したのはお前か? 触媒はどうした?」

「後払いで……、あの鳥をですね、さばいて、残った臓物とか血を渡そうかと考えているのですが、駄目ですか?」


 黄昏の者は、ジッとオレが指し示した鳥をみて、首をかしげた。

 動きが妙にコミカルで、どうにも短気で凶暴という事前情報とは齟齬がある。


「駄目じゃないが、触媒なしで我が輩を呼び出すほどの苦労をして、ソレだけ?」

「それだけ」

「そうか……まぁ、いい」


 それだけを言うと、不思議そうに何度もオレ達をみて、コウモリのような羽を羽ばたかせ鳥に近づいた。


「ねぇ、あれ、ばい菌とか大丈夫なのかな」


 小走りにオレに近づいてカガミが聞いてくる。そんなこと、しらない。


「失敬な。我が輩、仕事は完璧にこなす。病の元など付着させたりはせぬ」


 耳ざとくカガミの言葉を聞いた黄昏の者は、反論する。

 それから、鳥をつかんで放り投げると、空中でシャシャシャっと刃の形に手の指を変化させて、切り刻んだ。

 空中で、血の塊と、内臓や羽、肉の塊と頭の3つの塊に分かれていた。


「ざっとこんなものだ。では、血と臓物はいただく、肉と頭はお前のものだ。いまさら違うとはいうまいな?」


 ニヤリと大きく口を笑みの形に変化させて、黄昏の者は聞いてきた。


「いや、頭もいらないので、それも触媒で」

「本気か? 頭は、お前達が普段使う魔法の触媒になるのだぞ!」

「えっと、今回はいらないので……」

「そ、そうか。では貰っておく」


 そのまま、血の塊と、内臓に、頭を飲み込んでしまった。お腹がぷっくり膨れる。


「では、肉だけお前のものだ。確かこの鶏肉は、そこにあるランバーの葉で肉を包んで蒸すと、人にとって美味しいと聞いたことがある」


 料理のアドバイスまでしてくれた。どこぞのブラウニー共よりよっぽど良いやつじゃないか。


「そっか。参考にするよ。ありがとう。本で読むより紳士的で助かった」

「紳士的? そうか、我が輩達は、血と臓物で酔う。酔えば凶暴となる。今回は、魔力のみで召喚されたので、冷静なのだ」


 なるほど、触媒を使わなかったから逆によかったのか。


「今度呼ぶときも触媒は後払いにするよ」


 オレの返答をきいて、おもむろに自らの口に手を突っ込んだ、中から黒いカード状の物を取り出す。それをオレの目の前にもってきた。


「では、今度から我々の手を欲するときは、これを触媒にしろ。これを使えば、我が輩が必ず現れる。その方が、お前も話が早いだろう」


 渡された金属製のプレートだが、よく見ると『第108階層所属スライフドシアスルシバトクラ連絡先げぼぱぴーぺきょぺぼ』と書かれている。いわゆる名刺だ。


「名前……スライフドシアスルシバトクラ? 長いね」

「読めるのか? そうか、お前、すごいな。よかろう我が輩の名は、人には長いだろう。スライフと呼んで良いぞ」


 本当にいろいろと話しやすい奴だ。ついでに、前々から疑問に思っていたことを聞いてみることにする。

 ブラウニーには「めんどくさいワイ」の一言で片付けられた話題だ。


「ところで、スライフ。早速なんだが、一つ質問いいか」

「しつもん?」

「いままで召喚された精霊達は、いくつか見てきた。その召喚された者は、自由に元いた世界とこの世界を行き来できるものなのか?」


 オレは帰る気はないが、同僚はわからない。帰還するかしないか、どちらを選ぶにしろと召喚魔法についての知識は得ておきたい。ただし、ノアを不安にさせたくないので、小声で聞く。


「我が輩に聞くとは……。確かに、我々はあらゆる人の歴史と研鑽にかかる知識を答えることができる。ただし、知識は無償で与えられない」

「対価が必要ってことか?」

「そうだ。今回は、鳥の臓物と血……それに頭か。その対価として調理法について教えた。先ほどの質問に対する答えとしては、あの触媒では足りぬ」


 勝手に教えたくせに。

 でも、元々足りないならしょうが無いか。

 触媒が不足しているなら、用意してから聞けばいいわけだし。スライフ達、黄昏の者は、他者を攻撃するよりも、よっぽど知識を得るために召喚すべき存在ではないのかと感じる。


「じゃ、用意してから聞くよ。ちなみに、何があったら答えてくれるんだ?」

「そうであるな。では、人間、次は鹿を用意して我が輩を呼ぶが良い。さすれば、お前の望みは叶うであろうぞ! では、さらばだ!」


 バサバサと背中の羽をばたつかせ高く飛び上がったあと、ゆっくりとかき消えるように黄昏の者スライフは帰って行った。

 鹿か……、大物だけれど無理とは思えないし、ちょっと頑張ってみるかな。

 次こそは、ミズキじゃなくてオレの弓によって狩りを成功させたい。

 オレは皆の元へともどって名刺を見せる。


「やるときはやるのだよ」

「結構良い奴でしたっスね。ちなみに望みがどうとか言ってたのは何だったんスか?」

「美味しい料理の作り方……とか、いろいろだよ」


 結局、ごまかした。ノアが寝たあとにでも皆には説明しよう。

 それはともかく、綺麗にさばかれた鶏肉をみて、オレは素晴らしい召喚魔法を手に入れたと満足した。

 そして、その日は、洋風に味付けされた唐揚げに舌鼓を打つことが出来た。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 歌舞いてる。 [一言] 読ませて戴き、ありがとうございました。
2023/02/08 09:28 退会済み
管理
[一言] お前ヤクルトさんじゃないか!
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