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召還社畜と魔法の豪邸  作者: 紫 十的@漫画も描いてます
第十四章 異質なるモノ、人心を惑わす
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ひがしへ、さらにひがしへ

 遊牧民と別れて、ひと月が過ぎた。

 ここ最近はぼんやりと呪いのことばかり考えている。

 気晴らしに迷宮都市のことも聞いたりしてみたが、すぐに呪いのことが気になって、迷宮都市の事は頭から消えてしまった。

 呪いか……。


「寒ぅ」


 真っ黒で何も見えない真夜中、寒さで目が覚めた。

 かぶっていた布団では足りなかったようだ。

 こう、はっきりと目が覚めてしまうと、眠る気も失せてしまう。

 久しぶりに夜空を見ようと外へと出る。


「あらぁ、いったい、どうしたのぉ?」


 そんなオレをロンロがめざとく見つけて降りてきた。


「寒さで目が覚めちゃってね」

「そうなのぉ。うーん。なんだか天気悪くなってきたし、明日は雪がふるのかもしれないわねぇ」


 ロンロの言葉で、星空がそれほど見えない事に気がつく。

 天気が悪くなってきているのか。

 寒いのは苦手だ。


「雪は困るな。ところでスライフが……あの黄昏の者が、ノアの呪いによって家畜が死ぬと言っていることについて、どう思う?」


 ロンロは、今までの話し合いに参加していない。

 見張りと称して姿を現さないのだ。

 ふと、そんなことを思い出した。


「そうね、今までもチッキーが家畜について世話してくれてたでしょう?」

「確かにな。だがノアの呪いは、ノアの成長に伴って、強力になっていくんだろう?」

「えぇ。きっとそのうち……ノアが大きくなって、大人になった時、辛いことになるでしょうねぇ」

「案外ロンロは気楽なんだな」


 ロンロの気楽というか、投げやりな発言に、ついつい責めるような口調になってしまう。

 彼女はポーカーフェイスを崩さないので、内面が分からないことが多い。


「だって……ううん、そうね、私はもう諦めてるのかも」

「諦めるのが早いって」

「そうね」

「ところでノアの呪いが強く影響してるヤツと、影響しないヤツがいるらしいんだが、何か心当たりあるか?」

「呪い子の呪いは、全てに平等に訪れると聞いてるわ」

「そっか」

「影響しないって、ひょっとして抵抗力の差のことかしらぁ。魔力の高い者は、問題なく耐えきれるわぁ」


 抵抗力の差が理由とするならば、子ウサギ3匹のうち1匹だけが大丈夫である理由が説明できない。


「ロンロには呪いによって死ぬ家畜なんかがわかるのか?」

「私にはわからないわぁ。だから、できることだけしか……出来ないのぉ」

「できること?」

「見張りと……ノアの相談相手ねぇ」


 相談相手。確かに、ロンロは相談相手になっている。

 主として他者と話す時、何かの魔法を行使するとき、ロンロが側でアドバイスしているのを聞いたことがある。

 そして、そのアドバイスはいつも的確だ。


「じゃあ、これからも相談相手を頼むよ」


 ロンロにも、心当たりがないか。

 仲良く茶釜の側で寝ている子ウサギを見て、違いがあるかどうかを考える。

 特にどこかに違いがあるとは思えない。

 強いて言えば怪我をした1匹は、怪我が完全には治っていないので、背中に大きな傷が見える。

 だが、呪いの影響を受けていないのは別の子ウサギだ。


「うーん。この子ウサギ達がヒントになるはず……ヒントに」


 考えながらウロウロしたが、どうしても答えが出なかったので横になることにした。

 次の日も代わり映えのしない風景を進む。

 さらに次の日も。

 大平原の巨獣にも見慣れてきた。

 巨獣への対抗策は、遊牧民から巨獣よけのお香をもらい対策できた。

 香を焚きながら進む。巨獣とはちあったら一旦止まる。そうすると香の匂いが辺りに立ち込めるので、巨獣は自然と避けてくれる。

 肉食の巨獣が、たまに襲いかかってくることがあったが、その時も同じだ。

 カガミが魔法の壁で周りを覆い、香を焚く。

 出会った肉食の巨獣は、ティラノサウルスよりも小型のヤツばかりだったので楽勝だった。

 すばしっこいが、魔法の矢が通じるので、簡単に対処できたのだ。

 順調に、海亀は進む。

 変わったことといえば、昨日から海亀を茶釜が引っ張っているということだ。正確には茶釜とその子ウサギ達。

 とうとう雪が降ってきたのだ。

 寒さが増して雪が降る中、海亀は寒さに弱いようで、動きがゆっくりになる。


「爬虫類ですし、言われてみれば弱いと思います。思いません?」


 この件については、カガミが魔法で対応した。

 もともと、以前より考えていたそうだ。

 具体的には床板の一部を、魔導具である暖炉石の応用で温める。

 おかげで、亀も寒さから少しだけ解放され、オレ達も少しだけ床暖房にありつけた。

 もっとも、だからといって海亀は素早く動けない。

 そこで飛翔魔法の帽子を少し改造して、浮遊魔法の帽子にした。

 海亀には浮いてもらうことにしたのだ。

 飛翔魔法ではなく浮遊魔法で。

 浮遊魔法は浮くだけだが、飛翔魔法よりはるかに少ない魔力で起動できる。それに仕組みも簡単だ。だから比較的楽に、長時間浮くことができる魔導具が作れる。

 そんな宙を浮く海亀を、茶釜と子ウサギが引っ張っている。

 おかげで昨日から進むスピードが速い。海亀の軽く倍は出ている。

 がんばる茶釜に乗るのはカガミとミズキ。


「耳がヒラヒラしててかわいい」


 可愛い可愛いと言いながら、幸せそうに乗っている。

 好きでやっているのだからどうでもいいけど。


「ホントに飽きないよなぁ」


 ふと2人の様子をみて、ぼやいたときのことだ。

 ノアに魔法の勉強を教えていたサムソンの大声が聞こえた。

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