表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召還社畜と魔法の豪邸  作者: 紫 十的@漫画も描いてます
第二章 屋敷の外へと踏み出して
25/828

のうひん

 ついに収穫祭の3日前となった。

 ゴーレムを納品する日だ。

 今は城からの迎えを待っている。


「ノアは本当に来ないの?」

「うん」

「ごめんなさいね、皆の魔力がないとゴーレム作れないと思うの。私たちは全員で街に行くけど、必ず戻るからいい子にしててね」

「うん……」

「ノアちゃんが謝ることないっスよ。お土産期待しとくっスよ」

「じゃぁ、ロンロ、頼むな」


 城に行くのはノアとロンロを除いた全員。ゴーレムの生成について検証した結果、オレたちのうち4人分の魔力が最低限必要だとわかったためだ。余裕を持って、全員でいく。


「昨日の男の子が迎えに来るの?」

「来るらしいけど、ミズキ、お前は別の馬車な。先方の機嫌を損ねたらどうするんだ」

「えー。私なんにもしていないのに」

「ミズキ氏、何もやってないってのは無いって」


 昨日のことだ。ヘイネルさんの使いとして少年がやって来た。ゴーレムについて、準備できているのかを確認したいという。

 ゴーレムは目の前で生成できることを伝えると、迎えに来るので何人で魔法を使うのか教えて欲しいという話になった。

 そこまでは順調だったのだが事件はその時に起きた。

 いきなりミズキが少年に後ろから抱きついたのだ。

 少年は思いっきりミズキを振りほどいたあと、真っ赤になって走り去っていった。

 5人で伺う旨を伝え、馬車は2台用意するという回答も得ているので滞りはない。

 ミズキは「かわいいー」とかいって笑っていたがオレは真っ青だ。

 ヘイネルさんに何か言われたらどうしようかと不安でいっぱいになる。程なく馬車が2台やって来た。ついでに兵士もぞろぞろやって来た。

 以前と同じように少年が馬車から降りてやって来る。


「おはようございます。リーダ様。それに皆様も」

「おはようございます、本日はお世話になります。早速ですが、2台だから、2人と3人に別れて乗ることになりますか?」

「はい。ヘイネル様と私の乗る馬車に、2人。あちらの馬車に3人乗っていただくことになります」


 ふと見れば、後ろの馬車のそばには女性が立っている。彼女が道中の相手をしてくれるようだ。

 1台目の馬車には、オレとプレイン。2台めには残り3人、つまりサムソンとカガミ、それにミズキが乗ることになった。それを伝えたところ、少年はホッとしたような顔をしていた。うちの子がご迷惑をおかけして申し訳ありませんと、心の中で謝っておく。

 道中は穏やかなものだ。ちょっとした打ち合わせと、雑談。

 街へ近づくと同じように街へと向かう馬車が目立ってきた。


「馬車が多いですね、それにたくさんの荷物を積んでいる」

「ふむ。あれは、収穫祭の準備のための荷だな。それに、献上の品も積んでいるようだ」


 毎年、近隣の村は収穫祭を祝うために飾り布と献上の品を持ってこの街まで駆けつけるらしい。村によっては、特産品を持ち込みアピールすることもあるとも聞く。

 そんな話を聞いているうちに、街へと馬車は入った。

 街は収穫祭の準備が進み、だいぶ賑やかさをましていた。以前は見なかった色とりどりの屋根をした屋台や、山のように積まれた穀物などが見える。

 そして瓦礫の山の隣へとまる。正確には瓦礫の山でなく、ゴーレム生成のための触媒置き場だ。そこで残り3人と合流し、早速作業を開始する。


「ふむ。領主は昼を過ぎてから来ることになる。それまでにゴーレムの生成はできるかね?」

「えぇ、間に合います」

「よろしい」


 そういうと、ヘイネルさんは去っていった。残ったのは2台めの馬車に乗っていた女性と3人の兵士だけだ。

 武器を持った兵士に見られながらの作業は少し落ち着かないが、しょうがないと諦めて作業を開始する。

 まずは瓦礫を円で囲む。野球のグラウンドにラインを引く時に使うライン引きを参考に専用の道具を作ったのでそれを使う。レバーを引くと箱につめた石灰が落ちる仕組みだ。昨日思いつきで作ってみると事の他うまくいって、ひょっとしたら自分は天才ではないかと思うほどの出来栄えの一品だ。

 円の中心に杭をうち、そこからロープを伸ばしてライン引きのガイドにする。

 クルリと一周すれば見事な円の完成。


「これはすごいな。オレは天才じゃないのか」

「はいはい」


 カガミは適当な相槌を打ったあと、円の内側へ布を広げる。布にはゴーレムの魔法陣が書かれている。最後に布の四隅に釘を打ち、布が飛ばないようにして準備はおしまい。


「さてと、魔法を唱えるけど準備できてる?」

「大丈夫っスよ。みんな何回も唱えてるし失敗はしないっス」

「まぁ、失敗してももう一回唱えるだけだしな」

「じゃぁ、始めようか。出でよゴーレム」

「リーダ、そういうのは成功してから言ってね」

「ごめんなさい」


 魔法を詠唱する。詠唱の中頃で、瓦礫が盛り上がりそれから人型をとる。ゴキゴキと音を立てゆっくりとゴーレムが生成される。そのまま詠唱が終わり、魔力を流し続ける。なんども魔法を使っているうちに、魔力を流すのも止めるのも楽に出来るようになって来た。

 

 ゆっくりゆっくりゴーレムは形を整えて、完成した。


「予定通りです」


 そういって、カガミは足元の魔法陣に生成されたロッドを手にする。

 彼女が念じると、ゴーレムはその場で足踏みし、手を上下に動かした。


「成功したようだな」

「じゃ、乾杯しましょうか」

「雨降る前に乾杯したいっスね」


 サムソンが成功を宣言する。

 ミズキの軽口に、プレインは空を見上げて笑顔で応じる。空は少し曇っている。今日はきっと雨は降らない……成功を祝って晴れてくれるはずだ。

 それからしばらくして馬に乗った領主がヘイネルさん達を連れてやってきた。

 挨拶もそこそこに馬に乗ったままゴーレムの周りをクルッと一周し、戻ってくる。


「これがそなたらの言うゴーレムか。王都のものより簡単な形をしているな」

「左様ですか。私共は王都のゴーレムを知りません。ですが、十分な働きが出来ると信じております」


 それから、腕を振り回せとか、少し歩かせてみよと、リクエストがされる。

 応じて動かすたびに「確かに腕は丈夫そうだ。振り回す様はまるで棍棒のようではないか」「歩かせると迫力があるな」そんな感じで評価がされた。

 表情や口調から、大満足というほどではないが確かな手応えを感じる。少なくても、処分されるような雰囲気にはない。

 そのようにゴーレムを動かしていると、領主の元に鷹のような鳥が飛んできた。領主が突き出した手に留まった鳥は手紙を持っていた。

 

 領主は手紙を無言で眺める。


「北門が魔物に襲われている。速やかに向かう。ここの兵は皆西門を防衛しろ。兵長、お前が必要だと判断したら門を閉じることを許可する。ヘイネル、其方は城へ戻り2隊を門の守りに加えよ。……リーダ、せっかくの機会だ、お前達はゴーレムで西門を守れ」


 そう言い残して、走り去っていった。


「どうします? 守れといっても無理だと思うんです。思うでしょう?」

「そうだなぁ、そもそも急に言われても困る。もし何かあったら皆、物陰に隠れてやり過ごすか逃げよう」


 カガミの不安そうな問いかけに、戦わない方針を告げる。

 オレはゴーレムを作ることは了承したが、戦う気はない。そんなオレの判断に皆は頷いて同意してくれた。

 それとほぼ同時に門の方で悲鳴が聞こえた。悲鳴がした方をみると、緑色の何かが見えた。


「ゴブリン。4匹正面!」


 兵士だろうか、ゴブリンという声を聞いてあれがゴブリンなのかと思った。

 初めて見るゴブリンは、背丈が1メートルくらいで、緑色の毛がない猿のようだった。知性はあるようで、簡単な作りの服を着ていて刃物を持っていたように見える。

 そのゴブリンは倍近くの兵士によって、瞬く間に倒された。


「案外あっけなかったっスね」

「逃げなくても大丈夫そうだな」


 プレインとサムソンのいうとおり、呆気なく終わり安心した。ゴブリンの襲撃は先ほどので終わりなようで、緊張状態だった兵士たちもリラックスして雑談を初めている。

 それでおしまい。しばらく何も起きなかったので、そう思った。


「そろそろ領主様か、ヘイネルさんあたりに戻ってきてもらいた……」


『ドン!』


 プレインが何か言いかけた時に、少し離れた場所で音がなった。

 何かが落ちてきたような音だ。そちらを見ると何かが見えた。

 うげ……少し離れているので断言できないが、多分、死体だ。

 それと同時に狼に乗ったゴブリンが数匹ほど門をくぐってきた。後ろには大量のゴブリンが走ってきている。悲鳴や怒号が飛び交い。たちまち、街は混乱の様相を呈してきた。


「上!」


 そんな中、兵士の1人がひときわ大きく叫び声をあげる。

 上を見上げると城壁のあたりから何か赤いものが飛び降りてきた。巨人だ。

 褐色の肌に灰色が目立つ白毛の巨人が飛び降りてきた。

 ちょうど俺たちの目の前だ。

 ゴーレムと同じくらいか、もしくはやや大きく見える。

 手には金属製と思われる棒。体には金属や皮などを継ぎ接ぎしたような鎧をきている。身体中に傷跡をつけている様は歴戦の戦士を思わせた。


「ゴガオゴォォォオオオオォォォォ!!」


 その巨人は空に向かって吠えた。それから手に持った棒を思い切りゴーレムに叩きつけた。ゴーレムの上半身は粉々になり、破片が飛び散る。あたりは砂煙に包まれた。


「オーガだ!」


 兵士だろうか、男の叫ぶ声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い [気になる点] >  いきなりミズキが少年に後ろから抱きついたのだ。 痴女だぁァ!(なんだか違和感。作者本人のセンスっぽくないなぁ。) [一言] 読ませて戴き、ありがとうございま…
2023/02/07 18:43 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ