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召還社畜と魔法の豪邸  作者: 紫 十的@漫画も描いてます
第二章 屋敷の外へと踏み出して
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ひみつがばれる

 家の門前に止まっていた馬車はとても立派なものだった。

 その周りには兵士が4人。ところどころ金属の鎧で上半身を固めていて、帽子のような金属製の兜を被っている。武器に斧のついた槍を持っている。

 そばに数頭の馬も見えたので、何人かは馬に乗ってやってきたようだ。

 彼らは、槍の切っ先を構えてこちらに向き直るが襲いかかってはこない。突きつけられた刃物の先を手で払いのけ、そばをすり抜け家に戻る。

 オレを見かけてカガミが駆け寄ってきた。


「領主の使いって人が来て、呪い子の飼い主を出せって、なんのことかわからなくて……呪い子ってノアのことかもって思いはするけど、今サムソンが応対してる」


 そのまま家へと戻る。扉の前には額を拭きながら何かを話しているサムソンと、その様子を無表情で見ているミズキが見えた。


「リーダぁ」


 ホッとした表情でサムソンが出迎えてくれた。


「ちょっと無理、代わってくれ」


 そう言ってそそくさと後ろへ下がった。


「君は?」

「彼らの代表を勤めますリーダと申します。よろしくお願いします。領主の使いの方と聞きましたが……」


 領主の使いは、初老の男だった。50歳くらいだろうか白髪交じりの茶色い髪をオールバックのように整えている。細かく刺繍された執事のような服を着ていて背筋がピンと伸びている。顔つきと雰囲気からできるビジネスマンといった感じだ。


「ふむ。私はヘイネルという。領主の使者としてここに参じた。先ほどの者にも伝えたが、呪い子の飼い主を出してもらいたい。私としては君のような奴隷ではなく、本当の代表に先日の約束の確認をせねばならない」


 さっぱりわからない。まずオレが奴隷? どういうことだろう。呪い子がノアだとして、飼い主というのはロンロのことか……そんなはずはない。ロンロはオレのすぐ後ろにいる。そもそも、ヘイネルという男からロンロは見えていない。


「申し訳ありません。ノア……様の他には我々しかいないので、その飼い主という人物には心当たりがありません。どのような方でしょうか?」


 とりあえず情報を集めつつ話を進めることにする。ノアを呼び捨てにしようとした時に表情が硬くなったので敬称をつけた。正解だったらしく相手の態度が少し優しくなった気がする。


「貴族の女性だ。君よりもやや年上だろう」

「おそらく前任でしょう。あまり引き継ぎがうまくいっていなくて、申し訳ありません。なにぶん急な入れ代わりだったので、詳細がわからないのです。よろしければ教えていただければ助かります」

「前任? まぁ、いいだろう。領主と飼い主は約束したのだよ。次の収穫祭までに街の防衛のためのゴーレムを作り献上することを。領主は、その見返りとしてこの地にとどまることを許すこととした。すでに契約はなっている。呪い子を連れて立ち去るか、ゴーレムを君達が作り献上するのか、それとも我々と戦うか選びたまえ」


 いきなりそんなこと言われても困る。

 戦うのは論外だし、ノアを連れてここから出て行くのも辛い。お金がない上に金策のあてもない、快適生活を手放したくはない。

 時間を稼ぐか。


「申し訳ありません。ノア様に確認をしてそれから返答したいと思います。その……三日ほど後に返答したいのですが、もちろんそちらへ伺った上で返答しますが、どうでしょうか?」


 そもそもゴーレムってどうやって作るかわからない。多分魔法的な何かなんだろうけれど、それにノアにも色々聞いておきたい。三日はでまかせ、それくらいなら時間くれるだろうと思っての賭けだ。


「いいだろう。ただし、迎えを寄越すので、待っているように」


 そうヘイネルが答えた。その瞬間、後ろの兵士がホッとしたような顔をしたのが見える。


「では失礼する」そうヘイネルは言ってゆっくりと立ち去る。

 ホッとしたのもつかの間、帰る途中に「そうそう」と呟いてから振り返った。


「なぜ、君たちは奴隷という身分にありながら主人を呼び捨てにする? それは君たちの故郷におけるしきたりかね?」


 なんと言えばいいのだろうか、奴隷とは知りませんでしたとかはまずいだろうし、それっぽい答えをした方がいいだろうけれど、嘘をついたらバレそうな気がする。


「私達は、ノア様の教師としての役目も負っていますので、そのような時は呼び捨てにするよう仰せつかっています。先ほどは急なことで気が動転していたようです」


 一応、カガミは算数教えていたし、プレインはマヨネーズの作り方を教えていた気がする。オレも竹とんぼとか教えたし、嘘は言っていない……はずだ。


「どのようなことを教えているのかね?」

「算数とか、理科で……数に対する学問などです」


 やばい、算数が通じなかった。ただ、納得はしてもらえたようだ。


「そうか」と言ってそのまま去って行った。

 馬車に乗り込むまで見送り、ようやく一息つけた。


「ロンロ、どういうことだ?」


 まずは色々知っていそうなロンロを問い詰めることにする。


「ゴーレムなんて私知らないわ」

「奴隷については?」

「あなた達は、ここにきてから奴隷の階級だった。私が何かしたわけでも、ノアが何かしたわけでもないわ」

「じゃ、知っていたのか、知っていたのに黙っていたのか?」

「聞かれなかったから」


 いつものゆったりした話し方ではなく、妙にハキハキした話し方だ。心なしか怯えているようにも見える。その上ゆっくり上にのぼっていっている。逃げるつもりか。


「それに、看破の魔法でわかることだし、その時説明すればいいと思ってたのよ」


 そう答えたロンロに、地面を指差し手を下に振ることで降りろとジェスチャーで示す。

 了承してくれたようでロンロはゆっくりと下に降りてオレのすぐ目の前に頭が来るように前のめりになった。


「ノアは、呪い子なのか? 呪い子というのはなんだ?」

「それは……」

 呪い子というのは、今は眠りについている魔神が、天の蓋という魔法陣を使って世界にかけた魔法の犠牲者らしい。

 一定の素養がある子供の背中に魔法陣が浮かび上がり、その魔法陣の影響で、魔法がうまく使えなくなり、身の回りに歪んだ魔力を撒き散らす存在になるのだそうだ。

 歪んだ魔力は、周りの人に不快感を与え、そこにいるだけで農作物に悪影響を与え不作をもたらし、家畜はやせ細り、病を流行らせる原因にもなる。

 その上、呪い子を殺すと殺害した者とその縁者に呪いが降りかかり悲惨な末路をもたらすという事だった。

 そして、ロンロは最後にこう締めくくった。

「存在そのものが人々にとって災い、と言われているわ」


「やだ、なにこれ……」


 ロンロの話が終わってしばらくして、カガミが驚いたような声をあげる。

 自分に看破の魔法を使って、その結果を見ているようだ。


「なにがあった?」

「私自身に看破の魔法をかけた結果……階級、多重命約(めいやく)奴隷。所有者ノアサリーナ。命約数120。出身地不詳……あとは年齢とか」


 ノアサリーナっていうのはノアの本名なのだろうか、どこかで聞いたことがある。

 多重命約ってのは何だろうか……。


「ロンロ、多重命約奴隷ってのは? 命約数ってのは?」

「所有者と命をかけた特殊な制約魔法で結ばれた奴隷……命約数はその交わした約束の数……多分」

「そんな約束を交わした覚えがない、どんな約束なのか知りたい、どうやって調べればいい?」

「わからない、わからないの。命約魔法自体が禁呪だから。命をかけて約束を交わす、そして制約を受ける代わりに何かを得る、それくらいしか知らないの。本当よ」


 今までのロンロのイメージとは全然違う、とても必死で、いつもの作り物のような雰囲気でない。まるで本当の人間のようだった。

 とりあえずわからない事だらけだが、ひとつずつ片付けていこう。


「ノアちゃんはどこ?」


 ミズキの一言で、最初に片付ける問題が決まった。ノアを探そう。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ確認しねぇオメェらが悪いだけだしな。問い詰める行為とかアホくさ。
2021/01/28 12:31 退会済み
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