プロローグ(ノア視点)
導入部分です。
少しだけ暗い始まりですが、鬱にならないお話をしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
「おいしくない……」
わたしは手に持っていた黄色い粘土のようなソレを投げ捨てた。
コツンと小さく音を立てて石畳に落ちたソレは霧のように消えた。
――食べ物を粗末にはしてはいけませんよ、ノア
少し前であれば、そうやって叱ってもらえた。
今や、そんな人は誰もいない。独りぼっちだ。
石を投げられ怪我をした額がズキズキと痛んだ。治っているはずなのに、痛い。
「どうしよう」
それから程なく魔法陣が輝き人影がみえた。
ママだ、きっとママだ。
……ちがった。期待は裏切られ、現れた人は知らない人だった。
魔法陣は、その後も人を呼び出し、ゆっくりと輝きを小さくしていった。
少し離れたところに、魔法陣より現れた男の人や女の人が何人かいる。そして、悪魔が彼らとなにやら話をしていた。
「なに? ココ? 私しらないんだけど」
「いや、ボクに言われてもわかんないっスよ」
話は言い争うような声になってきた。密室がどうとか、そんなことを話しているようだ。
あの悪魔は、きっと私が原因だと伝えるに違いない。もしかしたら、怒られるかもしれない。殴られるかもしれない。
「どうしよう」
今や、私を助けてくれる人はいない。あの悪魔に期待しても仕方ないだろう。
私は独りぼっちだ。
「どうしよう……どうしよう……」
魔法陣は、今もなお、ほんの少しだけ輝いている。
両ひざを抱え込む腕に力をいれて、私は泣くのを我慢した。
なかなか書き始めると、楽しいものです。
今回でたヒロインがどんどん幸せになっていくお話を進めたいと思います。
次回から、主人公視点の本編です。