たのわれ!
次の日の朝恐る恐る玄関口の隙間から外を伺ってみるが、特に人影はなかった。
「いない、か」
昨日のことを思い出すと頭を抱えたくなった。後悔など全くしていないが、普段からすれば感情に任せた非効率的な行動をしてしまった。
バイト先には疲労で情緒不安定だったためにおかしな言動をしてしまったと言い繕っておいたが、少なくともその場にいた人には良くない印象を残してしまった。
特に何の目的か不明な上に監視するかのようにべったりだった澤峰ならば、ここぞとばかりに追求されるかと思っていたのだが杞憂だったようだ。
「ちっ、敷地内に入っていたら今度こそぶっ飛ばしてやろうかと思ってたのに」
「こらこら!シャレにならないからやめろ!」
「ぶー」
彩花はと言えば昨日からやけに機嫌がいい。
少しでも発憤できたからだろうか。ここのところずっと不貞腐れていたのに今ではすっかり饒舌だった。
「とりあえず学校いくか」
「おー!」
こうして2人で登校するのはなかなか久々に感じた。
「思ったんだけどさ、俺の講義中何してんの?」
「・・・仕方なくボーッとしてる」
ボソッとそっけなくこたえる。
「す、すまん」
考えるまでもなく強制してついてきてもらっているのだから退屈なのは当たり前か。
約一カ月も文句を言ってこなかったからといって気が回らな過ぎた。
「うーん、勉強は好きか?」
「嫌い。苦手!見たくもない」
食い気味なほどに即答であった。
「な、なるほど。きいてなかったけど、歳ってきいてもいいかな?」
「さっきから何?」
「まあ、いいから!」
前から考えていたアイデアがあった。
「じ、14よ」
「へ?そう、なんだ(中3か)」
年下だとは思っていたがこんなに離れているとは思わなかった。確かに注意して、いやしなくても雰囲気も容姿も年相応だった。
「・・・?じろじろ見ないでよ」
「ん?あ、ごめん」
そうこうしているうちに大学に着いたが、その日澤峰は休みだった。