たのわれ!
接客サービス、皿洗い、荷物運びと忙しい日々を田城誠一は送っていた(とは言ってもまだ1週間ほどだが)。急に単発、即日可能な仕事を選んでこなしているのは文字通り金が入り用であるからだ。
「まさか、入学式よりも前に仕事でスーツを着ることになるとはね」
と、イベント受付係のバイトの休憩中にぼやく。
アルバイトに関して言えばなるべく家族に迷惑をかけないためにもするつもりはあったが、学校に通い慣れてからの予定だった。
今まで働いたことはなかったが、これほどまでに大変だとは思ってなかった。改めて両親への感謝をする。
そもそも、こんな風に働かなければならなくなったのはおよそ1週間前に起きた出来事のせいであった。
契約してからというもの2人は、多少もめながらも普通に日常を送っていた。普通の目安が既に少しわからなくなりつつあったが、目安なんて個人の基準なのでそこは気にしないのが吉だ。
結局のところ、一人暮らしに会話要員が増えたくらいの感じだと思っていたが違った。
契約の次の日食事を作っていると
「私、目玉焼きは醤油でー」
と呑気な声でさも当たり前かのように机の前に陣取っていた。
「はいよー、ん?」
何かおかしいような気がするもとりあえずと準備をする。