86 マッドサイエンティスト
①世界樹さんの趣味
②薬のスペシャリスト、その名はプル
③魔法万能説
竜族が来てから数日が経過。世界樹さんがヤバい物を創ったりしましたが、ダンジョンは今日も平和に拡張されている。あと数日もすれば、見えていた西の山頂に届く勢いだ。
重要施設や生活スペースは、世界樹さんの中に集中して設置している。世界樹さんも、日に日に大きくなっているので、拡張スペースはまだまだ余裕がある。
迷宮と言える部分は、今は世界樹さんの中とその周辺の地下にしかない上に、防衛としての機能はそこまでないですけどね。世界樹さん自体が頑丈な上、戦力も充実してきていますから、その辺りが後回しになっているんですよね~。迷宮自体を破壊できるぐらいの相手だと、そもそも対応できないでしょうし、居るかどうかも怪しい。
その代わり、領域が急速に広がっているので、ここまで到達するのも距離的に一苦労な程になって居る。森や起伏も増え、木の根や泥などで足場も悪いですし、野生化した魔物も順調に増えている。地上からはここまで到着するのは、難しいことでしょう。
この前の竜の様に、空から侵入してきたとしても、領域内に部外者が侵入すればその時点で気付けるので、発見は容易い。空からでは、世界樹さんの中に侵入するのは難しい作りにしていますし、これもしばらくは問題なし。
領域内も順調に改善がされており、生態系も作られつつある。その内スポーン以外にも、自然繁殖で魔物が生まれる様になるでしょう。そうすれば、魂の繋がりが無くなり、DP回収効率が更に高くなる、楽しみですね~。
属性付きの魔力も満ちていますし、急激に環境が変化する様なことは早々ない。世界樹さんも、自分の根が届く範囲であれば、ある程度魔力濃度を調整できるみたいですし、安心して待っていられますね。
纏めると、すっごい順調。初期の頃のカツカツ状態が嘘の様です。
―――
「おはようございます、主様!」
「おはようございます、クロスさん」
朝食も終わり、日課となりつつある散歩の為にコアルームを出ると、すぐにクロスさんに挨拶された。世界樹の迷宮内も様相が変わり、毒処理の為の滅茶苦茶な通路や空間も一新。生活しやすい空間に、随時修正している。その一つが、クロスさんの住処の位置です。
要望を聞くと、俺の近くに住処を置きたいと言って来たのだ。報告がスムーズにできるし、防衛の意味でも、最重要地点であるコアルームの側に、幹部クラスが居た方が良いだろうとの事。理由はしっかりしていましたし、断る理由も無かったので、造りました…が
「報告は有りますか?」
「ハ! 現状、特異な報告は上がっておりません。外敵の侵入ついても、種類は変わらず、領域の拡張を考えれば、量についても今までと変わりありません」
「……そうですか、ありがとうございます」
「は、有り難き幸せ!」
こう、常に平伏された状態で報告を受けるのは、ちょっと……。
何度か言いましたが、直してくれないんですよね~。俺は、そんな恐れ多い存在じゃ無いのですが。
盲目的な程に、俺への評価が高すぎる、これが失望に変わった時が怖いですよ。アリスさんは、その辺り分かってくれているので、関わりやすいんですがね~。
あ、ちなみにこれが、現在のクロスさんになります。
名称:上級蟻ノ王
氏名:クロス
分類:現体
種族:虫族
LV:20 / 25
H P :800 / 800
S P :800 / 800
M P :850 / 850
筋 力:375
耐 久:375
体 力:375
俊 敏:361
器 用:684
思 考:1056
魔 力:392
適応率:10(Max100)
変異率:10(Max100)
スキル
・肉体:<異常耐性LV8><異常無効LV4>
・技術:<団結→同調LV3><指揮→統率LV9><身体操作LV4>
<魔力操作→魔力支配LV3><威厳→魅力LV3><高速思考LV2>
<平行思考LV2><分離思考LV2>
・技能:<威圧LV3><念話LV7><鑑定LV7><自己回復LV5><限界突破LV2>
<集中LV8><瞑想LV7>
称 号:<迷宮主の寵愛><蟲の王><名君><幹部><信者>
<ワーカーホリック>
【王】指揮を執ることを得意とする。指揮技能に補正(大)、全能力の成長に補正(小)、思考の成長に補正(大)
<瞑想LV7>:全ステータスを一時的に低下させる代わりに、MP回復速度に補正。
※普段使用していないスキルは、省略
皆のリーダー、クロスさん。自身はそれほど強くはないが、指揮能力が他の能力の比ではない程高い。スキルとステータスもそれに特化したものが揃っている。
称号も幾つか追加されている、<幹部>は分かるとして、<ワーカーホリック>……とうとう付いて仕舞いましたか。散々休むように言っていたのに。
肉体的にも、精神的にも無理しては居ない様なので、強く言えないんですよね~、質が悪い。趣味(仕事)をやめろと言われても、やる事が無くなるだけですしね、難しい。
<信者>……(目線を逸らす)
「今日はどの様なご予定で?」
「そうですね~、蜘蛛さん達の様子を見に行こうかと思っています。実験は進んでいますかね~?」
「どうでしょうか。その手の事は、分かり兼ねますので」
畑違いですから、知らなくても仕方が無い事です。結果を知っても面白くないですし、ダンジョンの機能でも見ていなかったから楽しみだ。
―――
「「「……」」」
「おおぅ……何この状況?」
蜘蛛達の要望に応えて作った、実験場兼研究室へと足を運ぶ。そこで目にした光景は地獄の様な状態だった。
まるで、締め切り前で何日も徹夜した様な状態の如く、今にも死んでしまいそうに、ぐったりと項垂れている蜘蛛達がひしめき合っていたのだ。
「……実験停滞中、進展がない」
この子は、光物に興味が無かった蜘蛛さんか。ここで一緒に活動しているって事は、コミュ障ボッチの道は回避できたようだ。良かった、良かった。
「……法則性も掴めないし、手当たり次第図形を描いてたのも頭打ち状態」
あらら、それでこの状況ですか。無理せず、ゆっくりやって行きましょうと言ったのに。
全力投球過ぎるんですよ、蟻さん達でさえ、体調管理はしっかりしていると言うのに。
「……へ、へへ~~~!!」
ゾンビの様に地面を這いずっていた蜘蛛の一体が、いきなり奇声を上げながら、滅茶苦茶に図形を描きだし始めた。一体何事!?
名称:魔導頭脳蜘蛛
氏名:
分類:現体
種族:虫族
LV:7 / 25 <混乱(中)>
HP: 52 / 296
SP: 38 / 296
MP: 91 / 1374
筋力:135
耐久:135
体力:135
俊敏:164
器用:822
思考:644
魔力:669
適応率:30(Max100)
変異率:30(Max100)
スキル
・技術:<闇魔法LV4><幻覚魔法LV4><魔術LV1><団結LV6><身体操作LV1>
<魔力操作LV4><異常耐性LV4><異常無効LV3><爪→硬爪LV3>
・技能:<糸→魔糸LV8><毒LV4><念話LV3><鑑定LV3><高速思考LV1>
<平行思考LV2><集中LV5>
称 号:<下剋上><マッドサイエンティスト>
【魔導師】魔力の扱いを得意とする。魔力技能に補正(小)、魔力、器用の成長に補正(小)
「え、<混乱>?」
「図形のアイディアが浮かばないから、蝶の鱗粉を使ってる。アイディアが出るんだって」
「何やっているんですか!!??」
一昔の芸術家じゃ無いんですから! 薬ダメ絶対!! えーい、即行で禁止じゃい!
何でこう、家の子達は極端なんですか! できない事や考え付かないことを、無理やりやっても上手く行くわけ無いんですよ。そう言った事は、時間をかけてやって行くうちに、知識と経験が積み重ねられて、初めて浮かぶものです。
時間が無い訳でも無いんだから、そんな命を削る様な真似は許しません!
「君達注目! 作業中断です!」
「だ…だけど」
「できないことを、何時までやっても進展なんかしません! プルさん!」
(は~い、何~?)
「強制連行です! この子達を、全力で癒してやりなさい!」
(はーい! 皆やっちゃえ~)
― ………~~~~プルプルプルプルプルプル!!! -
「「「ギャーーーーー!!!」」」
すぐさま通路から、洪水の如く粘液の大群が雪崩込み、蜘蛛達を飲み込んでいく。
「取り敢えず、風呂にでもぶち込んで来て下さい。湯の種類はプルさんに一任します。彼等に合ったものをお願いします」
(分かったー)
粘液の波がどんどん引いて行き、話をしていた一体を残し、誰も居なくなった。そんな部屋を見ながら今後の予定を考える。とりあえず、帰ってきたら説教ですね。
「今度から、あんな無茶な行為は禁止です、良いですか?」
「ん……分かった」
「では、これからは貴方が此処の責任者って事で、冷静な対応をお願いします」
「……え˝?」
あとは……とと、そうでした、今のうちに
「コアさん、コアさん。ちょっとお願いが……」
「あの、え? …責任者? …主? …ちょっ?」
迷宮主のメモ帳:ステータス
スキル又は魔道具による、<鑑定>に類するものによって確認することが出来る、魔力の質と量(密度)を数値化したモノ。
【HP】生命力を数値化したもので、0になると死亡する。
肉体と魂との繋がりを数値化したモノ。あくまで目安であり、急所に当たれば即死の可能性も有る。
【SP】体力を数値化したもので、0になると行動不能になる。
肉体に循環している魔力の総量を表す。あくまで目安であり、肉体本来が持っている体力が存在する為、0でも動くことはできなくはない。
【MP】余剰魔力を数値化したもの。
どのステータスにも割り振られていない、自分の意思で操作できる魔力の総量を表す。あくまで目安であり、肉体に循環している魔力を流用すれば、補填できなくはない。(SP、又はステータスは著しく低下する)
【筋力】攻撃力。肉体へ力として変換された、魔力の濃度を表す。
高い程、力が高く、接触した対象への影響力が高くなる。
【耐久】防御力。肉体に循環している、魔力の圧力を表す。
高い程、存在が安定し、外からの影響を跳ね返す。
【体力】スタミナ。肉体内に循環している、魔力最大量を表す。
高い程、肉体内の魔力総量が高く、他のステータスの維持能力が高くなる。
【俊敏】素早さ。肉体へ力として変換された、魔力の移動速度を表す。
高い程、動く際の【筋力】【耐久】への魔力供給が速くなり、移動が速くなる。
【器用】魔力・肉体の操作力。自身の意思によって一度に操作できる、魔力量を表す。
高い程、魔力の操作量が上昇する。
【思考】反応速度、魔法構築力。自身の意思によって一度に操作できる、魔力範囲を表す。
高い程、魔力の操作効率が上昇する。
【魔力】余剰魔力(MP)、魔力生産力。そのまんま。
魂から産出される、魔力を表す。




